黒い羽

はじめに

 お盆休み期間なので、自分の中に潜む亡霊について書いてみようと思います。自分とAqbiRecとの出会いから今に至るまでとその距離感、それぞれに思うことなどについて書いていければと。それではどうぞ。

BELLRING少女ハートという「記憶」

画像1

 私とBELLRING少女ハート(以下ベルハー)との出会いは2014年2月14日の下北沢シェルターで行われたバレンタインイベントでした。当時はナトカン目当て。

 ナトカンはたしか急遽ブッキングされて、トリのベルハーの1個前だったかなと。現在のナトカンについてはよくわかっていませんが、当時のナトカン(東京組)は「適当アイドル」を標榜してまあまあ自由なフロアとステージだった記憶があったんですけど、その後に来たベルハーの黒い羽にセーラー服というビジュアル、今思うとサイケデリックロックを感じる異様な曲、メンバーの個性、そしてフロアと響くMIXの呪術性にもう一気に引き込まれたのを覚えてます。クソ狭いシェルターでソリフト(ソリでリフト)が起こってたりしててなんだこれはと思った記憶も。

 そのライブで見つけた/出会ったのが柳沢あやのさんです。当時、というかヲタクのルーツとしてはももクロ(サラバ期)で始まったスターダスト村出身なので、あやのさんの第1印象は「帆華ちゃんに似た可愛い子がおる」でした。(注:チームしゃちほこ(現:TEAM SHACHI)の秋本帆華さん)
その後一気にベルハーとあやのさんを好きになって、初めてあやのさんと話したのは2014年3月9日の今は亡き渋谷AXで行われたアイドル甲子園的なイベントでした。AOレジェンドとしても出てたよねとか。

 で、私がベルハー時通っていた時期としてはそこから2016年12月末の「崩壊」まで、ということになります。ただ当時は知り合いを作らず一人で通っていたのと、当時学生だったのもあってそんなに通っていた頻度も多くはなく、例えばBABELとかB:TDCワンマンとか、ラストライブのnestだったりの節目的なライブも行けてはいないので、非常に個人的な目線からではありますが、以上の視点と経験を踏まえたベルハーの伝承を試みたいと思います。

ライブパフォーマンス

 歌唱力やダンスのキレといった面については、それこそ後年になるにつれクオリティは上がっていたものの、トータルとしてはそういった技術そのものよりも、楽曲の世界観の表現や熱量、感情の伝搬という所が特徴的だったかなと思っています。

 一単語で表すと「熱狂」なんでしょうけど、それこそあやのさんはフロアと対峙して今ここで倒れてもいいくらいの気迫でパフォーマンスしてましたし、かたやカイちゃんは「カイちゃん」としか形容できないあの感じで飄々としていたし(ただゼアゼアの時に見たカイちゃんはすっかり歌唱面でもダンスでもグンと成長していて驚いた記憶があります)。他のメンバーについても唯一無二の魅力がありましたし、声がみんな特徴的で一聴してすぐ音源でもわかるのは特筆すべき部分だったかなと。

 上記は小野啓氏によるベルハーのライブとその裏側を記録した写真集『REACH OUT and TOUCH FAITH 暗闇から手をのばせ』ですが、このサンプル画像だけでも魅力が強く伝わってくると思います。
ステージ裏で力を出し切って脱力しているメンバー、鹿鳴館や新宿ロフトなどでのライブでのパフォーマンスとヲタクの表情、そのどれもが刹那的でエネルギー渦巻く写真群です。

 持続可能性というよりも、どこかで壊れるんじゃないかという危うさと、それでも激しく繰り広げられる舞台上のパフォーマンスと観客達の呼応は、どこか蠱惑的というか、ハマるとずっと観たくなるという感覚があったと思います。

グループとして

 体制としてはいくつもの入れ替わりがありましたけど、そのどれもがベルハーという「チーム」というよりは、突出した個々の集合としての群体というか、統率されたものよりもその1回性が印象的な体制だったなと思っています。現地集合現地解散的な。

 それこそベルハーは最終的には「崩壊」していきましたが、その内部事情、状況が良く無いところも含めてこちらに伝わってきてしまう部分も含めて特異だったというか。

 田中さんはベルハー時代にどう関わっていたかというと、メンバーからとか漏れ聞こえてくるところだと割とステージングに厳しいとか追い込むみたいなイメージはありましたけど、インタビューとか読んだりしてるとライブへの気持ちのまとめ方が難しいとか、長期的に見た時に仕切り直したい、新しくやり直したいタイミングでグループが「壊れてくれたのかな」といった発言からも、ベルハーとして目指すべきところや形、その先を見た時のビジョンを模索するタイミングで、グループとしての体制が崩れた、という部分があったんじゃないかと思います。

 AqbiRecの黎明期として、スタッフ側の体制も今と比べるとそれほど整っていなかったこともあったので、いろいろな反省も含めて体制的に強化されていったのは良かったことなのかなとも思います。

楽曲

 サイケデリックロックというジャンルに関しては個人的には馴染みがないのでむしろベルハーを通じて触れたクチなのですが、初期アルバム『BedHead』は不穏さや歪んだ音色が特徴的であったのに対し、続く『UNDO THE UNION』、『BEYOND』ではロックサウンドから子守唄、ピアノの旋律を聴かせる曲もあれば声だけで構成された曲もあったりと、多種多様な楽曲群に恵まれていました。

個人的に好きな/思い入れのある楽曲は以下です。

<BedHead>
-夏のアッチェレランド
-BedHead
-アイスクリーム
-WIDE MIND

<UNDO THE UNION>
-Starlight Sorrow
-rainy dance
-Crimson Holizon
-UNDO

<13 WEEKS LATER EP>
-無罪:Honeymoon
-GIGABITE
-low tide

<BEYOND>
-ホーネット'98
-憂鬱のグロリア
-チャッピー
-或いはドライブミュージック
-asthma

 特にアイスクリームやasthmaなんかは後続グループでも歌い継がれていっている曲なわけですが、それに関してはまた後述したいと思います。

2010年代のライブシーンにおけるベルハー

 結成は2012年であり、ライブシーンの中で名を馳せていた時期としては、体感ですけど2014〜2016あたりだったかなと思います。
TIFのスマイルガーデン然り、夏の魔物でのasthma然り、TLに動画や画像で一度は上がってきたであろう場面に象徴されるように、そのパフォーマンスの激しさと現場の異様な雰囲気によりライブアイドル界にインパクトを残していたと思います。このあたりはいろんな人が文章なり動画なりに残していると思うのでここで深くは触れません。

 その時期のアイドル界を見渡すと、1期BiSとか初期passcode、ゆるめるモ!、TAKENOKO▲あたりが同期みたいな感覚です。
特にゆるめるモ!は「べるめるモ!」と題した対バンを開催したりと、切磋琢磨する仲というか、ライバル感はあったと思います。

 こうした同時代性を持ったグループと対バンをしたり、大きいイベントでトリを務めるようになったりと、着実に存在感を増していた段階での「崩壊」。これによりある種伝説化された今のベルハー像と黒い羽の亡霊が生まれたことになったのだと思います。

個人的小まとめ

問:BELLRING少女ハートとは何だったのか?
私なりの答:その熱狂的なパフォーマンスと強烈な楽曲と個性で同時代の観客を魅了するも、内部より「崩壊」を余儀なくされたことで半ば伝説と化したグループ

THERE THERE THERESという「可能性」

画像2

 先に言っておくと、私自身は2017〜2018は全くヲタクをしていなくて、ゼアゼアを初めて見たのは2018年12月31日のカウントダウンライブでした。
で、年が明けてすぐに小島ノエさんの卒業とグループの解散が発表されるという。。。

 なのでここで書くのはこの期間に見た数少ない経験からの印象と、後追いで見た楽曲などからの比較になるかなと思います。
あくまで生で見ていたのは最後期なのでメインの内容はその時期の印象などであり、初期の体制やパフォーマンスといった部分は言及できない為、動画を見ての感想程度になりますことを予め書いておきたいと思います。

ライブパフォーマンス

 パフォーマンスといいつつ衣装から触れていくと、ベルハー時代はメンバー間でのデザインに変化はなく(小道具的なアレンジや使い古され具合の違いはありましたけど)質素なセーラー服に黒い羽の強烈な違和感が生み出すカオスが見どころだったと思うのですが、ゼアゼアの衣装は対照的にデザインも細部まで作り込まれているほか、羽の質感も高級感があったという印象です。また、上履きはスニーカーに、靴下もメンバーでバラバラだった(後期は統一されてきていた?少なくともアー写では)ものから黒で揃えたり。(間違っていたらすみません)

 あと初期の動画観てたら普通にベルハー時代と同じやつ使ってる時代もありましたね、この新衣装(後期衣装)に切り替わったのは小島ノエさん加入ごあたりですかね(2018年4月のギュウ農フェスでは旧衣装、小島ノエさん披露公演およびそれ以降で新衣装(後期衣装)であることは動画見てなんとなく把握しました)

※上記は解散が決定した際のナタリーニュースなんですけど、このアー写凄く良いな…

 そうした衣装面での方向性もパフォーマンスの志向性を表していたのかなと思うのは、先の動画の『スナッキー』でも見られるように羽を活かす、羽ばたくというよりは魅せる方向性で使っている振りが多いなという印象と、フォーメーション自体も3−2や2−2−1、4−1みたいに変化はあるものの、その瞬間の構図の精緻さを見せようとしているのかなという意図を感じたからでした。ベルハーはカオスな「動」なら、ゼアゼアは耽美な「静」というか。

 なまじベルハーの後継として誕生しているし、メンバーにはカイちゃんとれーれ(のちにみずほちゃんも加入)もいるしで、普通にベルハー曲も演っていく中でグループとしてどう色を出していくんだろうか、と始動直後の辺り(ベルハー「崩壊」直後)は思っていたんですけど、しばらく間あいて見てみると曲もパフォーマンスも素晴らしくなっていて、『魅せる』方向性での可能性を一気に示してくれたんだなと。『BRICKS』のその先ってもっと素晴らしいものになるんだろうなと思った矢先の解散発表だったので、なんとも言えない感触にはなりましたけど、映像に残っているパフォーマンスや音源に残っている楽曲はいつまでも記憶に残っていくので、過去を振り返りすぎるのはよろしくないにしても、時々思い返して思いを馳せることは自然なことだし、そういった意味でもゼアゼアもまた「亡霊」を強く残した存在だったなと思います。

グループとして

 体制としては、一条さえきさんや緒倉かりんさんが在籍していた2017年12月31日まで(一条さえきさんは2017年5月に卒業でしたが)を第1期とするならば、朝倉みずほさん加入、そして小島ノエさんが加わった2018年から解散までが第2期、といった感じで分けられるのかなと。

 ここで私が目撃していたのは第2期のみだったので一条さん緒倉さんについては語る言葉を持たないのですが、第2期の体制については、初期メンバーとしてのカイちゃんとれーれの意志、平澤芽衣さんの覚悟に加え、2017年大晦日に電撃加入(復帰、とはニュアンスは変わることでしょう)のみずほちゃん、そして唯一無二の存在感と声の持ち主小島ノエさん、このバランスが非常に良かったなと思います。

 2018年秋号の『TopYell NEO』にて「徹底解剖 AqbiRec」と題して田中さん、さ子ちゃん、クロタン、グーグールル、MIGMA SHELTER(2人体制時)、ゼアゼアのインタビューがそれぞれ載っていますが、ゼアゼア初期の「ベルハーと比べられる」感覚をめいちゃが発言していたり、以下のみずほちゃん加入についてのれーれの発言が印象的でした。

「戻ってきてくれてうれしかったです。自分はベルハーとゼアゼアは別物と考えてたから、出戻りって感じじゃなくて、ゼアゼアに新しく加入したって受け止めてました。」

河上拓(2018) 「徹底解剖 AqbiRec THERE THERE THERES」,『TopYell NEO 2018 AUTUMN』2018年10月,p.141,竹書房.

 だからこそ、解散の一報は本当に虚を突かれたし正直いまでも釈然とはしていないんですけど、そこからのメンバーの足跡を見ている現在地点からすると、ゼアゼアもまた半ば伝説化した存在になったんだなと思います。

 以下の方のこの記事が解散発表時の戸惑いなどを良く記されているので、こちらもご一読いただくと当時の雰囲気がわかると思います。

※後述というか参考として挙げた『かいわい』の著者の1人の方なんですねこのブログの著者さん

楽曲

『BRICKS』は文句なしの名盤なんですけど、中でも好きなのは以下です。

-ペリカン
-dignity
-スナッキー
-Burnable Garbage
-Sunrise=Sunset

 こうしてみると明るい曲調のものが好きっぽいですね私。あとSOILも好きかも。

 ベルハーの音源は聴いていてもライブの映像と音源が脳裏によぎるのに対し、ゼアゼアのそれは音源として独立した存在感を放っているというか、作品としての強度が本当に固くて、なんか個展のギャラリーとかで不意に流れてきそうな印象というか。

 それでいてライブでのグルーヴや1回性は損なわれていないしむしろパワーを増す状態だったので、そういった意味でもライブ映像や音源がもっともっと多くの人に届くべきグループだったなと。

朝倉みずほ・柳沢あやのコラボ

 また、下記は私の過去のnoteなのですが、上記の2018年12月31日からの年明けライブで披露されたこの2人のコラボには触れておかなければならないと思います。

 ベルハー、そしてゼアゼアには因縁がありすぎるO-nestにてこの2人のコラボ。そしてベルハー曲。この時間のフロアまるごと2年位時が戻ったかのように、狂ったステージと狂ったフロアがが帰ってきていて私自身もこの中で快哉を上げながらもみくちゃにされていた記憶が蘇ってきます。

 このタイミングでのコラボは今思うとベルハーの亡霊(ヲタクを指しているのではなく全体的な概念として)の弔いだったのかなと。

 2021年8月9日現在でこれをもう一度見たいかというとそうでもないし、このとき、このタイミングだからこそ消化できたし落とし込めた、個人的にはそんな感覚でした。

傍:MIGMA SHELTERとグーグールル

 MIGMA SHELTERは2017年、グーグールルは2018年に結成され、MIGMA SHELTERは体制を二度変えながらも存続し、グーグールルは2021年4月に現体制を「おひらき」とし後続グループの立ち上げ準備中の段階です。(2021年8月9日時点)

MIGMA SHELTERについて

 まずMIGMA SHELTERの話をすれば、体制としては初期、2人体制、現在の時期に分けられるかなと。ちなみに私は2人体制で初めてミシェルを観たので、後追いで初期の動画見てると、これはハマってた可能性あったな、と思ってます。
 話を戻しますと、2019年にメンバーを大幅増員、またレーレの加入、更にはナラちゃんの加入など、「力入れてるな〜」と横目で見ていました。
『ALICE』をリリースした辺りからは楽曲は世界観固めてきたなあという印象だったんですが、2021年8月8日の∞/∞レイヴでは既存曲とALICE曲、そして最新シングルとの組み合わせにより楽曲の表情もコントロールしていたほか、メンバーのパフォーマンスのグループとしての強度・練度そのものがこれまで観てきたAqbiで一番洗練されてたなあ、と思うと同時に、髪をバッサリ切ったレーレの覚悟とこれまでの足跡に想いを馳せて涙した瞬間もありました。
 そしてここにナラちゃんが居る、活休から戻ってきて大活躍している、というのが個人的にもアツいポイントなので、Aqbiのヲタクとして素直に「売れてくれ〜〜〜」って思いましたね。かつてベルハーと競ってたpasscodeみたいな。

グーグールルについて

 グーグールルについては過去記事でもたくさん触れてきたのでここで多くは書きませんが、あやのさんが「もう一度アイドルをやりたい!」の想いで始動し集まったメンバーたち、ヲタクたち、楽曲群など全てが大好きなんだよなあと。新グループについても楽しみでしかないし、続く杏ちゃんはるちろるのちーに関しては信頼しかないのでもうめちゃんこ楽しみです!とお伝えしておきます。

※上記はグーグールル解散に寄せたnoteです

2021年のAqbiRecにおける立ち位置と流れ

-MIGMA SHELTER:稼ぎ頭、AqbiRecの顔、田中さん×タニヤマさん
-ex.グーグールル/新グループ:自由、第3勢力、独自路線、田中さん×福井シンリさん
-NILKLY:田中さんのやりたいことが純粋に出ている場、黒い羽ではあるが依拠していない

 超個人的で乱暴な書き方をすると、現在のAqbiRecにおける3グループを描写するとこんな印象です。

 たぶんMIGMA SHELTERはいまだとクマリデパートと競ってるみたいな感覚なので、このまま超売れてくれという思いがあります。
ex.ぐーるるの皆はメンバーがどんどん走っていくような元気さと経験から来る落ち着きを併せ持っているので、新メンバーは安心して肩を預けて良いと思っています。
で、NILKLYについてはこのあとの章で書いていきます。

NILKLYという「再生」

画像3

※最初に書いておくと、この部分は蓮ちゃん卒業よりも全然前に書いてる部分なのでNILKLY部分は特に加筆はしません。この注意書き部分のみです。

ライブパフォーマンス/グループとして

 曲調はロックに戻ったというか、より大衆的なロックでポップな香りのする楽曲の中にNight is yoursみたいな曲が混じっているのが面白いところだなあと思います。

 お披露目は2019年5月23日、渋谷WOMBでした。現場に居合わせた身としては、めいちゃ新グループどんな感じなんやろな〜と観ていたら普通に黒い羽だったのでなんとも言えない感情になったのは事実です。

 ただ、めいちゃに加えて潤ちゃん、イブヨが思ったよりもスキルがすでに有り、初手のOdysseyの時点で世界観作っていたなあと感じましたし、楽曲についてはベルハーともゼアゼアとも被らないものだったので、なんというか最初から「別物」だなという感覚で見れたので、その後はスッと入って来ました。

-1期NILKLY
 パフォーマンスについては活休(2020年9月25日〜2021年5月23日)前後で性質が異なっているので、この項でグループの体制面についても一緒に書きます。

 1期メンバーのうち、初期メンバーは平澤芽衣、小林潤、伊吹咲蘭の3名。
のちに蒼山ユーリ、平山・ジェニシー・未知留の2名が加わった5人は、スキルでもキャラでも5者5様で見応えがありました。めいちゃの表情管理とアイドル力の高さ、潤ちゃんの飄々としていても感情の伝わるアクト、イブヨのダンススキルの安心感、ユーリくんのビジュアルと暗殺者感、ジェニちゃんの力強い歌声と飛び道具感、とくにジェニちゃん加入を知ったときは田中さんやるなあって思ったのを覚えてます。

(上記は配信ライブ「Abstract」の動画なんですけどサムネイル出ないんすね…)

 この座組でもっと跳ねていくのかな、と思った矢先にコロナ禍に見舞われ、結局めいちゃの卒業とともにグループは一時活動休止、更にはそれぞれジェニちゃんが脱退、ユーリくんが「離脱」となりました。活休前の配信ライブ、今見返すと切なさもありますね…

 ただ、めいちゃは現在はオケトーで、ジェニちゃんはおやホロとして活躍しており、ユーリくんも事務所には残っている形だったと思うので、今後の彼女らの前途が素晴らしいものであることを願いたいと思います。

-2期NILKLY
 2021年5月23日に新メンバーの小笠原唯、長門蓮の2名を加えて4人体制で再始動した新生NILKLY、お披露目のSELENEで演られた新曲がめちゃくちゃ好きなやつだったので、「おっ、新生NILKLY面白そう」と一発でなったのがついこの前でした。

 潤ちゃんはグループの休止期間中にソロ活動していましたし、イブヨも振り付けなどの面でMIGMA SHELTERメンバーと交流していたようで、このお姉さん組2人がスキルを磨き続けた上に、フレッシュな新メンバーが加わるのは見どころ増えて楽しいよね、という感じです。

 衣装も変わって心機一転で良いですね。

 何度か実際にライブを観てきた中でも、新メンバーの唯ちゃんは「古のAqbiヲタクが惹きつけられる何か」があるのと、自分の魅せ方をわかってるしダンスしっかりしてるなーというのが第一印象で、蓮ちゃんはパフォーマンス中の笑顔がもうニッコニコで素晴らしいのと、対照的にといえばあれですがダンススキルの発展途上感もウキウキするのと、低めだけどブレないし通るあの声が楽曲のアクセントになって良い、という印象です。

新シングル収録の2曲もそのうち発売・配信されると思うので、是非。

黒い羽……?

 この新生NILKLYですが、始動後1ヶ月位で羽を付けないでライブをやるようになってきました。(MILK GIRL Vol.1の時点ではすでに無かった)
最初の理由は単に「暑いから」とか「洗濯が間に合わなかった」的なものだったと思うのですが、それ以降から2021年8月9日現在に至るまで今の所羽をつけてライブを演っている様子はありません。
狙っているのかは田中さんに聞かないとわからないのであくまで個人的な印象ですが、この新生NILKLYのタイミングで「羽に頼らない」方向を打ち出しているのかなとか。私自身も見慣れてきた事もあってか、既存の曲も新曲も羽なしで観るほうが多く、パフォーマンスとして羽がなくてもNILKLYであるというアイデンティティを獲得し始めているように思います。

 もちろん羽を無くせと言いたいわけではなく、付けたら付けたで嬉しいんですけど、羽がある種着脱可能になったのはあんまり語られない割にエポックメイキングな事象なんじゃないかなと個人的には思ったりしています。

ベルハー曲の再アレンジ

 ここが私がNILKLYを観る上で一番鬼門だった部分です。
アイスクリームはICE CREAMに、asthmaはasthma - Nil Versionになったり、c.a.n.d.y.とか。

 曲に対して思い入れが強いタイプのヲタクなので、それこそアイスクリームに関しては最近やっと新しい歌詞と動きを自分の中で別バージョンとして受け入れることができるようになりました。asthmaはまだどうなるかわかんないですが多分気持ちの整理はついているはずです。1期NILKLYのときのasthmaはSharrow Graveの時期のものがまんまフラッシュバックして聴けなくなってしまったことはありましたけど、それももう2年くらい前の話なので。

 こんな感じで振り付け解説してくれるのは有り難い。振り付けの意味とかを知りたいタイプのヲタクなので。

 いまの新生NILKLYに関しては、NILKLYの既存曲ですら再録というか再構成していく段階だと思うので、逆に言うとアレンジには挑戦しやすいというか、これまでのNILKLYではやってこなかったベルハー曲やもしかしたらゼアゼア曲とかも演っていっても良いんじゃないかなーと個人的には感じています。

BELLRING少女ハート '22という「挑戦」

’22って?


 2022年2月23日、突如としてBELLRING少女ハート:公式Twitterアカウントより、ベルハーのサブスク解禁の一報が伝えられました。

 関連サイトも作る気合の入れようは田中さんにしては珍しく(?)ちゃんとしていたし、フィジカルで持っているとはいえベルハー曲は広く色んな人に聴かれてほしいと思っていたので、この方向性はめちゃんこ素晴らしいなと。10周年めでたいし。と思っていたのも束の間、続く2月25日にはこのツイート。

 「GRAVE ROBBERY」、直訳すると「墓荒らし」になるんですかね。この時点では誰が出るのか、どんなイベントになるのかは事前に発表されていなかったので全く分からず、運営トークイベ?現役Aqbiメンのベルハー曲ライブ?オタクが曲に乗ってワイワイする(メンバー出演なし)イベント?みたいな予想も飛び交ってた記憶があります。何もわからないけどとりあえず申し込みましたが普通に外れました。倍率すごかったんじゃないかなと。
 このタイトルのライブ「GRAVE ROBBERY」をnestでやるのは、明確にベルハー「崩壊」の際の「Shallow Grave」→「HELLO WORLD」の流れを汲んでのものだと推察されます。nestに眠ったベルハーの魂を掘り返す的な。

 そして4月8日。0時になると同時に無事ベルハー楽曲が各種サブスクに解禁されていきました。ぴったりに配信されるなんてあるのかな、、Aqbiだしな、、と正直あんまり期待はしていなかった部分もあったけれど、無事リリース。ちなみに私が最初にサブスクで聴いたベルハー曲は『Starlight Sorrow』です。

 そして同日行われる「GRAVE ROBBERY」はTwitterで状況を見守るという様相。TLから色々読み取って「なるほどね〜〜〜〜」となったのは最初の反応でしたけど、後述する「BABEL’22」を生で観たことでいくぶん整理できたので、以下はこのベルハー’22について感じたことなどをつらつらと書いていきます。

メンバーについて

 上記ツイートの様に、ベルハー'22のメンバーはNILKLYから小河原唯(小笠原唯)、MIGMA SHELTERから橘田あまね(タマネ)、新倉のあ(ブラジル)、美波美優(ミミミユ)の計4名です。なお、5月2日時点で新メンバーの募集がスタート(活動は年内限定)しているので、現時点でのものになりますが、各メンバーごとに印象と個人的に読み取った「ベルハー」的性質なんかを書いていきます。

・小河原唯
 この4人の中だといちばん「ベルハーっぽい」人だと思います個人的には。0201。オタクそれぞれの思う「ベルハーっぽい」があると思うんですけど、私としては「ベルハー」には「底知れなさ」「(いい意味の)子供っぽさが残っている所」「パフォーマンスに没入するところ」「独特の感性」あたりがあると思っていて、そうした時に唯ちゃんのそれは〜2016のベルハーを見てきた人たちだと殊更にそのへんは感じているんじゃないかなと思います。どこが初出か失念してしまったんですが、唯ちゃんがオーディションを受けた時期に関しての話で田中さんは「唯はどの時期にオーディション受けてても採ってた」的な事を言っていた的な情報を耳にしてからも、その納得感は深まるばかり。
 母体というか本来の拠点であるNILKLYはしばらく音沙汰が無いのでひたすら待つばかりではあるものの、唯ちゃんの「ベルハーで得たものを持ち帰りたい」的な発言があったと思うんですが、その心意気ならばきっとベルハー’22もNILKLYも素晴らしいものになると確信しております!!
 唯ちゃんはダンススキルが高いので身体の躍動と振り付けによって表現に説得力を持たせられる人だと感じていますし、元々NILKLYなのでいわゆるベルハー的世界観の楽曲には最初から親和性が高いので、全方位で強くなっていく未来が見えます。純粋に楽しみ。
 唯ちゃんのイメージは『ダーリン』です。

・橘田あまね
 タマネちゃんとは前髪ウィッグで別人格にしている模様。ダンスについてはもう説明不要なほど素晴らしい彼女ですけど、ベルハー’22になった時はその「声」がバチッとハマった感覚があって、’22における「ベルハー性」を担うのは唯ちゃんとあまねちゃんによるところがとても大きいのかなと感じました。4人それぞれ持っているんだけどその成分量が多い感じというか。あの技術にベルハー的表現力を身に着けたらどうなってしまうのか、末恐ろしいほどに楽しみです。この企画(企画と呼んでおく)、めちゃんこメリットあるな…とあまねちゃんのパフォーマンスを見ていて実感しました。
 あまねちゃんのイメージは『プラスチック21g』です。

・新倉のあ
 私は新倉さんの表現者としてのスタンスが結構好きで、それこそBABEL’22後のこちらのブログはとっても納得感というか、この事を考えてのあのアクトだったのかとパズルのピースがハマるあの感覚でした。この人は言葉を持っているなあと。板の上の人というか。

 上記のブログの中でもとくに以下の部分が好きです。

ミシェルは飛ぶ、入れるって感じでベルハーは入る、潜るって感じだな

https://migmashelter.amebaownd.com/posts/33967662

ブラジル現代史Lv.191
2022年4月26日更新 より引用

 楽曲ごとの強固な世界観が先にあって、そこに対して「入る」という表現は結構特徴的だと思っていて、それこそあやのさんが過去にインタビューで回答していたように演者にとっては没入してしまう魔力というか曲世界に入り込んでしまうのは非常にベルハー的特徴なのかなと思います。

 新倉さんの歌唱力、表情、ストイックな面、気迫、それら全てが今年はミシェルだけではなくベルハー’22にも注がれるということで、楽しみでしかないです。
 新倉のあさんのイメージは『憂鬱のグロリア』です。

・美波美優
 ミミミユさんは「ミミミユさんというジャンル」(引用元:小笠原唯さん)というのが答えになっている感じというか、一人でステージを、空間を掌握できるタイプの稀有なパフォーマーだと思います。それでいてグループ内でも様々な働きをするという。ミシェルのフォーメーション説明の表のやつとか解読できないレベルで複雑になっているし、あれを毎回考えてるのとてつもないなと。「底知れなさ」でいうと4人の中でもトップクラスなのでは。今でこそミミミユさんはMIGMA SHELTERのリーダーだしオリメンだしということでミシェルの歴史なわけですけれども、新グループオーディションを経てゼアゼアに入っていたら…?という世界線がいまこのベルハー’22に顕現したという見方もできなくもないのかなとかは思ったりします。
 黒い羽と黒セーラー、悔しいくらいに似合ってるな〜〜〜って思いました。
 美波美優さんのイメージは『low tide』です。

ライブについて

 上記はStoryWriterさんのライブレポート、およびギュウゾウさんによるセトリになります。オフィシャル的なものは上記の2つで賄うとして、以下は箇条書き形式で雑多に感想を書いていきたいと思います。現場での体感とアーカイブでの配信のものが混ざっています。

・新倉さんの眼力よ
・初っ端幕から照らされたシルエット→憂鬱のグロリアの流れはぶち上がる
・洗練されてるんだけどアンバランスなんだよなこの4人の組み合わせは
・カット割りが少々やかましいというか引きもう少し多くても良かった感
・小河原さんの前髪、初期感。
・羽の魔力ってやっぱりあるよね
・アッチェレの新倉さん、「「アイドル」を乗っけている」
・やっぱり最初の方の数曲は緊張が見えるわね
・現場で聴くアッチェレの鳴りは違った
・この歌唱の感じは意図的なのだろうか
・小河原さん、どの期のベルハーにいても違和感がない
・あまねちゃん、羽の使い方をすぐに習得している
・新倉さんが赤なのね〜
・「ステージは迷惑かけてナンボ」の精神、良い。板の上の人だ。
・田中さんの「次は絶対ぶち上がる曲なんでMIXとか禁止で」からのダーリンは土谷さんとのコラボキャスを観た人しかわからんネタだ
・ダーリンの振りコピ、2億年ぶりにやった
・新倉さんの低音が映える曲やな(ダーリン)
・あまねちゃんの身体の制動の見事さがベルハー的なイメージとは一見離れているように見えて実際の所ベルハー的王道からの逸脱的な意味で非常に「ベルハー的」な気がする。自分でも何を言っているかよくわからん
・1stシングルにyOUらりが収録されているアイドルグループ、本当にどうかしている(褒めている)
・練習は振り入れかで小河原さんが号泣した曲ことアイスクリーム
・NILKLYのIcecreamとベルハーのアイスクリームを両方演っているのは小河原さんだけなんだよな
・アイスクリームのアウトロでBlock Systemを構える身体になっていた
・13 WEEKS LATERは本当に名盤
・新倉さんの情感がこもる歌唱部分ぐっと来た(low tide)
・ランランラン…は美波美優さんだよなと解釈の一致
・鉄の街、〜2016で通ってた時期でも数回聴いたかどうかくらいの記憶
・ハグの部分で拍手だったのは何だったのだろうか
・タナトスはそれだけで映画
・rainyは一歩も動けなくなりました、幻追いかけてしまった。
・ROOMはみみみしぇるたーで観てたからまた観れて嬉しかった
・ROOMのみんな絵画みたいになるわね、画になる表情と構図
・asthmaはまだ辛かった。
・金髪ポニテのオタクが目立っててめっちゃいい(久遠さん)
・小河原さんが最初は「うんどう」と読むと思っていたでおなじみUNDO
・UNDOの美波美優さんめちゃくちゃかわいいな……
・Wednesdayの振りコピで隣のオタクと手を合わせて組むやつ今回もできた
・「ラズベリ〜」パートをあまねちゃんの歌割りにした人ありがとう
・田中さん絶対「アンダルシア」ってフレーズすきだろとなる
・人を殴らんばかりのサーカスの腕振りなちい
・サーカス→Edgeの地獄の流れ(最高)、細胞に染み渡っている。
・WIDE MIND、やんちー以来だ。(Timeout cafe & Diner)

ベルハー'22の位置付けや意義

 最初はベルハー’22??同じ名前を冠するの???という反応が私自身の中でもあったものの、そもそもベルハー自体がいくつもの体制の変遷を経て2016年に辿り着いているし、また楽曲から衣装、パフォーマンスに至るまでその性質が移り変わってきたグループだということを再認識すると、改めて見たときにこの10周年特別企画であるベルハー’22は意義のある挑戦なんじゃないかなあと思います。以下に考えられる理由を書きます。

・「みんなのファンをいただきます」
 現状AqbiRecのファン層の最大のパイはMIGMA SHELTERのオタクだと思います。そこに対してはミシェルからの3人が出演していることでベルハーという存在をその層に届けられるという効果がありますし、またベルハーを知っていた層はライブを通じて今のMIGMA SHELTERまたNILKLYに接続できるというか。地下アイドル界に半ば伝説として名が残っている「ベルハー」という資産を有効に活用している企画だなあと思います。ライブとしての強度も高いし色んな人に観てほしいです。

・既存グループへの「ベルハー」表現の還元
 これは上述したように再三書いていることではあるんですけど、ベルハー楽曲はジャンルを設けるなら当初は「サイケデリック・ロック」だったかと思いますが、後期になるにつれその幅は大きく拡がって多種多様なものとなっており、そうした楽曲群の表現をレッスンやライブを通して血肉としていく様はめちゃんこワクワクしません?????なんというかそれぞれのグループに呪術性が宿るというか、そういった想像をするだけでも滾るものがあります。

・ベルハーという伝説の「再現」による楽曲群の再評価
 本来(?)はベルハー楽曲サブスク解禁が本企画の第1報だったというのもありますが、これらが解禁されることは本当に重要だと思っています。楽曲は聴かれてナンボだと思うのでね…!あとサブスクで回すと収益にもなるし(重要)。ベルハーは崩壊から約5年半経ち、当時を知るオタクも割合でいうと明らかに少ない方という感覚がある為、この解禁により広くベルハーが開かれていくことは、ひいてはベルハーを残していくことに繋がっていくのではないかと。

・爆音のベルハーでしか分泌されない脳内物質がある
 ライブハウスの音響で低音の振動やメンバーの歌声、サウンドに心と身体を踊らせるというあの体験はやはり何物にも代えがたいなと思います。別にEdgeとかasthmaみたいな盛り上がり曲ばかりではなく静かな曲、暗い曲、可愛い曲など数々取り揃えているので、その感情にどっぷりと浸れる機会には足を運んでほしいなあというところです。

 上記のような理由から、個人的にはこのベルハー’22に対しては「ベルハー企画」という認識ではあるものの、メンバー当人含めて「ベルハー」というものに真剣に向き合って作っていることがライブを通して改めてわかったので、まぎれもなく「黒い羽」の文脈として認識していますし、今後も熱量高く年内の活動を見守っていきたいと思っています。

おわりに

気づいたら1万字近く書いてきましたが、私なりの黒い羽の系譜とその意味合い、それぞれの良さなどについては概ね記せたんじゃないかなとは思います。
たまたま私はベルハーを体験していましたけど、逆に間空いてゼアゼアは殆ど経験できなかったですし、もっと知りたかったなという気持ちは往々にしてあります。
そういった面も踏まえて、難しい時期ではありますけど、各々の推しには会ったり気持ちを伝えて欲しいなと思ったりしました。


参考書籍

『かいわい』編集部 (2020)  アイドル批評誌『かいわい』かいわい編集部.
※BOOTHにて発売されている同人誌


参考動画(Aqbi公式より)

・ベルハー

・ゼアゼア

・NILKLY:記事内に記載


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