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ラジオ「短歌のくせになまいきだ」

先日、スカイツリーのそばにある東京都墨田区のミニFM局にて、短歌のラジオ番組のパーソナリティをさせていただきました。

短歌のくせになまいきだ」。

こんなタイトルにしちゃいましたけど、毒舌でばっさばっさ斬っていく内容じゃないんです。そんな技量ありませんし、ぜんぜんご意見番でもないですし。
ただただ好きな短歌、気になる短歌、もっと世間に知られたらいいのに的な短歌を紹介する番組をやらせてもらいました。

このタイトル、お分かりの通り「ドラ○もん」の登場人物のセリフを引用してます。
なのであらかじめ「ドラ○もん」の某出版社にご連絡しまして、このタイトルの使用の判断と著作権的なものについての可否を伺って、ご了承いただいてます。
あとゲームソフトにも似た名前があるみたいで、そちらの販売元・制作会社サイドにもちゃんとご了承いただきました。すごく真面目。偉い。いや偉くない。ただ権力に慄いてるだけです。

さて、この番組は実は二回目で、昨年の10月にもやりました。それから半年経って「小向さん、またラジオ(で短歌の番組)やりませんか(やりたいんでしょ)?」と誘ってもらえたので、喜んで乗っちゃうことにしました。

紹介する短歌を選ぶにあたり、「〇〇な歌」のように、ある程度テーマで括って絞ろうかなと思いましたが、やっぱりテーマで括るのが申し訳ないほどぐっとくる歌は山ほどあって、それらを候補に挙げてくうちにどんどん「こんちくしょう!これも捨てがたい!」と膨れていって、結果200首ほど。その中から、短歌を知らない人の記憶に残したい歌をひとつの基準にして選びました。

番組は生放送で、東京都墨田区近辺ならラジオで、USTREAMの方は映像配信でお送りしましたが、やっぱり時間が全然足りない。マジで足りなかった。本当は45分に収めなきゃいけない所を引き伸ばして50分にしてもらいました。
毎週後番組の生放送が同じスタジオであるのですが、たまたまその日は無かったみたいで、せっかくだから怒られるギリギリまで居座ってやろうと思いましたが、ディレクターのさちさんは怒らせたら怖い(うそです。いや、うそじゃないです、さちさんは自分より一つ下ですが僕はずっと敬語です)なのでやめました。
持っていった歌のすべては消化しきれませんでした。
その分も含め、こちらでご紹介します。

紹介させていただいた歌

どこまでも続いていると知ってたらこの電車には乗らなかったよ (ひなちい子さん)

ことことと積載超過のバスがきて紋白蝶をおろして行った (しま・しましまさん)

ドラえもんだったらしいが片寄って夏の海辺となる昼ごはん (有村桔梗さん)

まちがえて碧いうなぎを買ってきたひととうなぎと暮らしています (西村湯呑さん)

沈黙のなかに「虹だ」の声があり それきり無言電話がこない (まるやまさん)

反対になった電池が光らない理由だなんて思えなかった (加賀田優子さん)

サーカスの寄らない町に春は来てじじいの香車がとにかく速い (すみみさん)

変わらない日々ではあるが同じ々はないと気が付く手書きの々々だ (きつねさん)

本当に好きだったから出来るだけ楽な姿勢で落ち込んでます (ののさん)

ラジオから流れた君のごめんねも東京タワー経由の言葉 (HBリリーさん)

入り込む君の悪夢に入り込むなんだ楽園じゃないか今日も (ナイス害さん)

森へ水ぶっかけるために降ってんだ、雨は かなしい、とかダブらすな (はだしさん)

疑問符をはづせば答へになるやうな想ひを吹き込むしやぼんの玉に (光森裕樹さん)

舞い降りてきみはすぐに街灯と信号の違いに気づいたね (戸田響子さん)

縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています (飯田和馬さん)

ありがとう なんてことない人生をちゃんと物語にしてくれて (檀可南子さん)

扇風機に五枚も羽根があると言うきみに羽根無しのを見せたくて (スコヲプさん)

この歌に出てくる君は君なので僕だけ好きな歌だと思う (小向大也)

※紹介順

紹介したかった歌

月、といふ声に振り向く シンデレラなら走り去るはずの場面で (大葉れいさん)

にっこりと花を差し出す君だけどこれはいったいなんという武器 (ニキタ・フユさん)

文化祭準備期間が永遠にあるならもっと青を塗るのに (ナタカさん)

たまに君お越しくださいそれだけで古いレールは光りますから (中牧正太さん)

押し入れにしまった銀のクレヨンがうちゅうひこうしなれたかと問う (月丘ナイルさん)


今回、このようなラジオで紹介させていただいた歌の歌人のみなさま、本当にありがとうございました。
今回番組では、短歌の技法やテクニックなど、技巧的なことについて掘り下げたりしていません。だから短歌がすごい好きな人には物足りないかもしれません。
放送時間の都合もありますが、もし次回やらせてもらえるのなら、そういったテクニカルな部分も掘り下げてみたいです。

短歌を知らない人たちへ向けて紹介すること」が番組をする上での譲れない部分(不特定多数の視聴者へ発信されるラジオ番組として成立するための最低条件)でもあったので、できるだけ平易な言葉でしゃべってみました。僕の話に大した内容はありません。さっき録画配信を観てみたら「いいなー」「いいですよね」「すごい」くらいしか言ってません。
本当にすみません。

良い歌というのはある意味完成されているので、発想→構想→構築のプロセスが見える(辿れる)ものが多いのですが(※個人の見解です)、今回紹介させていただいた歌のほとんどは自分の"好きな歌"でもあるので、なぜ好きなのか、その好きについて説明するのが難しかったです。これからの課題です。

そして画面に短歌を映す関係上、作者の方の意図ではない部分で改行されている場合があるかと思いますが、何卒ご容赦ください。

悔しいくらい素敵な歌、絶対追いつけない歌もあったりするから、ジェラシーも人一倍感じてしまう僕ですけど、良いと思った作品は素直に良いと言いたいんです。人に教えたいし知ってほしい。人の目に触れられてほしい。そして歌を詠む人たちの感性にひりひりしてほしい。生活の中でふいに思い出す歌があればいい。身震いするくらい人生を肯定してくれる歌と出会ってしまえばいい。救われなくていいけど、短歌で少し幸せになればいい。

というようなことをラジオで言えば良かったな、と今これを書いてて思いました。

そして視聴してくださった皆様、本当にありがとうございました。心から感謝いたします。

最後に、番組タイトル・ロゴデザイン、いっしょにあーでもないこーでもないと考えてくれたデザイナーのシロタアキラ氏に感謝です。
紹介したい歌の候補をずらーっと並べて見せた時の「短歌っておもしれーなー」のひと言が忘れられません。
"短歌は壁に飾れる" っていう僕の持論に唯一賛同してくれた人です。

次にやるときはもっと喋れるようになりたいです。そして出来ることならどなたか歌人さんに来てほしい。語り尽くしてほしい。ご飯代ならおごります。

(小向大也)

http://www.ustream.tv/recorded/86121510
↑USTREAM配信はこちらから観られます



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