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サイアノ和紙作家日記 vol.30『そこに在ったひかり』が終わって
西会津国際芸術村で催した
『そこに在ったひかり』が終わった。
開始ギリギリまで準備に追われたので、
しばらくは手放して視ることができなかったが、
日増しに客観的に捉えられるようなったと思う。
今までは壁に作品を掛けていたが、
今回はすべて天井から吊るす展示。
なかなか大変だったが、
芸術村スタッフの技と経験により、
イメージした方向に持っていけたと思う。
ひかりを一方向から取り込むことで、
時間帯や天候によって見え方が変わる。
特に西日が差し込む夕刻は、
本当に美しいと我ながら感じられた。
この環境じゃないとできない、
他ではなかなかできない展示空間だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1687964578691-dtlN5Tz8QM.jpg?width=1200)
西会津のひかりで感光させた青い作品たち。
支持体も同じひかりで育った
地元に自生する楮を刈り取り、
手作業で材料をつくり漉いた出ヶ原和紙。
フレームには皮を剥いで
不要になった楮の棒を使った。
地産地消的な作品制作に説得力はあったと思うが、
それらはあくまでフックのつもり。
町の景色や催事などの出来事も全てはひかり。
人間の視覚はひかりがもたらしているからこそ、
その存在を感じて欲しくて展示空間をつくった。
![](https://assets.st-note.com/img/1687964688828-gzznc00oT4.jpg?width=1200)
西会津町は日本の典型的な田舎町。
都市化の波もやって来てこなかった分、
昔とそう大きくは変わらない
景色や営みが色濃く残っている。
そう、この町は昔のひとたちと同じものを、
いまだに視ているのかもしれない。
その視るという行為の源泉はひかりであり、
この土地には同じひかりが
昔と変わらず降り注いでいる。
太陽から降り注ぐひかりが
この土地ならではの気候風土をつくり、
その環境下で草木や動物、
そして、ひとを育んできた。
気候風土がひとの気質や文化を育み、
土地の記憶として脈々と受け継がれてきた。
それらは全て、太陽から降り注ぐ
ひかりによってもたらされている。
![](https://assets.st-note.com/img/1687964909335-SUNwTxMju4.jpg?width=1200)
そんなコンセプトを内包する展示をつくった。
でも、初見でそんなことが伝わるワケではない。
まずは作品や展示空間を美しいと
感じてもらえたらそれでいい。
そう思ってもらえてはじめて、
制作のプロセスとコンセプトを伝えるようにした。
自由に感じてもらえたらよいのだけれど、
興味を抱いてくれた方とは作品や展示空間を通して
コミュニケーションをとりたいと思ったから。
結果として興味を抱いてくれた方たちとは
よいコミュニケーションがとれたと思う。
手応えがかなりあったと自負している。
![](https://assets.st-note.com/img/1687965687228-WXcoY2C6AB.jpg?width=1200)
今回の展示をベースに巡回させるか、
イチからつくるのかはまだ決めていないが、
『そこに在ったひかり』のコンセプトを
他の土地でもやってみたいと思っている。
今後も僕のライフワークとして育んでいきたい、
そう思っている。
現代写真家 山田谷直行 個展
『そこに在ったひかり』
西会津国際芸術村 NIAV
2023年6月3日(土)- 6月25日(日)
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