ポップアップフォトスタジオ、西会津青写真館開催
古くて新しい和紙写真館
昔ながらの大判フィルムカメラで撮影して、旧会津藩御用紙という由緒正しき歴史を持ち、今も手づくりにこだわってつくられる、出ヶ原和紙(いずがはらわし)に写真をプリント。古くて新しい写真館を期間限定でオープンします! 6月に西会津国際芸術村で催す僕の展示、『そこに在ったひかり』と同時開催。展示室の隣の部屋が写真館になります。
まず、何が古いのか?
撮影に使う機材は黒い布を被って撮る、昔ながらの大判フィルムカメラ。1枚1枚フィルムを抜き差ししながら撮るので、連写なんて当然無理。もちろんデジタルカメラのようにその場で確認はできません。
撮影したフィルムはタンクに温度管理をした薬品を入れて攪拌現像すると、白黒反転したネガフィルムが完成。そのネガフィルムを焼き付けて写真にするんだけど、その焼き付けるのに用いるのは、19世紀に発明されたサイアノタイプ(青写真)という古典写真技法。カラーでも白黒でもない、青いモノトーン写真に仕上がります(だから青写真館)。
ひと昔前の大判フィルムカメラで撮影して、もっと古い技法で写真をつくる。19世紀と20世紀をミックスするから、まず古いと定義しています。
いったい何が新しいか?
フィルムからつくる写真に使われる紙のことを印画紙と呼びます。ネガフィルムを通して露光することで、印画紙にイメージを焼き付けます。印画紙は国内外の写真感材メーカーがつくったものを僕らが買って使っていました…、なぜ過去形なのか? 今でも一部のメーカーは販売していますが、以前に比べたら激減しています。現像や焼き付ける手間がかからず、すぐ見られるデジタル写真時代になって、需要が少なくなったのが主な要因だと思います。
西会津青写真館の印画紙は僕がつくります!
西会津青写真館に使う印画紙は、メーカーが販売する紙は使いません。西会津に自生する楮の刈り取りから僕がやり、蒸して剥いで煮て叩いて漉いて搾って干して完成した出ヶ原和紙を使います。フィルムやカメラ、レンズなどは市販品なので、厳密に言えば全て手づくりというワケではないけれど、供給の乏しい印画紙に頼るのではなく、やれることはじぶんでやって、新しい写真をつくりたい。そんな願いを込めています。
不鮮明だからいいのだ⁉️
ハッキリ言って精細さなどは、デジタルカメラどころか、最近のスマホにも負けてます。じゃあ、なんで撮るのか? 僕は記録を記憶にしたいからだと思っています。
目を閉じて思い浮かべる記憶って、精細でも鮮明でもない。ぼんやりとしたイメージ。だけど、視覚だけじゃなく、音や匂い、暑さや寒さなど五感を使って再現されるから、しっかりと記憶が刻まれる。これはあくまで僕の仮説だけど、記憶に残る情報って、ちょっと足りない位がちょうどいい。仮に鮮明過ぎるイメージは視覚の情報が強すぎて、記憶としては案外残らない。何か足りないんだけど、五感がちょっとずつ補う位が、本当に残る大切な記憶だと思う。
西会津青写真館が提供する和紙青写真は、高精細じゃないし、そもそもカラーでもない青のモノトーン。情報としては不足気味だけど、だからこそ、この日この年のことや、写真館で撮られた時の思い出などが記憶として刻まれる。
撮影して現像、焼き付けを終えて完成するので、写真は後日郵送となります。その写真を家族や友人などに見てもらい、もちろん一緒に楽しんでもらえたらと思う。でも、優先順位をつけるとすると、一番は被写体となるじぶん自身のために撮ってもらいたいと願っています。何かの記念日でもない、ごく普通の日の記憶を刻んでもらえたらと思います。
西会津青写真館開催情報
日程 : 6月3日・4日 / 7〜11日 / 6月23日〜25日
時間 : 10時〜17時
場所 : 西会津国際芸術村 NIAV
料金 : 3,000円(税込)
写真サイズ : 約102×127mm
印画紙 : 出ヶ原和紙
撮影者 : 山田谷直行
※ワンシャッター、写真1枚の料金になります。写真は後日郵送。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?