与沢翼、大勝ちから9000万円の損切りもあった1年。2021年相場を分析する

かつて“秒速で1億円稼ぐ男”として名を馳せた与沢翼氏は、現在タイ、ドバイ、シンガポール、フィリピン、マレーシアなど世界の複数の国に資産を分散し、75億円もの純資産を築いた。世界的なコロナ禍で国境を越えるのが難しい今はタイ・バンコクに留まり、個人で日々相場を見続けているという。

 コロナ禍で本業が不安になる人も多い中、ウィズコロナの時代、与沢氏は「資産運用も意識せざるを得ない」と話す。

「人生とはしんどいもので、苦難の連続。耐えなければいけない時期も長くあります。しかし、地道に耐えて待っていればそれだけでよくなるかと言えばそうではない。仕込みをせねば、将来に何の花も咲いてきません。仕事も同じですが、投資も同じです」

 2020年、与沢氏はコロナで大損しつつも、それを取り戻すことができたという。まずは2020年の相場を振り返ってもらった。

「2~3月のコロナショックでは、人生最大となる2.1億円の損切りをしました。しかし、その後のリバウンド相場でプラスに持ち直すことができました。4~6月はコロナショックからのリバウンドで非常に強く、7~8月はやや夏枯れ相場といった感じで弱かった印象ですが、9月も再び強かった。

 夏に好決算を出したラクス、歯愛メディカル、エムアップ、セレス、エスクロー・エージェントなどを買ってホールドしておけば、高値をどんどん取ってくれました。直近IPOでもサンアスタリスクや上方修正をしたコパ・コーポレーションなど人気銘柄は軒並み強かったです」

マザーズ指数

マザーズ指数はコロナショックで900台から500台まで急落。しかし、大底から7 か月かけて約2.5倍まで上昇。マザーズ時価総額上位の人気銘柄が高騰したことを示す
 ところが、順調な相場は10月上旬で終わる。

「とある銘柄の月次売上をギャンブル的にまたいでしまい、一瞬で6600万円やられてしまいました。ほかの銘柄でも負けに負け、10月だけで約9000万円の損切り。10月から11月は好決算や上方修正、まずまずの決算が出ても売られ、相場の雰囲気がガラッと変わったのを感じました。なので、コロナ禍相場は前半がよく、後半は厳しかったという印象です」


◆与沢翼は2021年相場をどう見る?


 大きな負けも経験したが、コロナ禍相場でも果敢に攻め続けた与沢氏。2021年相場をどのように見ているのか?

 景気は厳しいのに、11月に入ると日経平均が29年ぶりの高値を更新。一方、それまで活況だった新興市場の中小型株は下落したものが多い。

「つまり、実体経済を見ても大型の指数を見ても何が起きているのかわかりにくい相場が続いています。指数注視ではなく、資金が流れ込むであろう銘柄をしっかり見ることで、引き続き儲かる相場にもなると見ています」

 そのためには、与沢氏は「コロナ禍で起きている不可逆的変化を見極めることが大切」と説く。

◆厳選したグロース株に資金を集中させる


「不可逆的変化とは特殊事情や一過性のものではなく、時間がたってももう戻ることがない社会の流れ、トレンド、変化のこと。その先に投資資金が流れていくのではないでしょうか」

 この“劇的変化”に乗り、業績も大きく伸ばしている銘柄を与沢氏は「スターグロース株」と呼ぶ。グロース株とは成長株のことだ。売上高や利益が年次で急速に拡大基調なうえ、四半期ごとの推移を見ても例えば数十%ずつ伸びていくような銘柄。

 取材が行われた11月5日に与沢氏が注目していたのは、オイシックス・ラ・大地やファーマフーズなどの銘柄だ。

「今後もスターグロース株は買われるでしょうが、今まで以上に選別は必要になるかと思います。主役が変わる可能性も高い。足元の売上拡大速度、会社計画の進捗率、上昇傾向の株価、数年先の業績拡大の規模に関する思惑に加えて、業種やテーマも選び抜く必要があります。スターグロース株は大きく稼げる半面、株価は行き過ぎることが不可避のため、最後には暴落を食らいやすい。ただ、ついていける限りついていくことも重要。逆回転の潮目を出来高やチャート、シナリオの余地から判断して最後は潔く撤退する。3歩進んだ後に1歩下がるようなイメージです」