一連の事件のその後について ~CHAOS;CHILD(カオスチャイルド)考察~

※本編を履修済みであることが前提の記事ですので、未プレイの方が読むことは御遠慮ください


乃々のジト目は万病に効く

※上の画像は本記事の内容とは特に関係ありません。本文はこの下から開始になります。




 さて、ここから本題。

 一連の事件において、宮代拓留は「自分こそが真犯人である」と名乗り出ることで拘留されることになりました。その後の彼の処遇はいったいどうなるのでしょう?
 一部では「これほどの連続殺人だ、極刑は免れないだろう」と囁かれていますが、私の見解ではおそらくそうはならないだろうと思います。
 以下にその理由を並べていきます。



【前提】

 そもそもこの一連の事件は尾上世莉架によって「宮代拓留を冤罪のヒーローに仕立て上げる」ことを目的に起こされたものです。

1.まず思考誘導を駆使して警察上層部を操ることで、強引に宮代拓留を被疑者として公表させる。

2.そうしていったんは世間の疑いを宮代に向けさせ、そのうえで彼の潔白を示す情報を意図的にリークすることで、一転して宮代拓留は冤罪のヒーローになる。

 これが世莉架の元々の筋書きでした。
 世莉架の目的はけして拓留を裁判で有罪に追い込むことではありません。真の目的はむしろその逆。そのために拓留の潔白を証明する用意をしていたであろうことは共通ルートの終盤で示唆されています。

 

【実行不可能な犯行】


 第一から第五の事件については当初は「自殺」と判断されていました。
 じっさい彼らは思考誘導によって自殺させられたわけですから、思考誘導の存在を知らない者からすれば「これは自殺だ」としか説明のつけようがありません。
 さらに言うと第一の事件は生放送の最中で大勢の目撃者がいますし、第二の事件も大勢の通行人が目撃しています。
 第三の事件も拓留が学校にいる間に発生しており、彼が現場に駆け付けたころには既に到着していた警官が応援要請を行っているところでした。
 第四の事件も、神成刑事が言っているように拓留にはアリバイがあります。
 第五の事件のときも、拓留は日中は平素と同じく学校に通っていました。また放課後は閉店間際まで仲間とともにカフェに居座っていたということは店員がしっかり目撃しています。

 ……以上のように、第一から第五の事件はそもそも当初「自殺扱い」だったうえに拓留にはほぼ完璧なアリバイがあります。世莉架の目的を考慮すれば、彼女が意図的に

「(後で潔白を証明しやすいように)拓留にアリバイのある状況で犯行に及んだ」

と考えるのが自然でしょう。
(思考誘導を受けた)警察上層部が宮代拓留を一連の事件の被疑者として公表した際に、現場で捜査に当たっていた神成刑事が「ばかな」と驚いていたのも「できるはずがない」という確信があったがゆえの反応でしょう。


【第六と第七の事件】


 まず先に第七の事件である来栖乃々の殺害未遂について。
 これは当の被害者である乃々(泉理)が「宮代拓留に刺された」とは絶対に認めないでしょう。
 かといって本当のこと(刺したのは世莉架)を言うわけにもいかないので「犯人の顔は見ていない」あるいは「何があったか覚えていない」とでも言ってお茶を濁したものと思われます。

 またこの事件では肝腎の凶器が発見されていないはずです(世莉架のディソードが凶器なのだから見つかるわけがない)
 拓留は乃々とともに倒れているところを、後から駆け付けた者たちに発見されたわけですが、現場には凶器がありませんでした。
 仮に拓留が乃々を刺した犯人だとすると、

 乃々を刺した後でいったん離れた場所まで行って凶器を処分して、そのうえでまた犯行現場まで戻ってきて、倒れた状態で救急が駆け付けるのを待っていた

 ということになりますが、どう考えてもそんな時間的余裕があったとは思えませんし、だいいち犯人の行動としてあまりにも不自然すぎます。
 乃々が一命をとりとめたことから考えても、彼女が刺されてから救急が駆け付けるまで、それほど長く時間はかからなかったであろうことは想像に難くないとなればなおさらでしょう。
 順当に考えれば「第三者の犯人が凶器を持ってそのまま逃走した」と考えるほうが自然です(というか実際そうだし)

 そして第六の事件。
 これについては第一から第五の事件と違い他殺であることが明らです。
 しかしながらこの事件も「実行犯が伊藤である」ことはハッキリしています。

 以上のように、実のところ「宮代拓留を殺人罪に問うだけの証拠は何も無い」というのが実情です。
 まともに捜査すればするほど、拓留の有罪を証明するのは難しいであろうことがわかります(そもそも十分な証拠があったなら、思考誘導など使わずとも警察は拓留を追っていたでしょう)

 しかしながら当の本人が「僕が犯人です」と名乗り出ている以上は、ひとまずは拘留して捜査を行わざるを得ません。
 とはいえ検察も裁判で有罪を立証できるだけの証拠を揃えられないため、事件から半年を過ぎても未だに公判が開かれていないということは後日談小説で明らかになっています。
 ひとまず宮代拓留の罪は「伊藤真二に対する殺人教唆」の線で捜査が進められている模様ですが、それに関しても不可解な点があまりにも多すぎて、検察側の人間も戸惑っているというのが現状のようです。


【まとめ】

 
 以上のように、仮に宮代拓留の罪を問えたとして最大でも一件の殺人教唆一件の殺人未遂だけにとどまるでしょう。場合によっては最終的に無罪、それ以前に不起訴ということも有り得ます。

 ……ですが、有罪になるにせよ不起訴になるにせよ、結論が出るまでには多くの時間を要します。宮代拓留が十代の終わりから二十代にかけての長い時間を檻の中で暮らす羽目になるであろうことに変わりはないでしょう。
 また、こうした冤罪事件は被疑者逮捕の際には大々的に報じられる一方で、後に冤罪が明らかになったときには、それほど騒がれないというのが世の常です。
 仮に宮代拓留が法的に無罪ということで決着したとしても、それを知らずに「あの事件の犯人は宮代拓留」だと思い込んだままの人間は数多く残るでしょう。
 また知ったうえで「そうは言ってもやっぱり本当は犯人なのではないか」と疑いの目を向けるものも少なからずいるはずです。
 さらに言えば、宮代拓留が殺人については無罪だとしても、彼が自ら「犯人は僕だ」と名乗り出たことは事実なわけですから、その場合

「立て続けに起こる猟奇事件に便乗して、嘘の自白で世を騒がせた愉快犯」

というのが世間における宮代拓留の扱いになるはずです。そうなればもう社会的には死んだも同然でしょう。

 そして、仮にそれらがなくとも既に宮代拓留が三委員会と和久井に目をつけられていることは事実です。檻の中にいようと、檻の外にいようと、彼に平穏な日常はもう有り得ないでしょう。

 ……このくそったれなゲームの第二幕「彼の闘い」はまさにこれから始まるのです。

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