風を吹かせて

給料日
もう3度目を迎えるスペシャルデー

何か起こるわけじゃないけど給料日はやっぱり嬉しい
こんなにもらっていいものかと恐縮しながら
日々の自らの言動すべてに喝を入れる瞬間
私はもう永遠の社会人になったんだと息を呑む

そんな今日
暇だ
そう喚く自分の感情に
本体自体までを殺められそうになって
雨予報をひっくり返した昼下がり
目的地もなく自転車を走らせた

ただひたすら真っ直ぐに風を切る
通り過ぎていく慣れない風景と
何かが突然飛び出てきそうなスリルを
大切に抱えて
珍しく無計画で家を飛び出した自分を撫でた

新しく住み始めたわたしの家の周りには
驚くほど便利なものが少ない
車を使う人間がそれを手放したもんだから
とんでもなくやることが見当たらない
特別アウトドアでもないが
家を出ず休みが淡々と結んでいくなんて

そんなの嫌だ

仕事に楽しい気持ちで取り組める分
休みがそれ以上に充実していないと
どうも嫌気がさして
次の週のパフォーマンスに影響がでる

大雨女のわたしに突如現れた燦々なる時間
無駄にはしたくなかった

たどり着いたのはマクドナルド
コンビニすらない地で過ごす分
どんな些細な外食でも特別に感じる
今日は特に初めてのひとりマック
時間にもお金にも余裕がある分
自分の頬が緩むことにさえ気づいていられる

14時
車が何台も通り過ぎる窓側の席で
おばあちゃんがふわふわと読書をしているのを眺めて
背徳感すら感じず周りの音を遮断して
never young beachの音楽に支えられる

蓮は咲く
今日のわたしには心地よい
青空にこんなに救われているなんて
1年前は気づけなかったな

隣の席の父娘に
幸せでいてくれと願う

あの人が好きな本を買って帰ろう
日に焼けた頬を押さえながら

今はまだ完璧なインテリアじゃなくていい
扉ひとつ挟んだだけで
夢だと思えるような空間に生きよう

まだ始まったばかり

あなたも小さな幸せを摘んでいてね

(おばあちゃん寝ちゃった)

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