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ケニアとタンザニア、サファリするならどっちが良い?

▶ケニアとタンザニアどっちが良い?
この答えは、マガジン『誰も知らないヌーの大移動』を購読してくれた方はもうお気付きだと思います。
どっちが良いのか?
それの答えはヌーが握っているんです
サバンナの命は様々な形で繋がっています。共生関係、食物連鎖、群れという繋がり、親子という繋がりetc. 
草食獣と草は繋がっています。草は土壌や雨と繋がっています。草食獣の糞は土の肥沃さにも繋がっています。糞はスカラベ(フンコロガシ)と繋がり、スカラベは糞と一緒に未消化の種や栄養素を土に埋めてくれます。木と繋がっているんです。木の根は大地の雨を吸収し、葉を落とし大地の栄養に繋がっていきます。
霊長類と草食獣も繋がっています。木が茂るところでサバンナモンキーを見つけたら回りを見回してみてください。ブッシュバックやインパラなど葉を食べる草食獣がいるかもしれませんよ。木々の枝を歩き回るサバンナモンキーはおいしい新芽を見つけることができるので、彼らはサバンナモンキーの後を付いていくのです。共生関係ですね。
みんな様々な形で繋がっているんです。

ヌーは何と繋がっているの?ヌーがいないとサファリはつまらない?
もちろんヌーがいない所にだって、良いことは様々あり。
詳しく見て行きましょう。
まずはマサイマラNR(ケニア)とセレンゲティNP(タンザニア)を地図でをおさらい↓

赤い囲みは北からマサイマラNR-セレンゲティNP-ンゴロンゴロCA

ヌーの大移動を軸にサバンナの1年を見ていきましょう。
なぜわざわざこんな遠くまで大移動するの?という話は「誰も知らないヌーの大移動」をお読みください。単純に草があるからという答えではありません。そこには様々な繋がりがあり、ヌーは色んな事を考えて賢くたくましく生き抜いているんです。

各月は一般的な情報。必ずしも1か月ずつ規則正しく移動している訳ではありません

マサイマラNRのベストシーズンはもちろんヌーがいる7中旬~9月初旬
ヌーの大移動がやってきて草原は大賑わい。ヌー達が大雨季に伸びた草を踏みつけたり食べて草丈が短くなると、トムソンズガゼルをはじめトピやエランドも集まってきます。しかも時には100頭を超えるなど普段より大きな群れが見られます。
草が短いためライオンやチーターなど背が低い動物も見つけやすく、もちろんヌーという食糧が豊富で肉食獣も活気づいています。ブチハイエナやハゲワシも同様です。ケニアのベストシーズンは間違いなくヌーがいる時!

9月から雨が増え始め10月から本格的に小雨季に入り、ヌーの大群は南のセレンゲティNPへ向かって出発します。
「トムソンズガゼルはシマウマを追う」と言われていますが、この時はどうやらタンザニアにはついていかないようです。雨でマサイマラNRに栄養豊富な新芽が生えるからでしょう。長く続いた大乾季で草原は枯れ果てていましたが、ヌー達が草を刈り取ったおかげで草の成長が促進され、また彼らが落としていった糞が栄養素となり草原は青々としています。まさに小雨季の雨は恵みの雨なのです。ヌーがいなくなりベストシーズンの後ですが、充分良い季節ですよ。トムソンズガゼルに限らず多くの動物がマサイマラNRで幸せな時を過ごしています。
12月中旬頃になるといったん雨はおさまります。2月頃まで小乾季と言われますが、大乾季に比べるとそこそこ降り、後半になるほど草は伸びて動物達はバラけていきます。

そして3月からの大雨季。草を大量に食べてくれるヌーがいなくなって久しいので、草はどんどん伸びてしまいます。バッファローとシマウマを除くほとんどの動物が短めの草を好むため、草食獣は短い草を求めてバラけ、またはマサイマラNRから離れていってしまうのです。草食獣がいても10~20頭の小さな群れしか見られないでしょう。食べられる短い草は減り、雨で体温を奪われ、長く伸びた草のどこにライオン達が隠れているかも分かりません。動物達にとって大雨季は恵みの雨どころか厄介な雨なのです。
つまり、雨が降り続きピークとなる4月~5月はマサイマラNRのワーストシーズンになります。

▶一方で、タンザニアはどうなっているのでしょうか?
ケニアがワーストシーズンの4月~5月、ヌーはセレンゲティNPの南から大移動を開始しているのです。中心地セロネラに向かう途中の、ナアビゲート付近やモルコピエの辺りにいます。

ヌーはゲートから中心地に向かう途中の草原に多く見られます

ここは比較的草が豊富なオープンランドなためヌーは先を急ぎません。ヌーの群れがトムソンズガゼルなどを呼び、またヌーのオス達がメスを巡りファイティングを始めたり交尾が見られる季節です。雨が降るとはいえ、サファリには決して悪い季節ではないと思います。

以上のように季節によって(ヌーによって)ケニアが良かったり、タンザニアが良かったり……です。
サファリをよく知る人、こだわってサファリをしている人達にどちらが良いかを聞くと、ややセレンゲティNPに軍配が上がります。でも初めてのサファリだったらマサイマラNRを推す人は多いです。

結局ケニアとタンザニア、どちらがいい?
▶私は「季節に因ります」とお答えしています。
7月~9月ならマサイマラは間違いなくベストシーズン。4月~5月はワーストシーズン。
一方セレンゲティNPはワーストシーズンがありません。また南の端から北の端まで常にヌーがいるため、場所を選べばいつだってセレンゲティNPはグッドシーズンです(通常のサファリでは中心部のセロネラを回ります。ロッジもセロネラに集中しているので、申し込み時にリクエストを出さなければセロネラになると思います。季節による場所の選び方は次々回『セレンゲティNP深掘り』で書きます)。
▶サファリの目的によっても違うと思います。
・マサイマラNRは初心者向け=短期間の旅行でとにかくたくさん動物が見たいと言う人向け。動物は間違いなくたくさん、しかも近距離で見られますが車が殺到します。
・セレンゲティNPは動物に限らず自然をもっと楽しみたい人向け=テレビや動物写真家の多くはセレンゲティで取材しています。ドラマを感じることができるんです。もちろん中心部セロネラではマサイマラNRと同様にたくさんの動物が見られますよ。
▶セレンゲティNP(タンザニア)は値段が高いというデメリットがありましたが、2024年からマサイマラNRの入場料が爆上がりしたため値段はあまり関係なくなりました。

次回、ケニアVSタンザニアをじっくり深堀します。

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