主人の話。2(食事会とか)

結婚前、息子のどこにひかれたのかと食事会の席で問われた。

『凹んでるときの打ちひしがれた風情のうなじが実にイイんだぜゲヘヘ』

などと言ったらさぞかしご両親を不安にさせてしまうだろう。
とんだDV妻である。(そんなことは断じてありません)

うまく説明できず、真面目で優しいところです、と実にありきたりな返事をしておいた。

そして彼も、私の母から同じことを問われた。
やや長い間があった。
必ず聞かれるぞとだいぶ前から予告しておいたのだが、連日の激務に追われていた彼はなんと全くの無策で当日を迎えていた。
完全に参りきっていた。

『……顔?』

ようよう絞り出したそれは語尾が上がっていたのもあって、残念ながらいかにも頭が悪そうであった。
こりゃーどえらいコンビが爆誕しよった!
先だっての、私の心にしまったゲヘヘのくだりもあって心の中で爆笑した。
顔て!
中学生でももーちょっと体裁を整えるわ!

残念ながら私は10人並みのタヌキ顔の女で、中身!中身で勝負なので!などと周囲にいらんフォローをされる方の人間である。
おかげさまで一瞬、形容しがたいおもしろい空気になった。
絵に描いたようなダダ滑りだわ!などとうっかり余計なことを考えたらそれまでもが妙にツボに入ってしまい、自爆した私は密かにひたすら腹筋を震わせていた。

いやー実にイイぶっこみだったわ!神か!オカンのきょっとーんとした顔見た?最高やったで!
と、帰りに寄った喫茶店で彼の渾身のファイトを賞賛していたら、緊張していて何も思いつかなかったとのことであった。かわいそうに、彼はずたぼろに疲れ切っていた。
仕事中のツラ構えとか、美味しいものを食べているときの顔とか、そういうことを言いたかったようだ。

後日何かのきっかけで両親とその話になったところ、聞いた瞬間は正直殺意が沸いたけど、可哀想なくらい緊張してたもんね…あんまりいじめたらダメよ、と釘を刺された。
いじめてませんてば。

それにしても、友達に話したらむちゃくちゃウケた。母の厳格さを昔からからよく知っているメンバーなので、彼の命知らずぶりに仰天するのである。

知らないからできることってあるもんだなーと、私もぶっちゃけ思いました。

おいしいものを食べます。