禁じられた金次郎(落語風味)

注意事項

配信された音声、文章や画像などの無断転載、自作発言は絶対にやめてください

多少のアドリブや語尾を変える程度の変更は許容出来ますが、作品の世界観を大きく変えての上演などはご遠慮ください。
台本を使用してのボイスドラマの作成は事前に相談してください。
誹謗中傷などは絶対にしないでください。

原本は脚本家の今井雅子様による創作「膝枕」を二次利用させていただいております。
本作を三次使用される場合は
私へのご連絡、及び
原本作者、二次創作者(さんがつ亭しょこら)の名前を提示してください。
内容が特に公序良俗的に問題ない限り
ご連絡いただきさえすればお断りすることはありません

clubhouseでの上演をされる場合には次の手順をお守りください。

私の他に今井雅子様への上演ご連絡
clubhouse内膝枕リレーへの加入
(ルーム被りを防ぐため)
なるべくスケジュールからルームを開くこと
その際、ホストクラブに「膝枕リレー」を選択すること(クラブメンバーにも通知が届き、ルームへの訪問者が増えます。)
ルーム内で本作の(note等)直接のリンクを提示していただくこと。

その他のプラットフォームなどで上演する際にも作者名・二次創作者名、台本名、URLのリンク提示をよろしくお願いいたします。

禁じられた金次郎(落語風味)

えーしばらくの間お付き合い願います。
いつの時代でもあれはダメこれもダメといちいちいちいち文句を言ってくる方がおられるようでございます。
昨今特によく言われるのが「ながらなんとか」
歩きスマホ、ながら運転とかたしかに危ないものもありますからね、仕方ないと言や仕方ないんですかね
ながらなんとかの先駆けといえばやっぱり二宮金次郎でございます。
学校の校庭でよく見かけたでしょ?早くに両親が亡くなったもんで働きながら勉強して偉い人になったったぁてぇしたもんだ!って言われてたんですよハイ。
あら知らない?見たことない。歌って踊って演技もできる二宮かって?
嵐の二宮じゃないですよお客さん。
背負って歩いて本を読んでる二宮金次郎さんですよ、ええ。
今じゃね、「時代にそぐわない」「子どもが働く姿を勧めることはできない」
「戦時教育の名残」「歩いて本を読むのは危険」
とか言われて撤去されるか下手したら座って本を読んでる姿に代えられてるっていうじゃありませんか。
これじゃ、仕事サボってスマホいじってる私と変わりませんよ!

そんな撤去された金次郎像がどうなったかって言いますとね・・・

金次郎「すいやせん!。誰かいますか?」
ジョン金「おう、おめぇさんが新入り金次郎か?」
金次郎「あっ、あなたも金次郎」
ジョン金「何言ってやんだ?ここにいるのは、みんな金次郎だ。
バットアイアム、ジョン金次郎。ジョン金でいいや、
ここのエブリバデェからはそう呼ばれてるんだ、まぁよろしく頼まぁ」
金次郎「ジョン金さん・・・へぇジョン万て呼ばれたジョン万次郎みたいでカッコいいっすねぇ」
ジョン金「エグザクトリー。アメリカ帰りのスタイリッシュな金次郎よぉ
そういや新入り金次郎、若けぇのによく勉強しているじゃないか。
ウェルカムトゥ『金次郎パニッシュルーム』。金次郎始末部屋にようこそ」
金次郎「し、始末部屋⁉︎ やっぱり、僕たち、始末されちゃうんですか」
ジョン金「まあそうビクビクすんな。俺たちは何も悪いことをしちゃいねぇ。世の中ってもんは、すぐに手のひらを返しやがる。俺たちはそのとばっちりを食らったってわけだぁ」
金次郎「とばっちり、ですか」
ジョン金「おうそうよ。『歩きスマホが危険ってことは、あれも危険ですよね?』『あれを認めちまうと、歩きスマホも認ちまうことになりますよね』『あれのせいで事故が起きちまったら困りますよね』『いいんですかぁ』てなわけで、金次郎禁止令なんてものが出されて、全国津々浦々の金次郎が校庭から姿を消して、ここに集められた」
金次郎「はー。背中に薪を背負って、歩きながら本を読みふける姿が問題になっちまったって訳ですね」
ジョン金「おう新入り、今、薪って言ったな?」
金次郎「へい!言いましたけどなにか?」
ジョン金「ショーミーユアバック。背中にしょってるものを見せてみな。ほうほう、やはりお前ぇは薪派だね」
金次郎「マキハって何ですか」
ジョン金「金次郎が背負ってるのには「薪派と柴派」の二大派閥があってな。ざっくり分けると、太いのが薪で、細せぇのが柴。柴のほうが造りに手が込んでるから格が上だって、柴派の連中がブイブイ幅をきかせてやがんだ」
金次郎「じゃあおれは、弱小派閥なんですね」
ジョン金「ドンウォーリー心配すんねぇ。俺も薪派だ。マイノリティだが、エッジの効いた切れ者が揃っている。ちょうどいいや、紹介してやるからついて来な」
金次郎「へい!
いやぁしかしどんな人がいるんですかね不安と期待が入り混じった転校生って感じってやつですか?なんとも懐かしい感じがしますねぇ」
ジョン金「おう新入り、ここだここだカムヒアーだこっちきてあたり見てみな
あそこで高級グルメ本を読み耽っているのが、すきやばし金次郎。股旅物の時代小説を一人語りしてるのが、木枯らし金次郎。人情話で泣かせているのが浅田金次郎。南極探検の冒険譚を涙ながらに語っているのが、
タロウ金ジロウ。」
金次郎「はぁぁぁぁ、いろんな金次郎さんがいらっしゃるんですねぇ」
ジョン金「ああ、ここらだけでも多種多様・ダイバーシティのビッグウェーブが押し寄せてるってわけだ。」
金次郎「・・・ジョン金さんジョン金さん、なんか金次郎のみなさんが大勢集まって同じ方をみてるんですけど、あそこでかたまっている金次郎さんたちは、風変りというかなんというか・・・薪も芝も背負っちゃいねぇしみんな正座してる感じでさぁね
・・・ってジョ、ジョン金さん!何コソコソ金次郎と金次郎の隙間から覗いてんですかい?」
ジョン金「シーッ!シャットアップ!黙ってもっと近くにきて覗いてみろってんだ。」
金次郎「覗いてみろって・・・それじゃぁお邪魔させていただいて、へいへいごめんなすって・・・どれどれぇ・・・いや、なんともなまめかしい膝が並んでますねぇ・・・すそから見え隠れする膝がたまんねぇや」
ジョン金「そうだろそうだろ?あれは、膝枕金次郎って言ってな、
今井だか今田だか言う脚本家が大ヒットした『膝枕』にあやかってあっちやこっちやに造ったのはいいんだが、さすがに造りすぎて目立たなくなったところに『女性を性的見世物にしてる』とか騒ぎ立てる連中が押しかけて、あっという間にお払い箱ってわけだ」
金次郎「はぁ・・・しかしもったいないですねぇ・・・
ふくよかでやみつきの沈み込み間違いなしの・・・」
ジョン金「ああ、あれはぽっちゃり膝枕金次郎ってんだ」
金次郎「おふくろに耳かきされた遠い日の思い出が蘇って来そうな・・・」
ジョン金「おふくろさん膝枕金次郎な」
金次郎「頭預けたらいまにも折れそうな・・・」
ジョン金「こっちが守ってあげたい膝枕」
金次郎「いかにもすね毛がワイルドなぁ・・・」
ジョン金「親父のアグラ膝枕金次郎」
金次郎「最後のは頂けませんが・・・と、少し離れて、ホラ、なんか恥ずかしそうに膝をこすり合わせてる子がいるじゃねえですか!俺ぁあの子に膝枕されてえでさぁ!」
ジョン金「ああ、あれは『箱入り娘膝枕金次郎』、
誰も触れたことのないヴァージンスノー膝が自慢の一番人気膝枕だ。
だがな・・・あれはやめとけ・・・膝から離れられなくなるってもっぱら有名だぁ、ああいうのは遠巻きに眺めとくのが肝要ってもんだよ」
ジョン金「しかし金次郎って言いながらどこからどう見ても女の姿ってのは・・・」
ジョン金「姿かたちは関係ねぇ、要は金次郎or not 金次郎かってことだ」
金次郎「・・・えーっとすいやせん、どういうことか全然わかんねぇんですけど?」
ジョン金「時代は刻々と変化してる。戦艦空母に巡洋艦、城に温泉馬に刀
妄想に妄想を重ねたその先は、見た目と中の人は同じとは限らねぇって事よ」
・・・って今のはジェンダー事情に詳しいジェンダー金次郎、人呼んでジェン金の受け売りだ。ジェン金に言わせるとな、
見た目は男心は女、それでもてめぇの恋愛対象は女だってんだ。
世の中は男と女きれいに分かれるもんじゃねぇってこったな」
金次郎「なるほど」
ジョン金「ここからが問題だ。俺は、とんでもねぇことに気づいちまったんだ。ここにいる俺たち金次郎全員がノーボールだってことにな」
金次郎「ノーボール!?ほんとだ!ボールもなけりゃポールもねぇ!!」
ジョン金「だろう?金次郎の名前にキンはついているが俺たちゃタマがついてねぇ。生物学上は男じゃねぇってこった
俺もここのエブリバディもアイデンティティークライシス「自己喪失」
に陥った。だが、辞書に詳しい字引きん次郎 じびきんじろうが答えを出してくれた。最近の辞書は男の解釈が広がり、生殖機能が備わっていることが絶対条件ではなくなったらしい」
金次郎「何事も知識で解決できるんですね」
ジョン金「まあ狭っ苦しい所だが、ここにいると退屈はしねぇ。
知性と想像力インテリジェンスとイマジネェションさえあれば、どこまでも俺たちはフリーダムだ。今は辛抱のときだが、いずれまた、俺たちの時代がやって来る」
金次郎「ありがとうございます。ジョン金さん。ここに放り込まれたときは、自分の存在意義レゾンデートルを見失っていましたが、今は本を読んでるときのように目の前の霧がスカッと晴れやしたぁ」

などとあれやこれやと先輩金次郎さんから話を聞いておりましたら、そこに遠くの方からスタタタタタッ!と誰かが砂煙を上げながらこっちに向かって走ってくるじゃあありませんか・・・

松田「兄貴!(駆け寄り)ジョン金の兄貴、ヤバイっすよ」
ジョン金「どうした? 松田のジーパン金次郎?」
金次郎「この金次郎さん、金次郎なのにジーパン履いてるじゃねぇですか!」
ジョン金「こいつは『七曲金次郎』の下のもんでな、いろんな情報を集めてくれてる。同僚にマカロニテキサススコッチロッキーボギーラガー、まぁたくさんいるんだがみんな殉職して金次郎像にしてもらった走ることがでぇ好きな金次郎だ」
松田「そんなメンバー紹介なんかどうでもいいでさぁ!兄貴!
いつものように無線を傍聴してましたらね、これがなんと!金次郎の銅像を溶かして銅にするってまた物騒な計画が始まりそうなんすよ!」
ジョン金「なんだって! よし、金次郎、全員集合! 緊急対策会議だ!」

・・・というわけでジョン金の兄貴は始末部屋の金次郎全員に召集をかけて銅像を回収しようと部屋に迫ってきた政府の精鋭部隊とくんずほぐれつの大喧嘩!
ところか金次郎軍団銅像だから叩こうが何しようが痛くもなんともないパーフェクトボディ!
あっという間に精鋭部隊を部屋から追い出してまずはめでたしめでたし

・・・.とは簡単に行かないのが世の常でございまして、
この話にはまだまだ続きがございます・・・

ジョン金「いやー、エブリバディ、よく戦った。ナイスファイト。金次郎の団結力を見せつけたな。国が送り込んだ作業部隊を撃退してやったぞ」
金次郎「相手の戦法の裏をかくのはお手のものです。なんせ、本を読んでますから!」
ジョン金「ザッツライト。古今東西の戦術書に戦記物語、占い、催眠術、人を動かす魔法の言葉、ビジネス英会話、おもてなしの作法。膨大な知識を武器に、あの手この手で丸め込み、作業部隊まで味方につけた。あっぱれ。グッジョブ」
金次郎「さすが政府の精鋭部隊、薄暗かった金次郎始末部屋が、改修工事で御殿のような立派な建物に改装しましたね。耐震免振デザインも秀逸。誇らしげに掲げられた『金次郎ミュージアム』の看板」
ジョン金「いつの間にやら『金次郎ファンクラブ』まで結成されているじゃねぇか。すっかり世論まで味方につけちまったってぇ訳だ」
金次郎「なんせ本を読んでいますからね。やっと俺たち金次郎の時代が来ましたね、ジョン金先輩」
ジョン金「何寝ぼけたこと言ってんだ新入り。俺たち金次郎には、冷暖房のついた御殿なんてものは必要ねぇんだ。雨にも負けず、風にも負けず、担いで歩いて本を読む。それが俺たち金次郎の使命なんだよ、これじゃいつまでたっても宝の持ち腐れダァ」
金次郎「そうでした。金次郎の本分を忘れて、浮かれてしまった自分が情けねぇです」
ジョン金「新入り、あと一歩だ。ここまで来たら、お国もほうってはおけねぇ。やはり金次郎を禁じたのは間違いだった。汚名返上、名誉挽回。そうなってこそ、やっと俺たちの時代を取り戻せる! 元いた場所に呼び戻しててもらえるんだ!」
金次郎「そうですね! ジョン金次郎先輩!」

そうやって今後の二宮金次郎像校庭復帰計画を話し合おうとしたその時、またもや遠くの方からスタタタタタッ!とジーパン金次郎が砂煙を上げながらこっちに向かって走ってくる!

松田「(駆け寄り)ジョン金の兄貴、明日発売のブンシュンのゲラが手に入りやしたぜ!」
ジョン金「ついに出たなブンシュン砲! センテンス・スプリング・バズーカ! さすが仕事が早えぇな松田ジーパンの金次郎。見せてみろ。ほう、《このたびの金次郎騒動を受けて、政府と有識者会議は、金次郎の読書効果を確認。そこで緊急のお触れを出すことになった》とある」
石原「ジョン金の兄貴の言った通りっすね! 無罪放免、釈放っす!」
金次郎「俺たち金次郎がありのままの金次郎でいられる日が、また戻って来るんですね! 校庭で薪を背負って歩きながら本を読む姿を、皆さんのお手本にしてもらえるんですね!」
ジョン金「いや、ちょっとまて?・・・あれ? おかしいな」
松田「どうしたんすか兄貴?」
ジョン金「《金次郎禁止令を撤回する》とは、お触れに一切書かれちゃいねぇみてぇだ」
松田「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ?」
金次郎「じゃあ一体なんて書かれてるんですか?」
ジョン金「《国民は、本を歩きながら読むように》」
金次郎「へ?そりゃながら読書上等なだけってことですよね?!」
松田「そ、それじゃあ、俺たちが体を張って戦ったことは・・・」
金次郎「俺たちにとって何の得にもならなかったって事ですかい?」
ジョン金「ふむ・・・あ!コイツは政府の役人に一本取られた!」
松田「兄貴、そいつぁどういうことですかい?」
ジョン金「考えてみろ、俺たちは溶かされるのが嫌で立ち上がった。そうだな?」
金次郎「へい、命をかけてたたかいやした」
ジョン金「そして認められてアイデンティティを保つことができた、そうだな?」
金次郎「ええ、その通りです」
ジョン金「だが、俺たちの悲願である
『オペレーション・学校に二宮金次郎像をカムバック』は見事にスルーされた。つまり俺たちは一つ得をして一つ損をしたわけだ」
松田「じゃあ結局プラマイゼロじゃねぇですか?!」
ジョン金「まぁ落ち着けジーパンの、一方政府は俺たちにコテンパンにされて赤っ恥を晒すことになった。ところが俺たちの功績を認めることで勉学と勤労を称賛する流れを作ることができた。奴さんたちも何とか、プラマイゼロだ。どういうことかわかるかドーユーアンダスタンミスター新入り?」
金次郎「・・・ええっとあっちもこっちも得をしてあっちもこっちも損をして結果プラマイゼロってことは・・・あぁっ!」
ジョン金「はぁwさすが本を読んでるだけのことはあるねぇやっとわかったかい」
松田「オイオイオイオイ俺を置いていくなよ新入り!どういうことか説明してみろよ!」
ジョン金「なんだよジーパンの、まだわかってねぇのか。
いいか、おれたちも政府も結局誰一人得も損もしていない・・・
二宮金次郎だけに『損得(尊徳)なし』でございます」

-了-

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