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Chocolat tous les jours ー Vol. 7

皆さま、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。ベルギーでは3月中~下旬は最高気温が20度近くまで上がり、すっかり春!という感じでしたが、4月に入ると一転して気温が下がり、雪が積もった日もありました。4月11日の週からはまた気温が上がるようで、予報では最高気温が20度になる日も。

3月中旬、桜が綺麗に咲いています。
4月1日、とある場所から(拙宅ではありません)。前日の夜から降り始め、市街地でもだいぶ積もりました。
公園の植木に雪が積もり、ケーキのようです。ちょっと美味しそうに見えます。

1.仕事に関連すること

最近、この本を読みました(クリックで書籍の販売ページへ飛びます)。濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長による「ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機」です。

https://honto.jp/netstore/pd-book_31164968.html

その名のとおり、最近よく耳にするジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用に関する誤解を、日本の労働行政の歴史も含めて多面的に紐解くもので、とても勉強になりました。それぞれの特徴について理解が進んだことはもちろんですが、今までの自分の仕事をとおしてぼんやりと持っていた違和感がすーっと溶けたことがありました。

G7、G20といった政府間会合では現下の課題に対して参加国あるいは国際社会としてどのような課題を認識し、それらにどのように取り組んでいくかについて声明を発出しています。とりわけ労働雇用大臣会合ではその名のとおり、働くことについての諸課題を取りあげています。

連合の国際局にいた頃、この政府間会合について担当していました。自分が担当していたときには、G7はカナダ、フランス、G20はアルゼンチン、日本がそれぞれ議長国でしたので、これらの声明を読む機会は多々ありました。

加えて、労働組合もG7やG20加盟国ナショナルセンターで構成するL7、L20を開催、同じくサミットや労働雇用大臣会合に向けた声明を発出しています。そのため、これらの声明についても読んでいました。

こうした声明で取りあげられるテーマや課題は概ね連合の認識する課題と同じです。L7やL20の場合、内容は加盟組織の間で議論がなされた上で完成になるので、連合の主張と大きく異なることはありません。ただ、「言わんとすることはなんとなくわかるし、連合の認識や要求と異なるわけではないものの、どうもすとんと腹落ちしないな」という感覚はありました。

その最たるものは「教育訓練」に関するものです。

例えば2018年のアルゼンチンG20労働雇用大臣会合。そもそも教育大臣・労働雇用大臣の合同会合ということからわかるとおり、教育と労働・雇用のつながりが重視されているがために合同会合となっています。そこで発出された声明は、テクノロジーの発達による雇用への影響、スキルの獲得、などですが、やはり教育と雇用の密接な関係性とそれらを含めた政策の必要性について述べられています。

具体的には、パラグラフ8では、”Robust education and training systems promote access to better jobs, salaries and quality of life.(強靱な教育と訓練の仕組みはよりよい仕事や給与、質の高い生活へのアクセスを促す)”とあります。これは、もちろんその後に続く弱い立場にある人々を阻害することがないように、包摂的な社会を築くという目的もあるかと思います。

パラグラフ11では、「学校から仕事への移行」について述べられています。つまり、学校教育を終えて働き始めるにあたって、その障害になるものを取り除き、橋渡しをするために取り組む、というものです。とりわけ若年層にたいしては、職業訓練やメンター、キャリア相談、徒弟制度、インターン、最初の職業プログラム、キャリアパスについての機会を提供することの必要性が述べられています。

また、2021年のG20イタリア教育大臣・労働雇用大臣合同会合で発出された声明にも、やはり同様のことが述べられています。

自分は今でこそ国際組織で働き、日本以外の社会や雇用形態について触れる機会を持てているわけですが、それまでは日本の義務教育・高等教育を受けて、日本の会社に就職し、その後労働組合専従という経験をしています。労働組合専従はある種「転職」にも似たような経験をしています。さはさりながら、いずれも日本の組織・雇用主で働いています。大使館に勤務していた際は米国にいましたが、雇用主は外務省なのでそんなに大きな違いはありません。

そういうバックグラウンドからすると、なぜ大臣会合声明で教育訓練を取りあげるのかはふわっとした疑問でした。確かに社会人になるにあたって教育訓練は必要ではあるものの、大臣会合で取りあげるものなのかなというのが正直な印象でした。

自分の入社した会社では新卒一括採用、自分の同期や近い年次の先輩後輩も同様で、様々な学部卒でした。毎年研修はあったものの、基本的には日々の仕事を通じて「ビジネスパーソン」としてのスキルを磨いていくというのが前提となっています。会社からすれば社員の育成です。自分で外部の研修や単科のビジネススクールに通ってビジネススキルを身につけようとしたり、会社がアレンジする研修に参加したりもしましたが、「習ったことはわかるんだけど、それを仕事で使わないと意味がないよな(でも自然体だと使う機会がない。。。)」ということが多々ありました。

また、2~3年に1度の社内異動により、いろいろな部署で経験を積んで会社の事業や業界について幅広く知っていることが求められるというのも普通のことだと思っていました。正確には、日本はジェネラリスト型のビジネスパーソンを求めているが、海外ではそうとは限らず、その分野のプロフェッショナルになることが一般的というぐらいの認識はありました。

日本にいるときから、欧州での失業率の高さ、とりわけ若年層の失業率の高さはしばしば見聞きしていました。その時はなぜ若者の失業率が高いのだろうかと疑問に思ったものの、それ以上はあまり調べたりしなかったため、疑問で止まっていました。

しかし、冒頭の書籍を読んで目から鱗が落ちたかのような、前述のもやっとした感覚がすーっと溶けていく感覚を味わいました。詳しくは当該書籍を読んでいたただきたいのですが、(乱暴であることを承知の上で)掻い摘まんで述べると、ジョブ型雇用であるからということです。ジョブ型雇用では、企業が人を採用する際にはスキルや経験を募集し、それを持った人を採用します。つまり、基本的には自社では育成はしません。その会社や組織、そのポジションで働きたければ自らスキルを身につけたり経験を積んだりしていることが前提となります。そうすると、就職という点で必然的にスキルが乏しかったり経験が浅い若い人は不利になります。

また、すでに就職している人たちであっても、よりよい待遇の職や質の高い仕事を求めるにはこうしたスキルや経験が必要となってきます。経験は実際に積まないことには始まりませんが、スキルについては教育訓練でカバーすることができます。先日の大臣会合でも触れられていたとおり、社会全体の底上げのために労働者へ教育訓練の機会を提供していくことは意味と効果のあることなのです。

そのため、企業の外部、多くは政府や公的機関がこうした教育訓練の機会を提供し、労働者を支援することは個々の労働者にとっては処遇改善や質の高い仕事の獲得につながりますし、社会全体で見れば、失業率の低下や労働者個人の所得が向上した結果、社会の富の拡大につながるのではないかと思います。

だからこそ、公的機関による個々の労働者の支援が必要なので、政府間会合の中で取りあげ、取り組んでいく必要があるということなります。わかっている方からすれば当然ということかもしれませんが、ここ最近で1、2を争うほどすっきりした出来事でした。

では日本のようなメンバーシップ型雇用が失業率、とりわけ若年層の失業率低下に効果的で、諸外国はそれを見習うべきかと言われると一概にそうとは言えなさそうです。メンバーシップ型雇用の場合は企業が教育訓練を提供し、社員には「会社のプロ」を期待します。時間をかけて経験を積んでいくことがひつようです。従って途中から入ってくる人たちはその会社のプロではないので、ニーズとしては高くありません。そのため、すでに中にいる労働者からすると雇用は安定し、入ってこようとする労働者からすると入社のハードルは高くなり、雇用の流動性は落ちます。そうすると、どこで働くか、どのような雇用形態で働くかということが固定化します。その結果が、望まぬ非正規雇用労働者の敗者復活戦が極めて困難ということなのかと思います。

2.生活に関わること

前述の書籍は新書で出版されていますが、電子書籍でも読むことができます。ベルギーに赴任してからは、もっぱら電子書籍でいろいろな本を買って読んでおり(Kindleではありません、念のため)、テクノロジーの発展に大いに感謝するところです。ところが紙の書籍でしか出ていない本も少なくありません。

最近では、手数料と必要な送料を払うことで日本の通販で購入したものを海外に転送してくれるサービスがあります。このサービスに申し込むと、自分専用の「住所」が割り当てられ、その住所に送ることで再梱包のうえで海外の住所に送ってくれます。米国にいたときは、送料はそこまで高くはなく、日本でしか買えないものが手に入るのでとても重宝していました。

ベルギーにいても同じサービスが使えるので、ベルギーに来て早々に使ったことがあります。ところが、実際に使ってみると、最終的に驚くほど高額になり、かつ時間もかかったため以降はほとんど使っていません。

結論から申し上げると、「この値段差と時間のかかりようなら多少のバリエーションの違いには目をつぶってベルギーで買った方が賢明」ということです。

①値段の違い

このときは、ユニクロのアウターを購入しました。ベルギーにもユニクロはありますが、日本ほどバリエーションが多くありません(中の人に聞いたことがありますが、その理由はまた別途)。また、同じ商品でも価格が異なり、往々にして日本のものの方が安いです。日本では5,980円、ベルギーでは69ユーロです。これを日本円にすると約8,600円になります。送料をかけてでも日本で買って転送したもらった方がいいではないか、ということで早速使ってみました。

送料の概算を加えると日本で買っておくってもらった方が多少高くなるものの、ベルギーで買えないバリエーションであることを考えると許容範囲だと思っていました。しかし、実際蓋を開けてみるとベルギーに個人輸入するにあたっては送料に加えてEU域外からの輸入品にかかるVAT(付加価値税、21%)と関税手数料がかかることがわかりました(請求されて初めて判明)。これはパッケージに内容物の金額が表示されるため、自動的に付加されます。

今回の例でいえば、(細かい金額は忘れましたが)おおよそ4,000円強かかりました。送料・手数料は約3,500円でした。そのため、支払った金額としてはなんと約16,000円となったのです(!!!)。ベルギーで買ったときの倍!!!

②注文から届くまでの日数

ものを注文したのが2021年9月1日、発送されたのが翌2日でした。転送サービスに届き、ここから発送されたのは9月4日です。郵便局が引き受けて以降荷物の動きを日本郵便の追跡サイトで見たところ、日本を出てからベルギーの税関に届いたのが9月10日なので、おおよそ一週間でベルギーには届いています。これなら許容範囲かな、すぐに手元に届くなと心待ちにしていたものの、待てど暮らせど荷物は届きません。

ふとベルギー郵便のサイトで追跡情報を見てみたところ、どうやら関税や手数料などを払わないといけないようです。米国ではこのようなことはなかったので、どうやらEU、それもベルギー特有のことのようです。それに気づかなかったので、荷物が税関でずっと留め置かれていたようです。

高いなぁでももう引き返せないしなぁと思いながら付加価値税と手数料を支払い、再び荷物が動き出すのを待ってみます。説明によれば、支払いが確認されてから1~2営業日で配送手続きに入るようなのですが、税関から国際交換局に持ち込まれるまで実に20日もかかりました。きっと忘れられて倉庫の片隅に投げやられ、紛失扱いになるんだろうなぁと半ば諦めていましたが、日本のユニクロで発注してから手元に届くまで約1ヶ月、ようやくものを手にすることができました。

こんなに時間とお金がかかるのであれば、個人輸入はなかなかできないですね(ため息)。

ここに記載した内容や見解はあくまでも個人のものであり、執筆者が所属していた/所属する組織の見解を反映しているものではありません。また、本記事には業務上知り得た内容は一切ありません。

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