親から子に伝えたい、自分を大切にするということ
10月3日。Xのスペース内で、『命』という大きな重いテーマでお話をさせていただく機会をいただけました。
聴いてくださる方は、パパ・ママ世代が多そうだということで、専門知識がなくても理解ができる、親から子へ伝える性のことに的を絞り、お話をさせていただくことにしました。
もしも、誰かの参考となりましたら幸いに思い、ここに多少エピソードを増やして書き留めておくことにします。
まだこれから先の未来にパパ・ママになるかもしれないという方にも、ぜひ知っていただきたいことをまとめています。
内容は大きく3つの章に分けています。
気になる見出しからでも読んでみてください。
第1章 「自分を大切にするということ」とは、どんなことをいうのか
まず、定義から。この定義を念頭に置いて、この後の内容を読み進めてほしいと思います。
自分を大切にすることとは『自分を慈しむこと』『親が向けてくれるような愛情を自分自身に向けること』とします。
これを少し詳しく考えてみましょう。例えば…
まだまだ、この他にもあるかもしれません。
日々、その小さなからだを労り、心配をし、お世話をして過ごしているパパ・ママ。このお世話は言い換えれば無償の奉仕でもあります。
なぜ無償の奉仕を続けられるのか…愛情というものを形にしたとしたら、こういった行動のひとつひとつなのだと思うのです。
温かく、栄養のバランスが偏らないように作る食事。
よく眠るための寝具、眠る時間の確保。
清潔を保つための入浴や、お洗濯をしてある清潔な衣服。
乾燥から守るための保湿など、挙げればキリがありません。
これらを自分自身に向けることが、自分を大切にすることといえると思うのです。なので、これを定義としてお話を進めていきます。
「お世話」という面では、幼少期のお子さまに該当するものが多いかもしれません。
早い段階が理想ですが、思春期では手遅れということではありません。
もしも、あなたのお子さまが既に思春期であるなら、普段の様子に変わったことはないですか?最近何か困ったことはなさそうですか?
学校の勉強や部活、友達のことなどでも構いません。無理には入り込まず、タイミングをみて声を掛けてみてあげてください。
もう遅いと思わずにみてあげてください。みていてくれる人がいることが、お子さんの心の栄養になるはずです。
いざというときには、すぐに全力で支えてくれるという親の存在は子の自信に繋がります。
第2章 性教育のタイミングは子どもからの質問があったとき 幼少期~思春期前までに教えたいこと
ここからは、少し具体的な例などを挙げていこうと思います。
ご自分とお子さんに当てはめながら読み進めてみてください。
1.性についての会話と回答例
今、あなたのお子さんが
「ねぇ、どうしてパパにはおちんちんがついてるの?」
「どうして私にはついてないの?」
「どうして僕にはおちんちんがあるの?」
と聞いてきたとしましょう。
また、
「どうやって僕・私は生まれてきたの?」
「僕・私はどこから生まれてきたの?」
と聞いてきたとします。
なんて答えてあげますか?
濁して曖昧に流しますか?
「パパは男の子だから。」
とそのままを伝えますか?
「じゃぁ、男の子にはなんでおちんちんがあるの?」
と続きそうですね。
子供の好奇心や質問力はすごいです!
「どうして犬なの?」
と同じレベルで、大人が躊躇することも聞いてきます。
この、答えに詰まる質問が出てきたときには、ご家庭での性教育スタートの絶好のタイミングだと捉えてください。
皆さんの予想より、かなり早い時期だと思います。
模範的な回答であるか分かりませんが、例えば男性器は排尿の他、精子である赤ちゃんの素を届けるためのもの。
赤ちゃんの素は袋の中(陰嚢)で作られる。
女性のおなかの中にある赤ちゃんのたまごに、赤ちゃんの素を届けることで、赤ちゃんがやってくる、というのはいかがでしょうか。
2.学校からなのか、親からなのか
では、学校教育では性についてはどのタイミングで、どんなことを勉強をしていると思いますか?
ご自身が授業を受けた内容を振り返ってみてください。
男女で別々に分かれて、隠し事のような感覚を覚えた方は多いと思います。オープンに話してはいけないような感じがしませんでしたか?
また、子供の頃に家族で揃ってテレビを見ているときに、オトナ向けのシーンが出てきて気まずくなったことがある方はいらっしゃるかと思います。
チャンネルを変えられたり、無言になったり、何か別のことをしだしたり。
【大切な自分】【大切な自分のからだ】【唯一の自分】こんなことを子どもたちには知ってほしいのに、家庭でも学校でも隠したり濁したり曖昧にしたり。
これでは、自分を大切に扱うことを知るタイミングは作れません。
性は、家庭内でいちばんに近い存在である親から、お話をしていくことが重要だと考えます。
そして、小さなうちから身体のことや男女の違い、どんな風にどこから自分はやってきたのかなど、子どもの素直な疑問に答えていくことが、その先にある、自分を簡単に他人と共有しない=自分を守ることに繋がっていくのです。
大好きになった、大切なパートナーとの間に、星の数ほどの偶然が重なって、今のお子さんが生まれてきたのは奇跡的なことです。
これを隠さずに伝えてあげられるのは親であるあなたです。
3.目には見えない身体のこと
男性は、一度の射精で約1~4億もの精子を排出します。(個人により、かなり差があります)
女性は約200万個もの、卵子のもととなる細胞を抱えて生まれてきます。
その中から、排卵は通常は月にひとつ。それも左右どちらか一方から排出されます。
精子は左右を間違って泳いでいったら、卵子にはたどり着けません。
正常な受精ができたとして、その後に約1週間かけて細胞分裂を繰り返し成長をしながら、受精卵は子宮に向かいます。
そして、子宮の良い位置に着床して、その後の9ヶ月以上を過ごすことがたまたま運良くできたのが、今いらっしゃるお子さんなのです。
そんないくつもの偶然が重なって親子は出会っているわけです。
私はこのミクロの世界を自分の目で見て、本当の意味で、その奇跡を感じたと思いました。
そんなたくさんの奇跡が重なった大切な【かけがえのない僕・私】を教えてあげることが、親の務めでもあるはずです。
4.どの時期にどんなことをどのように伝えていくか
では、どんなことを教えていくのが良いのでしょう。
①男女の身体の違い、性の自認
性への目覚めや気付きがある思春期では遅いです。『性の自認』についても同様です。
言葉での意志疎通ができるようになり、質問をしだした3才頃ならスタートして大丈夫です。
『性の自認』というと、やはりLGBT理解増進法案ができたので、マイノリティとされるLGBTQ+の方のことが浮かぶかと思います。
この話題については、非常にたくさんの大きな問題を孕んでいます。
理解がまだまだ及ばない時期に、不用意に詳細に情報を与えていくことにより、子ども自身が混乱をしたり、間違った認識を持つことのないようにしたいもの。
もし、あなたのお子さんがマイノリティ側の性自認があったとしたらどうでしょうか。
認めてあげられますか?
もちろん、ショックを受けたり動揺はすることと思いますが、愛情とは関係のないもののはずだと、私は考えます。
男女の身体の違いや『性の自認』についても、前述のように「なぜ?」「どうして?」が生まれたときを逃さないことが重要です。
一瞬困ってしまうような質問のときには
「おぉー!いいこと気づいたね!」
「鋭い質問だねぇ!」
など、一旦認めながらこっそりひっそりと、ひと呼吸し考えましょう。
どうしてもすぐに答えてあげられないときには
「少し考えるね」
「調べてみるね」
「一緒に調べてみようか」
などでも良いかなと思います。
変に隠そうとせずに答えたり、話してあげるのがコツです。
そのためにパパ・ママは予め「ここまでこのように」話していこうと決めておいてもよいかと思います。
②月経について
例えば、ママは月経時にお風呂に一緒に入ることなどもお話のきっかけ作りになります。
ママはシャワーだけで構いません。
子宮から膣を伝い、血液が流れること。
それ自体は痛くないけれど、子宮の収縮が起きておなかや腰の痛みとなること。
子宮の中の赤ちゃんのベッドとなる部分がはがれたものが血なんだよ、大丈夫なんだよ、と。
毎月赤ちゃんのベッドは交換のために血として流れて出るんだよ、と教えてあげてください。
将来、自分も親になることへの何となくの感覚を男女ともに養えます。
③男の子には
男の子にはペニスの包皮を剥くことをぜひ教えてあげてください。
清潔に保つためにも、その後の真性包茎リスクを下げるためにも。
痛いほど激しくなくて大丈夫です。お風呂のタイミングで、痛くない程度に皮を剥いて毎日きれいにしようね、と伝えてあげてください。
日本人の場合、相当数が仮性包茎だといわれています。大きさについても人それぞれです。
ちなみにこれらは重要な問題ではありません。
人としての器、大きさ深さの方がもっともっと重要ですよね。
男性が将来コンプレックスとなりうる部分を先に解消しておいてあげたいものです。
豆知識として、性交時5cmあれば性行為、妊娠させることが可能といわれます。
思春期に間違った知識を取り入れて、コンプレックスとなってしまわないように伝えてあげてください。
何度も触れていますが、これらのタイミングは思春期に話すのでは遅いです。
子どもが異性の親を異性として認め、距離を取ってしまうためです。
遅くても10才頃までには、既に話せる関係が築かれているのが理想です。
親が隠すことには触れてはいけない、いけないことだと、子どもは受けとります。そんな風に感じさせないようにしてほしいのです。
そして子ども側は何でも包み隠さずに、親に全てをオープンにしなくてはならないわけではありません。
パパ・ママは、そこには踏み込んでいかないでいてあげてください。
そういった積み重ねが、親子の信頼関係を構築していくのです。
④プライベートゾーンを教える
今、季節的には秋が深まってきましたが、水着を着る季節は一年のなかでチャンスかもしれません。
水着を着て隠れている場所。
これはあなたの大切なあなただけの場所。
誰にでもオープンに見せてはいけない、触らせてはいけないプライベートゾーンと教えてあげるのです。
もちろん見せてくる人、触らせようとしてくる人もダメです。
これは他者や外の世界と、自分との境界線を意識させることに繋がります。
カジュアルに性的関係を結ぶ、自分を軽く物のように扱わない人になってもらうために。
⑤誕生日には
また、誕生日には生まれたときの話をしてあげてもいいでしょう。
こんな風に妊娠が分かった
生まれる前はこんな風だった
パパ・ママはこんな気持ちになった
こんなことを心配した
こんな想いを込めたんだ、という名前の由来などもいいと思います。
そんな、小さいとも思えるひとつひとつの事柄が積み重なり、お子さんはご両親からの愛情を受け取り、自分を大切にすることを覚えていきます。
第3章 性逸脱行為、性犯罪、性にまつわる危険から子どもを守ること
ここからは自分で自分の身を守ることについてお話をします。
性にまつわる危険に我が子が巻き込まれたら…考えただけでゾッとしますね。
悲しいことだけれど、今日もどこかで何かしらの事件が起きていて、被害に遭った子はもしかしたら親に話せないかもしれません。
ここから少し、カウンセラーとしての話せる範囲での得た知識や経験談をします。
1.性的暴行
体外受精という治療があります。
女性はホルモン剤を使用して排卵を操作し、男性はマスターベーションで精液を回収します。
回収された精子と卵子は適切な処理を行い、身体の外で受精・授精を試みる方法です。
(※受精と授精の違いについてはここでは割愛します)
Aさんは繰り返し繰り返しその治療を試みていました。
ホルモン剤を飲んで注射をして、月に何度も何度も通院をするのです。
保険適用前でしたので、月経から月経前までの一周期の治療費は30万~50万円ほどかかります。
なぜ、Aさんが体外受精だったのかというと、ご主人さんと性行為ができませんでした。
性的暴行を受けた経験から、恐怖が蘇ってしまうためです。
それでも我が子が欲しい気持ちで頑張っていらっしゃいました。
一生を狂わせることになった、恐ろしい経験だったと思います。
2.性行為感染症
また、性行為感染症により、不妊となられる方も多いです。
①クラミジア感染症
一番はクラミジア感染症です。
無症状のまま知らずに感染していることも多く、気づいたときには精子の通る卵管が癒着して塞がってしまっている…ということがあります。
これは奔放な性行為を行わない、避妊具を正しく使う、検査や治療をしっかり行うことで防げるものです。
オーラルセックスで咽頭からも感染をします。
治療はお互いにうつし合う、ピンポン感染を防ぐために、パートナーと同時に行う必要があります。
②AIDS
2023年3月のHIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告数は速報値で870件。(6年連続減少)
エイズウイルスであるHIVの感染者、エイズキャリアの方は日本では年間発生者数は減ってはいいます。ただ、HIV抗体検査件数は、新型コロナウイルス感染症流行の検査控えで減少したと考えられます。
現在、検査件数は増加したものの、コロナ禍以前の水準にはまだ戻ってはいないので、一概に減ったとはいえません。
世界では約4000万人ほどの感染者がいます。発症を遅らせることはできるようになってきましたが、完治はできません。
発症をしていないキャリアの方から感染をすることが多いものですが、感染力は非常に弱いウイルスではあります。
避妊具を使わない、膣を介した性行為では感染率は1%前後。100人に1人程度の低い感染率です。
1回あたりの感染率は0.1%
オーラルセックスやアナルセックス、母子感染、医療従事者の誤針事故などでは感染率が少し上がります。
また、クラミジア感染や梅毒の感染者では感染率が上がります。
③梅毒
注視したい性感染症として梅毒があります。
昔の古い病気と思われがちですが、若年層の爆発的な感染者増加がみられています。
これは放っておくと、命にも関わる病気です。
病層は4段階に分かれていて、初期には陰部などにしこりができます。その後には一旦、治まり消えていきます。
第二期にはバラ疹といわれる赤い発疹が全身に出たりします。
やはり、その後には治まりますが、全身にあらゆる症状が出たり治まったりを繰り返しながら病期が進みます。
進む前に早期に治療を行うことが大切になります。エイズとともに梅毒は保健所で検査が可能です。
④エムポックス
聞き馴染みのない名前かと思います。
エムポックスは、1970年に現在のコンゴ民主共和国で人への初めての感染が確認された感染症です。
現在、従来のエムポックス流行国であるアフリカ大陸への渡航歴のないエムポックス患者が世界各地で報告されるようになっており、日本国内でも発生が報告されています。
世界的には患者数が減っていますが、日本では患者の報告が増加しています。
性的接触はもちろん、感染した人の皮膚の病変部への接触による感染が中心とされています。
国際的に男性同士の性的接触による感染が多いことが報告されています。
感染した場合は、症状に合わせた対症療法を行います。国内で利用可能な承認された治療薬はまだありません。
感染症に関しては、これ以外にも様々あります。このあたりは学校でもお話があるかと思いますし、一般的知識以上を知らなくてもよいかと思います。
お子さんのタイプやご様子により、思春期頃には親から伝えてあげてもよいかもしれません。
これらの感染症は治療のできるものや、予防接種で防げるものもあります。また郵送で検査が行えるものもあります。
予防接種については各ご家庭や個人のお考えもあると思います。受けたい場合には、推奨される時期もありますのでよく調べ、予め検討をしておくとよいです。
3.性犯罪と家庭での対策
子どもを対象とした性犯罪については、卑劣なやり方で子どもを騙し脅し、いわゆるわいせつな行為に及ぶものです。
加害者は小児性愛として性的嗜好があるため(性嗜好障害)、本人の自覚はあるものの、矯正は非常に困難なものです。
加害者は間違っている、悪いことと思っていますが、行動を起こすときには罪悪感は全く消えた状態なのだそうです。
被害にあった時期としては
20歳代 49.6%
中学卒業から19歳まで 23.1%
小学生以下 11.1%
中学生 2.6%
異性から無理やりに性交されたことがあった女性のうち、被害についてをどこにも誰にも相談しいなかった人は67.5%と出ています。
被害者はもちろん、加害者にもならないための知識を小さなうちから怖がらせないように伝えていってほしいなと思います。
ちなみに性被害は女の子だけでなく、男の子もその対象です。
ですが、心配だからといって、門限や送迎などを過度に行い、子どもの自由を奪うとなると、個人的には行きすぎの感も否めません。
子どもには発達段階があり、他者と関わることで育つ、我慢や協力、共有など情緒の成長が必要であるからです。
このあたりはパパ・ママで言うことが違う!とならないように、よく話し合っておきましょう。
さらに子どもの意見や気持ち、連絡手段を作ることなどの意見を擦り合わせ、その都度お互いが納得できるように、年齢に応じて話し合えると理想的です。
子どもが心配だからといって、必要以上にかごの中に閉じ込めてしまうと、心を閉ざしてしまいます。
嘘をついたり、帰ってこなくなったりすることもあるかもしれません。
それが犯罪に結び付いてしまったら本末転倒です。
もしも【自分を大切にすること】を教えられずに、知らずに育ったとしたら、この例に挙げたことに遭遇する確率は、確実に上がると思って間違いありません。
思春期に子どもが親と距離を取ったとしても、それ以前に愛情を受けて、感じて育っていたら、お子さんはいざというときには、必ずパパ・ママに話してくれるはずです。
後ろで支えてくれる存在だと思っていてくれます。
「自分を大切にできない行動に出てしまったとき」を考えるよりも「自分を大切にできない行動に出てしまわせない」ように、親子の関係を構築していけることを願っています。
◎おわりに
『命』という、大きすぎるほどのテーマで、親から子に伝えられる性のことをまとめてみました。
命を繋ぐとは、大人から子への愛情を繋ぐことともいえるのではないでしょうか。
さまざまな要因で、ご両親が一緒には過ごせないご家庭もあると思いますし、親代わりとなる方のもとで育っているお子さんもいらっしゃると思います。
形や関係はどうあれ、愛情を注いでかけがえのない自分を大切にすることを子どもに教える。
これが次の世代への、命を繋ぐことになっていくものなのではないでしょうか。
今、命を繋ぐことに関われているパパ・ママたちには、自信を持って愛情を持ってお子さんに接してあげてほしいなと思います。
これが、子どもと関わりを持つすべての大人世代の少しのお役に立てたら幸いです。
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