年始に見た映画
映画「Perfect Days」ヴィム ヴェンダース
都会の片隅でひっそりと暮らす初老の男性。清掃の仕事を終え、明るい銭湯に浸かり、行きつけの居酒屋で晩酌。カセットテープで懐かしい音楽を聞き、物の少ないシンプルに片付けられた古いアパートの部屋で古本屋で買った文庫本を読んで静かに眠る。植物の成長を見守る。木漏れ日や街の音を感じながら生きている。スマホは出てこない。
たまに心がざわつく事はあるし仕事に追われる日もあるが、人によっては究極の憧れの暮らしである。
こんな静かな暮らしを憧れる一方で、抱えきれない情報や映像やモノやノイズで自分を覆って追いかけないと自分は生きられないことを自覚する。
彼の部屋はモノがなく、本とカセットテープ。そして育てている植物。さらに憧れが増す。過去も捨ててしまったんだろうか。執着なく、過去も消し去って生き方に憧れる。
しかし、あるシーンになったところで物置にたくさんのダンボールがあったりして、過去との断絶はそんな簡単じゃないことがわかってくるし、過去と切れない関係性や時折は感情も揺れ動いてしまう。「都会の仙人」だとおもったけど、人間の感情は一生揺れうごくのだろう。
彼の家と対極にある都会の最先端トイレを掃除しているのだが、シニア労働と熱心さを美化してないかという点はちょっと気になった。彼はくっそ丁寧に磨き上げる。こんな掃除を公衆トイレでやっているだろうか? 自前のクルマには工夫された掃除道具が乗っている。仕事熱心が過ぎる。搾取という言葉が少し気になるのだが。気にしすぎか。
そんな些細なことは気になったが、音楽がいい。私が気に入ったのはニーナ・シモンの曲が流れるところ。朝日の中で空いている首都高をぶっ放してみたい。都会の片隅で生きているのも悪くないと感じられるような。
家に帰ってからSpotifyでこの映画のサントラ聴いている。雑事と仕事の雑事にまみれた生活だけど、自分の鉢植えに水をやる瞬間をたまには意識しようかなって。あのビルの隙間から光が差す時間帯、あの公園の木漏れ日。
にしても、あんなママがいる小料理屋あったら、連日開店前から爺さんが並んじゃうね。いや、おばさんだって並んでしまうよ
2024年1月
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