夏に遺す(私とあなたについて)

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夏を嗅ぐたびに想い出す
視界いっぱいに駆け抜けたあの軌跡
それは人生で一番眩しかった流星
あなたとみた唯一の流星


DPP_0006 - コピー


私は星を掴まえられず
幾度も朝に飲み込まれる

あなたは星に乗り
もう二度と太陽をみることなく
塵と消えた


新刊を買うたびに貸していたあのマンガ、
来年ついに完結だって。


故郷に帰って見る空は 広くて 星も多すぎる
独りアパートから見る空は 狭くて 星も見えない

「燃え尽きた命は星になり、
私たちを見守ってくれている。」

ならば
大切なひとがどの星になったのか
はっきりわかるようにしてほしかった


オリオン座の一角にあるベテルギウスは
いつ燃え尽きてもおかしくないんだって。
でも、たとえ星が燃え尽きたとしても
光だけ、光だけは、
何万年も先までこの地上に届くんだよ。


鏡を見ると
まるであなたがいるみたいだ

この体に脈々と流れる
あなたの血を確かめて
それがきっとあなたの生きた証になる
そう思うことにしよう​


今日は満月だとか、オリオン座がよく見えるよとか。
度々言って聞かせていたら、そういうニュースを
あなたのほうから教えてくれるようになったよね。


今年も流星群が訪れた
でもね 夜すらあまりに明るくて
この場所からじゃ見えないの

だから
脳裏に焼きついている
あの夏 蚊に食われながら見上げた
ひときわ煌めく流れ星
群青のスクリーンに映写して

そうすれば ほら
あなたの背中に手が届くの


ねぇ憶えてる?一緒に見たあの流れ星。
あのとき、何かお願い事した?
私はね、見惚れちゃって、願うことなんて忘れていたよ。


帰る場所はあなたの隣
この身が燃え尽きるまで
ゆっくりしていてね

そのときが来たら 二人で 思い切って
ペルセウス座流星群に乗っちゃおう

そのときはきっと 私もあなたも
あらゆる軛から放たれて
自由にちがいないんだから


画像3


夏を嗅ぐたびに想い出す
視界いっぱいに駆け抜けたあの軌跡
それは人生で一番眩しかった流星
あなたとみた唯一の流星

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良いんですか?ではありがたく頂戴いたします。