ここが地獄だとしたらあまりに美しいなと思う
空と雲のすきまを大きな龍が飛んでいく。
その直後、突然降りだした強い雨の中、傘も放り出してステップを踏む。アマガエルたちも一緒に飛び跳ねる。軽く杖のように傘を振れば、雨粒が小さな花びらに変わる。
紫陽花の色彩は、淡い春と鮮烈な夏をつなぐ虹の橋。雨上がりの土の匂い。色濃くなった緑の輝き。この地獄は今日も私たちに無関心のまま、「今」という祝福を歌う。
母にとってこの世界は、生きている意味も理由も見いだせないような地獄だったのだろうか。そうだとすればなぜ、この私を産んだの