この命は神も意図しない挙動をしている
通りすがりの死神が足を止め、満開の桜に見入っていた。おもむろにスマホを取り出し、静かに写真を撮る。満足げな表情を浮かべた死神は、再び歩き出した。遠ざかっていく背中に花びらが舞い散る。大層な儀式も明確な終了宣言もなく、こうして春は終わる。
案外あっけないものだ。
たぶん、自分の命の終わりもそんなものだろう。
民家の庭に生を受けた柑橘の木から大きな実がひとつ落ちて、アスファルトの上で割れていた。ゆずだろうか。
そのすぐそばで、まだ新しくどこかこなれないスーツを着た死神が悲