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あの類のニュースの最後に

 最近は自殺者が増加しているとか、有名人の誰誰が自宅で死んでいるのが見つかったとかのニュースの最後には、大抵自殺防止ダイヤルの電話番号が表示される。おそらくはそういう決まりになっているのだろう。「ウェルテル効果」といって、自殺の報道は後追いを増やす危険性があるため、妥当な対応だとは思う。

 ただ、あの類の相談窓口、自分が主にTwitterで見る限りではよい評価を目にすることは少ない。冷たくあしらわれたように感じたとか、的外れなことを言われたとか。もちろん観測範囲の問題もあるし、そもそも自分はそういう窓口に電話をかけたこともないので、実際のところどうなのかは知らない。おそらく電話をかけたことで気持ちが楽になったという人もそれなりにいるのだろう。それに、期待外れだったという評価を書いている人もその時点まではとりあえず生き残っているわけで、対応がどうであれワンクッション程度にはなったのかもしれない。

 とはいえああいった相談窓口というのは、死にたいという気持ちがあるがまだ葛藤がある人には有効かもしれないが、もう結論が出てしまった人にとってはあまり関係がないのではという気もする。メディアなどで相談窓口として公共に紹介されるくらいだから、「死にたいです」に「死んでもいいですよ」などと答えることはできないわけで、相談するということ自体に意味はあるだろうが、向こうの答えは決まっている。

 相談する前から相手の答えがある程度想定できるケースというのがあるわけで、その答えを得たいから相談する場合もあれば、答えがわかるから相談を避ける場合もある。自殺防止ダイヤルで言えば、まだ迷っていたり誰かに話を聞いてほしかったりする場合は助けになるだろうが、もう決心がついてしまった人はかけようと思わないだろう。

 誰かが自殺した後で「悩んでいたようには見えなかった」という話が出ることがあるが、周囲に気を遣わせないようにというのの他に、もう死ぬことを決めていて本当に「悩んでいなかった」という場合もあるのかなと思う。最近よく報じられる芸能人の場合、演技のプロであり、何をすればどう見られるのかというのがよくわかっているので、その気になれば周囲に気づかれず決行することもできるのではと思ってしまう。

 それにしても、自殺防止を目的とした電話窓口、どういう人が応対しているのだろう。他人の辛い、死にたいという気持ちをひたすら聞かされるわけで、結構メンタルが強くないと難しい気がする。死にたい気持ちが理解できてしまう人は、気持ちに寄り添うことはできても死なれないようにしないといけないという方針との間で板挟みになってしまうのではないかと思う。一方で自殺なんてとんでもない、命を大切にすべきと全くの善意で心から思っている人が相談を受ける場合、死にたいと思っている側とのコミュニケーションにずれが生じてしまわないか心配である。

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