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ザ・パーフェクト

「音を取る」

「音をあてる」

これを照れずに言えれば立派なシンガーです。

お笑い芸人の私は残念ながら言えません。

がっちり照れます。

代わりにシンガーが照れて言えない「明転飛び出し、挨拶終わりで、途中で音きっかけあるので、別でリハお願いします」を言うことが出来ます。

どうです?

業界人っぽいでしょう。

ちなみにグッチ裕三さんはどちらも言えます。

流石ビジーフォーです。

さて先日、私はある天才少年に偶然出会いました。

天才的な子供と言っても様々なジャンルの天才があると思います。

幼くして小説を書いた天才少年。

ゴルフの天才少女。

将棋の天才少年などなど。

以前にテレビで島田紳助さんが、そういう天才的な子供らのこと「何回も生まれ変わって人間やってるから幼くても造作もなくできる」旨の事を話しておりました。

その方たちはきっと人間を何回もやられているのでしょう。

私が出会った4歳くらいの男の子もきっとそうなのでしょう。

その男の子は、両親に駄々をこねて怒られた時、完璧にこの音をとったのです。

その音とはっ!

吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」の歌前の「はぁ~」の音。

完璧に音をとっていました。

少年の「はぁ~」を聞いた私が自然に「テレビもねー」と歌ってしまうかのごとく完璧な「はぁ~」。

きっとあの少年は吉幾三を何度も経験したのでしょう。

私もいつか完璧な吉幾三の「はぁ~」を出してみたい。

ジャンヌダルクのように私の「はぁ~」で全人類が「テレビもねー」と続く日。

そんな日が来るように毎日「はぁ~」を練習する私。

でも吉幾三の道は険しい。

たぶん段とか真打とかあるんだろうな。

名人になれば「吉幾三」の称号がもらえて、最初は「吉予定立てよう」で、次が「吉準備しよう」、でなんやかんやあって最後に「吉幾三」。

師匠の八代目吉幾三に弟子入りして、兄弟子の吉準備しようから色々教わるんだろうな。

修業が厳しくて弱音を吐いて師匠の家から逃げ出して、故郷に帰る金もないから駅で一人ベンチに座って泣くんだろうな。

なんだろう、想像してたら悲しくなってきた。

「はぁ~」

これは吉幾三のではない、私の溜息だ。



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