「ホウセンカ」 下
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第2章:心を開く瞬間
それからしばらくして、瑠璃は翔のことを考える時間が増えていた。店に来る度に無口ながらも丁寧に対応してくれる翔の姿に、次第に心が惹かれていた。それでも、心の中では触れないようにと自分を戒める。
そんなある日、突然の嵐がやってきた。強風で、店の前に置かれていたホウセンカの鉢が倒れ、土がこぼれてしまった。瑠璃は慌てて外に出て、鉢を起こそうとしたが、風雨の中ではうまくいかない。その時、ふと後ろから翔が声をかけてきた。
「手伝いますよ。」
彼の優しい声に驚いた瑠璃は、反射的に一歩下がった。けれど、そのままではいられなかった。翔が倒れた鉢を抱え直し、彼女と一緒に再び土を戻し始めた。
「ホウセンカ、気に入ってるんですか?」翔が問いかけた。
「ええ……、でも、触れられない気がして。」
その言葉に翔は少しだけ微笑んだ。「触れないようにしても、守れるとは限らないですよね。時には心を開くことも大事かもしれません。」
その一言で、瑠璃の心の壁が少しだけ崩れた。翔と一緒にホウセンカの鉢を立て直し終わった後、彼女は初めて彼の目をしっかりと見た。今まで避けていた感情が、自然と心の中に広がっていくのを感じた。
「ありがとう、助かったわ。」
それは、これまでずっと閉ざしていた心の扉を、初めて少しだけ開いた瞬間だった。そして、そのホウセンカは、これからも静かに彼女の心の変化を見守る花となるだろう。
おわり
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よろつよ
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