見出し画像

EC取引の安定性と妥当性を高めるには

ECモールの検索表示順位における原則から考察することで、現在のECを中心とした商取引で安定性と妥当性をどう高めるかを論考する。単に結論だけを言ってしまうと、1.ソフトウェアやWebサービス(ここでは主に検索順)をどれほどブラッシュアップしても、ある種の問題は解決しない。2.影響力の及ぶ範囲からして、明らかに守備範囲外の問題を特定して、その問題は一度論考から切り離す、ということです。

検索順位の大原則は鄧小平のあの言葉(中国の故事)?

ある種の人々には釈迦に説法ですが…こういう話から始まるときは、申し訳ありませんが大体話が長くなります。グランドデザインと細部を行ったり来たりしたり、ほぼ証明に近いことをするために、論理の抜け道をふさごうとするときも。

そもそも論としてECにおけるモール全体検索は、機能としては商品ページに特化した検索エンジン(検索サービス)です。そもそも検索エンジンの表示順てどんなスタンスだっけというと、原理原則は鄧小平のあの言葉(中国の故事)です。
検索の順位の大原則は鄧小平?ってなんじゃそりゃ?って『黒い猫でも白い猫でもネズミを捕る猫が良い猫だ』というアレですよ。さっと必要な知識を得られるという用が足りるなら、ユーザ満足度が高まるページですという、大方針があります。その大方針から、細かいページのランク(順位)を構成する細目が設定されています。それで、2000年中期から2010年中盤以降まで、いかに検索順位決定アルゴリズムを騙くらかすかという、かなり不毛な戦いを行っていたわけです。『ユーザさんがサクッと結論にたどり着いて便利と実感できるページが良いページ』という大原則は一切不変なのですが、その大原則を構成している細則は、開発時から公式に発表があるだけでも、何回も変更を経て現在があります。

通販モールにおける『良い猫』とは

じゃぁECにおける『良い猫』ってなんですか、被リンクじゃないですよね、ってもちろん売り上げが上がって(注文がよく入って)、モール運営者に売り上げからの運営マージンが入るページに決まっているじゃないですか。Google検索のビジネスモデルも、検索に付随する広告で稼ぐモデルなので、「広告をクリックされるページが良いページ」というような同じことを言えそうですが、少なくとも登場初期には、「金が自分に入るのがいいページ」という『匂い』は一切ありませんでした。同様に通販モールでもその大原則は不変なんですけど、その大原則を構成する細則は細かく変遷しているわけです。例えば、購入可能な状態になっていない商品ページは、基本的には検索結果から除外するとかですね。だいぶ前は、通販モールにはそんな機能(検索条件制限)はありませんでした。

一般検索エンジンでは圧倒的な市場独占を各所から警戒されたのに

一般検索エンジンではGooleが圧倒的な支持を経て、その分だけ寡占(というか一時のシェアは限りなく独占だと思いますが)が進み、各所からその影響力を警戒されることとなりました。例えば某欧州連合とか。2000年代半ばの、みんなが「新しい社会が到来だ~」って舞い上がっている段階で課徴金を課すか考えてみた、ってどんだけ将来見通しているんですか。今、毎年のように課徴金を課す必要があるかどうかはわかりませんが。一方で、巨大通販モールが『運営のお行儀が悪い』と言われることはありますが、あそこまで危機感をもって反応されることはありません。理由は、そこまで寡占が進んでいなくて、代替の選択肢(他モール、根性が入った会社さんは自社サイト)である程度戦うことができることがあります。Googleも一時期はページランクの細則がブラックボックスに近かったので、局面の打開がしにくいという部分も警戒される一因であったと思います。ブラックボックスの方が、アルゴリズムの裏をかきにくいとも言えなくもないですが。

都合の悪いショップは下がれ!と言われるのですが

先ほどの代替の選択肢の話は通販モール間と市場全体の話です。じゃぁ単体の通販モール内と各小売店の関係は…ということになるのですが、通販モール側から見た場合、ただし通販モール側、と言っても基本的にはその後ろにお客さん(お買い物をする消費者)がいることが多いですが、やっぱり不都合なショップの商品ページは、検索順位を下げて対抗する、ということになっています。そういう通販モールが設定する、ページランクアルゴリズムに対抗する代替の選択肢はあるといえばありますし、ないといえばないです。というのは基本的には売れるページ=モールの都合の良いページは検索表示順を前にもってきていますが、ユーザさんが検索順位を変えることができるからです。

09回01

ほら、皆さんが使っている『値段が安い順に検索順を変更する』ってアレですよ。結構なお客さんがある『値段が安い順に検索順を変更する』とした後に、その中から、何か所かショップを覗いて(と言っても商品ページですが)まぁ、この辺にしておきますか、という。当然のことながら商売は慈善事業でなく、利潤の発生を前提としていますので、値下げの限界=対応策の限界ということになります。ですので安値にしておけば、検索順は有無を言わさずあがります。もし、この検索順ルールが徹底されていない場合はこんなことがおきます。

お客さん「大変です。検索表示が壊れています。『A』と『B』って検索窓に入力して、安い順に変更するってボタン押しているのに安い順に整列しないんです」
モールのカスタマーサービス「(カチャカチャとパソコンを操作して)あぁ、あそことあそこのお店はモールに広告を出してくれないので、ちょっとペナルティで値段にかかわらず検索順位を下げていて。これが正常な検索結果なんです」
お客さん「えっ?(モールへの広告の出稿具合が絶対数値の上下をひっくり返しているの?)」

ですので、金額順では、通販モールの都合が極めて発生しにくくなっています。同じ金額のショップ(商品ページ)間では、金額の次の条件である様々な細則が適用されて、最終的なページ検索順が決定しているわけですが。ぶっちゃけ、あなたが小売店店員だったとして、店長さんから『あそこのショップにだけは負けたくない。あそこより売り上げをあげたいのだが、その前段階としてあそこより検索順を前にしたい』と言われたら、対抗されない限りという前提つきですが、1%引いたら後は寝ててもミッションクリアです。

『金額順というアルゴリズム破り技』は誰にとってもいいことなのか

こういう話を聞いたとき、一般論で言いますと…そういうアルゴリズム破り技があって、まぁよかったですよね、という結論になります。お客さんとしては、同じものが安く手に入ったらいいですよね。レビューがない新しいショップでも、いきなり『最前線』で戦うことも可能になりますよね。不利なことを理解したうえで、新店を検索順で優遇してあげる通販モールもあります。

・・・ということになりますが、これは伝聞・報道レベルなのですが、いわゆる詐欺ショップにとっても、早くアクセスしてもらい、早く結果を出す(苦笑)するために、滅茶苦茶な値段設定をして、力ずくで検索順で前に出ようとするのにとっても好都合です。これだとショップしか得しない(詐欺=犯罪)ですね。少なくともこういう行為に対しては検索順引き下げというペナルティは限りなく無力で、1個1個アカン行為を立証して、商品ページ表示禁止、出店(一時)停止の判断をするしかなくなります。『良いレビュー順』というのもありますけど、それには誰かが試して、というか購入して、良いレビューを書かないといけないわけで、金額順よりハードルが高くなります。そうするとハードルの高さは信用の高さになるわけで、その裏をかいて偽レビューも横行する(伝聞・報道レベル)わけです。
便利でみなさんが大量に使っているので絶対にありえないですが、仮に金額順、レビュー順というユーザさんが検索順を操作する機能を切ると、Googleが過去直面した、検索結果の単一化による反発という別の厄介な問題が戻ってきます。もちろん一般検索エンジン程独占状態でないので、あそこまでの反発は起きないはず、というのは前述のとおりです。

1件づつ『退店』に追い込むのか、それとも

例えば、1年間で詐欺行為店は1店しかありません、対策チームはぶっちゃけ半年間毎日監視作業しかしていません、ということなら、詐欺ショップを個別に摘発して退店処理の方が、コスト面から安くすむという判断もアリかもしれません(この場合被害者が少数出ることが前提です)。ただ、報道として挙がっているくらいの量なら、断言はしきれませんが、製造者から小売店までの流通ルートを追跡(トレース)したほうが、確実でしょう。その方がお客さんも安心できるでしょうし。現行でもブランド品と認めた商品は仕入れ納品書の提出という方法で証明を行っています。しかし、商品がブランドでないとみなされた場合は野放しに近いところが多いと思います。結果として現行体制ではいわゆるトレーサビリティはかなり低いです。

トレースをそれなりの速度で実現するために

では、トレースをどうやって入れるかということになります。論考なしのいきなりの結論に見えるので、にわかに信じがたいかもしれませんが、最先端IT技術(取引の健全性というとブロックチェーンを想起をする人が多いと思いますが…)を導入すると魔法のように問題が解決し…という幻想は捨てたほうがいいと思います。一番最初の商品の発生源(工場から出荷の部分、あるいは正規輸入代理店での商品チェックと梱包現場からの出荷の部分)は、人手をかけて現地現物の調査をしないと難しいでしょう(今後の議論を阻害しないように難しいと表現を緩めています、念のため)。工場に1000人単位が勤務し、1回の取引の桁が違うような仕入れをする、そんな会社は基本的に逃げも隠れもできないと思いますが、数人の会社で細々と事業をしている会社がメーカさんの役割を担うことは当然ありうるわけです。証明するに、動画とか書面とかを任意で提出してもらって、本当に用が足りるのでしょうか。
取引スタートの最初のところでブツが確認できれば、後は納品書スキャンでも電子契約でもお好きに。メーカーという発生源から小売店までの取引ルートが何らかの形で確認できなければ、認証不可ということです。

ゼロから認証を始める、というと文字通り気の遠くなるような作業を想起しますが、1.一定定規模をクリアした場合は商品発生源(工場といった場所)の認証ができれば、とりあえず認証できたとする(現物確認より確認レベルは低いですが、もちろんそれを低いレベルでしか確認できていないと明示をする)方式を持ち込み、2.一定の商売になるとして、認証業務を行う会社が数社存在し、3.特に初期段階では調査会社・調査結果のバッティングしない・取り合いしないという条件さえそろえば、大変は大変ですが意外と早いと思います。こんなの15年かかっても終わらないでしょ?とか思う方もいらっしゃると思いますが、仮に、取扱商品点数1000万、同じ商品を販売しているショップが平均25軒、メーカー1社平均200点取扱い、1日2か所検査できたとして、10,000,000/25/200/2=1000=1年営業日数250日なら4年です。最大規模モール各社は取扱商品点数約3億強だそうですので、1日の検査件数を10倍の20軒に増やせばOK(ってその概算の意味はあるのか)。

他モールで認証方式を採用したら、そこにも認証事業需要が発生しますしね。認証開始一定期間後に難しい問題となるのは、計画的でない新発売商品をどうスムースに認証するか(調査員の都合をつけるのに1週間かかるとか言ってるけど明日商品ページ出したい)、とか、そんな話になるかと思います。

こういう話は、ぽっと出の起業がすると「(無名なのに)あなたが認証作業するのですか?ダメだった時の補償は?」と言われて終わりです。従いまして、もともと通販の仕事をしている大企業関連の調査子会社を立ち上げるとか、すでに企業調査に定評のある会社さんが手掛けたほうが、一定水準に達する速度は絶対速いです(断言)[4回目参照]

09回02

09回03


詐欺ショップだけではない、取引の健全性

ここまで、詐欺行為だとそのショップさんだけ得するよね、それに対抗するには取引全体を追跡し…という話をしてきましたが、もう少しデリケートな話があります。実は価格帯が中級以上で、ある程度ブランドイメージを保ちたいメーカさんでは、ブランドを毀損する価格で売られたくない、ということで悩んでいるところも相当数あります。この場合得するのは小売販売店とお客さん(消費者)ですが。ご存知かと思いますが法律で

・(特に理由がない限り?)値下げ禁止通達を出しては出してはいけません。
・(特に理由がない限り?)供給停止をしてはいけません

という縛りがあります。おそらく、会社同士で付き合っているはずなのに、営業担当者の個人的感情が会社の取引に強く影響し、会社の運命すら決めかねない、という昭和の遺物の名残なのでしょうが。さすがに今般、上司か誰かに現状はかくのごとしで・・・と、いうような報告もなしで、明示的に会社の方針とせず、いきなり取引相手を切ることはかなり少なくなっているのでは、と思います。

前期2項目を逆手に取りまして、すでに商品供給をしてもらった実績のあるメーカ公式を細かくチェックしておいて、公式サイトに出たら無断で大概な安値で販売して、注文取っちゃって「お客さんに迷惑かけないように供給してね」というわけです。
冷静に考えるなら、会社全体の取引停止と個別の商品の取引停止では、厳密には対象がすり替わっていて、この取引単体の停止では会社の死命を制することにはならないのでは?と思うのですが、このレベルの個別の商品の取引停止ですら、いざ実施しようしたら、いかにも手続きが厄介そうですし。
ところがそんな裏事情を知らない、こういうお行儀の悪いことを仕掛けた安値ショップのところに、「とても良くまじめにお商売の勉強(=主に値引き)してるじゃないか」とたくさんのお客さんが集まるわけです。売り上げが立ってしまえば「この売上を失ってもいいのか?」という脅しまがいの事も出来ますしね。これが架空じゃなくて実話(伝聞ではありますが)というところが恐ろしい…。いやぁ、いくらなんでもこれ、メーカさんの立場は弱すぎるでしょう。

とりあえず、モール側でできることとして価格変動監視機能を入れます。

09回04

メーカさんが設定した最低価格以下の場合は通知が行き、通知から一定以上の期間がたったら、通販モールに対する規約違反ということで、ペナルティの非表示期間を設けます。ただし完全に非表示にすると、仮にモールとの規約でそういうことがありますと事前に明記しても、おそらく何かの法律違反または法の精神からすると不可ということで引っかかりそうなので、休止期間を長くすることで対応します。短くなった表示期間内で同じだけの売上げを上げようとすると、よりインパクトのある値引きをせざるを得なくなり、従来と同じだけの利潤をあげようとすると、もっと数量を売らないと達成できなくなり、ついにはあきらめるであろう、という計算です。

09回05


実は通販特有の問題ではないのでは

とはいえ、表示されている期間は存在するわけで、その期間は対象ショップが従来の売上・利益を立てようとあがくと、余計値引きされてペナルティ休止期間だけは事態が悪化しているともいえます。

本当に解決しようとしたら、とある条件に抵触したら供給停止にできるような契約を明示的に結ぶ必要があるのは自明です。ですが、おそらく現状では嫌がる小売店に供給停止を含む契約を強制できる法律はないと思われます。6か月以内に取引を正常化する、明示的な文書を使った契約を行ってください。契約すらしないと契約申し入れから9か月後に供給停止します、というようなことです。双方が納得していれば見積書と、見積書に沿った発注書で、書面を交わした跡を残すくらいで、あらためて契約書にすることを強制する必要なんてないと思いますが、一方が不満を強く抱えて辞めたいと強く願っている状態を放置するのではねぇ。メーカーも今なら小売店に切られても、ある程度は通販を含めた市場で戦えそうですし。オンライン・オフライン問わず、さすがにこれは国会議員等にロビイングしつつ、入れたほうがいいと思いますよ。

これは通販モールで対応は無理です・・・

もうこれは手に負えません、というのはコピーないし類似商品問題です。商品単体での認証が進み一段落して、さらに商品説明文の中身の検証まで踏み込むことができれば、商品説明文には手作りと書いてあるけど、機械で作っているのを指摘、ということは可能になると思います。ですが、ドロップシッピングでも何でもなく、リスクを取って実際に商品を作っていて、販売しないと自分の財布がモロに傷むんです、ということであれば、とある通販モールが販売停止したくらいでは、販路を求めて、すぐどっかに行って同じことをすると思うんですよ。影響力の及ぶ範囲からして、一通販モールの問題ではないと思われます。(業界団体とか行政とか…)

そうでなくても、なんかこんなモノを作りたい、ってぼーっと考えていたメーカーAがいるとします。そこへ別のメーカーBが想像とはかなり似た商品を市場に出してきます。需要があるのを確信し、いくつか先行商品にない特徴を付け加えて、とある似た商品をメーカAが販売したとします。この場合、この行為はそもそもコピーなのか、単に同じカテゴリの商品ではないのか、ということを問うことから始める必要すらありそうです。もちろん通販実店舗限らず「これはコピーで販売停止」なんて確信をもって言える小売店は限りなくゼロでしょう。

こんな事案でも究極的には、特許だの意匠権だので裁判をすることになる場合もありそうです。その裁判では、最後に販売停止か野放しかを判断ポイントに基づいて決め、法治国家ですので「双方とも判断に従え」といわれ、そうするわけですが、判断を下した裁判官も、裁判に勝った側も含めて、関係者全員「実のところ自分の主張にすら自分で反論点はひねり出せるので、どう転んでもあんまり納得しているわけではなくモヤモヤ」なんじゃないかなぁ、と個人的に思っています(とこの辺の事情についてはあまりよく知らないので小声で言ってみる)。

最後に。自分に実現の手段もなく契約を強制する法律のロビイングや、最初の出荷元を人力で確認する調査会社(部署)などあれこれ必要、ってさらっと書いているけど、この記事の筆者アホなのでは?と思われる方も多いと思います。本当にご指摘の通りでございます。とはいえ、「言うべきことはだいたい言いました」のであとは…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?