「きたない君がいちばんかわいい」最終巻を読んだ

最終巻に関しての思いっ切り核心に触れるネタバレはなるべくしないけど未読の人は回れ右して立ち去ろう。ここから先を読んで良いのは既に読み終えた人だけです。




























無理です。もう立ち直れません。もう読んでから結構経つけど全然傷が癒えない。まぁこの2人が全部丸く収まってハッピーエンドなんてことはないよな〜〜とは覚悟してたけど、そこまでやる????まにお先生業が深すぎる、本当にありがとうございます。あ、あと最初に言っておくと、またあの結末を見るのが辛すぎて全然読み返せてないので深い考察とかは一切していません。

Twitterで話題になった第1話、あいとひなの倒錯した「遊び」の描写から始まり、次第に周囲の人間たちの言動によって2人の関係が拗れていき、そしてあいの心が壊れ2人の関係が逆転したところでの最終巻。わずか200ページ余りの中で、みるみるうちに心をズタズタにされました。

こういう(百合やBLに限らず)恋愛系の作品を読む時って、完全に観測者となって読むタイプの人と(いわゆる壁)どちらかに感情移入してしまうタイプの人がいると思います。私は「きたかわ」を読む時、途中までは完全に観測者タイプだったんですけど、4巻くらいであいの心が壊れて本格的にひなに依存し始めた辺りからあいに感情移入しまくりでした。そこでこの最終巻よ。あいの依存心やら独占欲やら疑念やらがぐっちゃぐちゃになっていく感じにもの凄くリアリティがあって本当に辛かった。「ひなを信じたいのに 不安が勝って感情が言うこときかない」とかもうね、うん。「2人で一緒のおうちに住もうね!!」なんて将来のことをひなと無邪気に笑い合っていても、じわじわと「現実」という毒があいの心を蝕んでいく。ひな以外何も要らないのにこの世界で生きている限り、お金とか他人の目とか、2人だけの「永遠」の世界を邪魔をしてくる「ひな以外」が多すぎてどんどん苛立ちと不安が募っていくっていう。しんど。まぁそしたらああいう結論に至っちゃうよな…。永遠になりたいもんな…。

あと「あいは本当にひなのことを愛していたのか(最初の段階ではひなのことを自尊心と性癖を満たす道具にしていたのでは、関係が逆転したあとの感情は愛情ではなくひなによって植え付けられた依存心なのでは)という疑問が浮上しかけたんですけど、依存から始まる愛情も(あるいは愛情から始まる依存も)存在するのだろうし、「ひなのことが好きで好きでどうしようもなくなってしまった」という事実だけできっと十分なのでしょう。

そんでさ、ひなだよ。この女ぽやぽやした顔してやべえ業抱えてる。最後のあの場面、「わかった、本当は辛いけどあいちゃんが望むなら…」とかじゃなくて、この女は「かわいい」と漏らしながら、愛情と憎悪で顔をぐっちゃぐちゃにして、殆ど意識がぶっ飛んだような状態でその行為に及ぶ訳です。やば。

なんかでも結局のところ純粋に「あい」と「ひな」の2人が大好きだったので(ひなのふわふわしたあの髪型が本当に大好き、髪切った後のあいも大好き)(LINEスタンプめっちゃ使ってます)、あの結末はもう駄目でした。幸せに

多分物語のこの結末は限りなくバッドエンドに近いメリーバッドエンドなんだと思います。結局最後まで純粋で健全な「好き」が2人の口から出ることはなく、なかば玩具のように性癖を満たすのに利用したり依存させて飼い殺したり、そういう色んなものが入り混じった「好き」が拗れに拗れた結果が、あの余りに悲しくて余りに綺麗な結末。何処までも性癖と依存に満ちたドロッドロの作品でした。

あとこれは疑問に思ってることなんですけど、タイトルの「きたない君がいちばんかわいい」の「いちばんかわいい」の部分って、何に掛かっている言葉なんでしょう?何が言いたいのかと言うと、「色んな『君』の姿のなかで、『きたない君』がいちばん可愛い」という意味と、「色んな人の中で、『(きたない)君』がいちばん可愛い」という2通りの解釈ができると思うのです。個人的には物語の前半部は前者の、後半からは後者の意味合いが近いイメージです。そういえばサブタイトルも巻によって「I Love Your Cruddy…」だったり「I LOVE YOUR CLOUDY…」だったり変わってますよね(前者があい→ひなで後者がひな→あい?)。

ちょっと重めの百合漫画とかはちょいちょいあるけど、こんなにダメージを負ったのは初めてかもしれない。なんかこんな風に書いちゃうと「きたかわ」という作品に対してネガティブなイメージを抱かれてしまうかもだけど、本当に素晴らしい作品でした。読み終えた後こんなに長時間激しく心がざわつく作品なかなかないです。まにお先生、本当に連載お疲れ様でした。次回作もめちゃめちゃに楽しみにしています。

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