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「人数で勝負」を現実にしてしまう横浜FC 四方田監督の手腕

人数で勝負!?

ハマブループレスの、「昼田GMロングインタビュー」の中で、昼田GMは「我々の予算/立ち位置からすると選手の質で勝負するのは難しい。なので人数で勝負。」ということを言っていました。その結果、横浜FCの登録選手は39人と、J1でも圧倒的に多いです。
読んだ時はなんとなく「そうなのか!」と納得した気になりましたが、よく考えたらわからないですよね。サッカーで出場できるのは11人、サブを入れても16人までと決まってるわけですから。スイミーのように「小さきもの」が大勢で力を合わせて対抗するわけにはいきません。

実際、第10節までは、その間のルヴァンカップも含め全く勝利できず、サポでない人は皆「降格1枠は横浜FCで確定だろ」と思い、フリエサポですら多くは「このまま最速で降格か?」と悲観的でした。掲示板では、「J2、J3の選手をたくさん取ったって勝てないだろ」という批判も上がっていました。

誰もが予想しなかった5月反攻

しかし、実際にはご存知の通り、システムを変更した後はそれまでの0勝から一転、新潟戦を皮切りにリーグ3勝、柏戦からは公式戦3連勝となりました。
最弱の前提のまま「守りを固めてカウンターの弱者の戦術にしたからなんとか勝ちを拾ったんだろ」という声もありましたが、川崎戦の21年ぶりの勝利はその最弱のイメージを拭い去るに十分なサプライズでした。

とは言え、川崎も調子悪いからね。守りを固めてたまたま一点取って、その流れからもう一点とって勝てたね。という意地の悪い、いや、いまだに4月までのイメージを引きずった見方も多かったとは思いますが、川崎戦だってずっと引きこもっていたわけではありません。結構前に出てやり合ってましたし、2得点とも、決してたまたまでは取れない「ゴラッソ」。その前のつなぎもうまかったです。

そして一昨日のルヴァンカップ。主力の広島相手に勝利。確かに同メンバーで連戦の広島選手の動きは重かったでしょうが、こちらだってスタメンに高卒ルーキー2人など、これまでほぼ出番のなかった選手を3人含むオールターンオーバーでした。それでも、その広島主力相手に、リーグ戦で勝ち始めたのと同じ戦い方で正面から勝利です。
ここまできたら、もはや横浜FCに否定的な見方をしてきた人も、これを「たまたま」では片付けられないのではないでしょうか?
さらに、後で論じますが、「広島選手の動きが重かった」という事実すら、「たまたま横浜FCに有利に働いた要素」ではなく、それ自体、相対的にうちの実力を示していたと思います。

「人数で勝負」」はどのように機能したか

これはもう、昼田GMの志向する、弱者が強者に勝つ「ランチェスター戦略」に基づく「人数で勝負」が機能したと思うしかないでしょう。

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すみません。なんのことやら理解してません(笑)ネットで「ランチェスター戦略」を検索すると、要するに、広域戦だと経営資源の差で強者には勝てないので、弱者は局地戦に持ち込み、小さなナンバーワンを積み重ねるべきだと。
それが一体、出場人数の決まっているサッカーでどう活用されるのか。考えてもわからないので、一旦「ランチェスター戦略」は忘れて、自分なりに「人数」がどう機能したのか、あるいは今後機能するのか、考えてみました。

  1. 最初からいい選手は取れないので、ポテンシャルを見極めて取れる選手を獲得。これはわかりますね。もちろん、選手を見極める上質の目が必要です。

  2. J1に馴染んだり、あるいは練習を通じて選手の能力が上がっていくが、そのスピードは選手によって違うので、大勢いることで、早くJ1に適応した選手から起用。なので、ごく初期は適応した選手が少なく、難しくなった。

  3. 能力の上がった選手を含めて練習することで、他の選手も練習の質が上がる。また、試合出場メンバーを除いても2チーム分の人数がいるので、出てない選手も常に実戦的な練習が出来る。(ショーンが、「いつもサウロやマルセロとやってるのでドゥグラス・ヴィエイラも別に問題なかった」と、サラッと言ってのけてました。)

  4. タイプの異なる大勢の選手が違うタイミングで徐々に質を上げていくので、リーグが進むとともに選手を入れ替え、チームプレーを改善、調整することが可能になる。

  5. 広島戦でも見た通り、ある時点以降は大勢の選手が一定以上のレベルで質を上げて争うようになるので、競争の激しさも、練習におけるプレーの質も、段々上がってくる。

  6. 大きなグループで質を落とさずに選手を入れ替えられる。結果、怪我人が出ても、リーグが進んで疲弊する選手が出てきても、チームのクオリティーを維持できる。(広島は当初うちよりずっと強かったのに、同じメンバーで戦って、疲弊した結果、うちのフルターンオーバーメンバーに負けましたね。だから、広島が重かったから勝った、というのも、すなわちチームの実力なのです。)

(合ってるかわかりませんが)このような戦略と、これを実現するだけの「ポテンシャルのある選手」を取った、昼田GM及びスカウティング陣の能力は素晴らしいものがあると思います。

ルヴァン広島戦 完全ターンオーバーでの出場メンバー やる気に満ちてます!

四方田監督の手腕

しかし、こうした戦略が優れていれば、監督は誰でもいいのでしょうか?
いやいや。
そんなことは全くないでしょう。これは、四方田監督だから可能になった戦略だと思います。シーズン開幕前のインタビューか何かでヨモさんは「39人もいるので、試合に出られない選手のモチベーションを保つのが大変」みたいなことを言っていました。(と、思います。うろ覚えですが。)
試合に絡めない選手の問題だけではありません。チームの調子、選手の調子によってどんどん入れ替えていくわけですから、「出ていたのに急に出られなくなった」選手のメンタルもなかなか大変です。そして、そういう選手が多くなるのも必然です。

ただ、現実はルヴァン広島戦で見た通り。リーグ戦に今現在出てないメンバーも高い意欲を持って試合に臨んでいました。しかも、高井が力強く守備をしたり、カプリーニが献身的にオフザボールで走り回ったり、普段の練習から弱点の克服に意識を高く持っている証拠です。
この試合では「そろそろコンフォン出るかな?」と思ったら、またベンチにも入ってませんでした。かなりモチベーションが下がっていてもおかしくはありませんが、先日のハマプレのインタビューでは前向きな発言をしており、安心しました。川崎戦では出場停止の航基の隣で一緒に観戦していましたが、表情は明るそうでした。

この「人数で勝負」戦略は、試合に出られない選手のモチベーションをいかに下げないか、そして、お互いの進化に対していかに前向き、上向きに競争させられるかが鍵です。これだけ大勢の選手の気持ちを常に前向きに、チーム意識を高く保つのは、誰でも出来ることではないです。
また、出た選手がちゃんと活躍しなければ、外された選手は納得できません。選手の能力/コンディションを見極める眼も厳しく要求されます。
これは四方田監督の手腕以外の何物でもないでしょう。ヨモさんのマネジメント能力はもっともっと注目、評価されるべきだと思います。(もちろん、それをサポートする俊輔らコーチ陣も賞賛されるべき。)

分厚くなった選手層

こうした戦術/戦略により、(サポ的には)予想外に選手層が厚くなってきた感じがします。CBはガブの怪我で絶望しましたが、その後吉野が活躍。さらにマテウスの躍進に加え、ショーンも強さを見せました。おまけにユーリもCBを力強くこなしました。現状、ボニ、岩武、吉野、マテウス、ショーン、ユーリのいずれ劣らぬ6人で3枠を争う格好です。

得点を喜ぶユーリとマテウス。左は近藤と思われる。

そしてボランチ。ユーリはこちらにも入りますが、高井がこのままセントラルミッドフィルダー的なプレーで台頭してくれば、間違いなくスタメン争いをします。そうすると、ユーリ、高井、三田、潮音、和田さんの5人で2枠の争いです。

シャドーの候補は最初から人数が多いですが、その競争のレベルも上がってきました。現状は運動量と上手さの兼ね合いのところで、多分井上とハセタツがファーストチョイス。しかし、慶治朗も神戸戦ではいいプレーを見せてました。カプリーニは走力を要求される中でベンチからも外れた格好ですが、広島戦ではその点の向上を見せてくれました。彼がもっと走れれば強力です。坂本も広島戦では好プレーを見せました。そもそも彼は最近の途中出場では、常に好プレーを見せています。もしかしたら、高井もこちらで争うかもしれません。あと、忘れちゃいけない、翔さん。7人で2枠の争いになります。

ワントップは、航基、サウロ、マルセロ(ヒアン)、そして翔さん
1枠を3人、または4人で争いです。航基の先発を固定枠と考えても、交代出場の枠を3人で争うことになります。川崎戦では先発翔さん、交代出場マルセロでしたが、マルセロは強いキープ力でその出場の意味を証明して見せました。ここでサウロはベンチ外。
ターンオーバーの広島戦はマルセロ先発で、サウロはベンチに入りましたが、なんと、ここでも出番はなし。元々航基の次はサウロ、とみんな思っていましたが、マルセロの健闘でサウロも激しい出場争いを余儀なくされています。しかしもちろん、巻き返しに向けて精力的に努力をしているはずです。

ウイングバックは近藤、林で決まりかと思ったら、ここのところ山根が強さを見せて出場しています。近藤と山根は、既にJ1レベルのスタメン争いかと思います。

最近出場の減ったメンバー

ここで、忘れてはならないのが、最近めっきり出場の減ったメンバーです。特にサイドに多いですが、新井、橋本、そして拓海!
3人とも、やはり守備力が課題なのでしょう。拓海は初勝利の新潟戦のインサイドストーリーでは、ベンチ外メンバーがみんな大喜びで出場したメンバーを迎える中、1人で腕組みして壁に寄りかかり、面白くもなさそうな顔をしていました。(まあ、普段からそういう表情をしている、というだけかもしれないですが。。。。)
選手同士競争しているわけですから、お人好しに活躍した選手をニコニコ迎える必要もないわけですが、どういう顔をするにせよ、ぜひ課題を克服する努力をして、再び先発争いに加わって欲しいものです。ほんと、守備力さえ上がればすごい選手のポテンシャルがありますしね。橋本も守備です。
新井はもうちょっとドリブルの破壊力が欲しいですかね。

ちなみに英二郎も出場機会は少ないですが、彼の場合はメンタルを心配する必要もないでしょう。期待して待っています。

夏以降の快進撃なるか?

さあ、これだけ選手層が厚くなってきていて、さらに今後もチーム内競争による向上が期待されるわけですから、各チームが疲弊してくるリーグ中盤、特に夏以降は相対的に横浜FCが有利になってくるでしょう。今から楽しみです。
まさにランチェスター戦略!(わかってない)








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