うつ病東大生が卒業単位を全て揃えて留年した話

・はじめに

あけましておめでとうございます。初めましての方は初めまして。ちるだといいます。
年も明けて気持ちを入れ替えるためにも、去年の僕の話をつらつらと書いていこうと思います。ちなみに今はめっちゃ元気なので安心してください。
この記事は大学の闇といった話ではなく、僕と同じ/似たような状況に追い込まれて進路に迷っている大学生に、一つの選択肢を提示できればと思いながら書きました。
こういった文章を書く機会があまりないため読みづらい文章になってしまうかもしれませんが、正月休みの暇潰しにでも読んでいただけたら嬉しいです。

・うつ病になった経緯

うつ病になった主な原因は、簡単に言ってしまえば「大学院入試に落ちたこと」と「卒論のプレッシャー」の二つ、特に後者です。10月頭の中間報告以降1月半ばまで全く進捗を産めず、毎週のラボミーティングも欠席するようになり、「卒論を進めなければ」という焦燥感に駆られる一方で家に引きこもっていたら睡眠障害になりました。布団に入って目を瞑っても眠れず、日が昇ったころに眠りに落ち、日が沈んだ頃に起きる生活です。日照時間が短い国の自殺率が高いことからも明らかですが、人間は日に当たらないとダメになります。11月半ばには「自分はたぶん11月中に自殺するんだろうな」と思っていたんですが、ちょうどその頃、知り合いの社会人オタクが鬱病で休職していたり退職していたりしたので、その方たちに自分の状況を相談したら「それは病気だから病院に行った方がいいよ」と言われたので病院に行きました。即日うつ病の診断が出ました。世の中には自称うつ病みたいな人もわんさかいますが、いざ正式な診断書をもらうと、なんだか免罪符を得たような、そして自称ではないんだという気分になってすごく気持ちが楽になりました。その診断書を持っていけば休学も簡単にできたと思いますが、「どのみちいつかは卒論書かなきゃいけないんだし、どうせなら今年書いてしまいたい」と思っていたので、診断書は大学には提出せずに家でニヤニヤ眺める用にもらっておきました。
睡眠障害はそれだけで病院に行く理由になるので絶対早めに病院に行った方がいいし、あとは家から出て、日に当たって、人と話してればたぶん何とかなります。精神的にやばいと思ったらとにかく日に当たることを強くお勧めします。これはマジ。

・冬院試という制度

先ほどさらっと書きましたが、僕は夏の大学院入試に落ちました。東大って内部生で院試落ちるとかあるの?と思う方もいるかもしれませんが、僕が受けた専攻はどうやら毎年内部受験生の8割が合格、2割が不合格なようで、そもそも成績的に今の学科にギリギリで滑り込んだ僕は当然のように下2割に入りました。試験終わった後は手応えもあって「これで落ちたらもう一生受からんわ~」とか言ってたんですけどね……。周りの人たちが頭良すぎるし、そりゃ落ちこぼれはうつ病にもなりますよね。
夏院試に落ちた人間が取れる選択肢としては、基本的に「就職する」と「冬院試を受ける」と「院試浪人する」の三つがあります。ただ、大学院に行く気満々だった人間が就活をしているわけもなく、院試の合否が出る8月末~9月頭には世間的には一通り就活が終わっていますし、卒論も忙しくなるこのタイミングでゼロから就活をスタートするのは非常に酷なものです。これからうつ病になるような人間に、そんな気力はありません。
そうなると、気持ちは冬院試に向くわけです。冬院試は実施する専攻としない専攻がありますが、幸い僕が受けていた専攻は冬院試を実施していました。ただこの冬院試がまた曲者で、
・受験者数が少ないから情報が少ない
・英語の点数になるTOEFLがiBTのみ(夏院試はITPでもよい)
・試験日が卒論締め切り1週間前
という何もかも最悪な試験なのです。僕はただでさえ東大入試のリスニングで30点中10点しか取れなかったくらいリスニングが苦手なので、iBTなんて地獄でしかないです。その上前述の睡眠障害のせいでほぼ寝ずにiBTの試験に向かうことになり、結果はそれはもう悲惨なものでした。高校時代の方がまだ出来た気がする。
冬院試の願書を出しつつも、「受かったらあと2年研究しなきゃいけないのか」「冬院試に落ちたらどうする?」といった考えで逡巡する日々でした。精神衛生は最悪です。

・1月、某、突然の電話

冬院試の願書を出してTOEFLも受け、院試勉強もしなきゃな~と思いつつ、1月半ばにやっと重い腰を上げて卒論の進捗を産み出そうとしていたのですが、ここで研究室のPCがぶっ壊れ、僕のメンタルもぶっ壊れました。そのときの2,3個の僕のツイートを見て色々と察したのか、1個上で留年して同輩になっていた音ゲーマーから深夜3時に突然電話がかかってきました。電話に出ると、開口一番に「俺は来年卒論書くことにしたよ」と言われて笑いました。前述のように逡巡していた僕にとって、そういう選択肢もあるのかぁとめちゃくちゃ気持ちが楽になりました。睡眠薬ってかなり記憶が飛びがちなんですが、翌日目が覚めたときに大量の睡眠薬の殻と酒の空き缶が転がっていたのを見たときは、”””人生の底”””を感じました。あと冷蔵庫にエアコンのリモコンが入っていました。
そこから10日くらい自分で色々考えて、色々な人からアドバイスももらって、最終的に卒論まで出してから自主留年することに決めました。冬院試前日の夜に親に「留年します」と連絡を入れました。兄が一浪だったりする家なので、ストレートで東大に入ったんだし1年くらいいいんじゃない?と親も認めてくれました。あと、卒論を進めるにつれて「もう研究したくない!!!」という気持ちでいっぱいになったのも、冬院試を蹴った理由の一つです。ちなみに、夏院試落ちて冬院試を受けた内部生は僕の知る範囲ではみんな受かっていたと思います。もしかしたら冬院試は夏院試で落とされた内部生の救済システムなのでは?とも思いましたが、僕は受けていないのでよくわかりません。

・卒論審査2時間後に留年確定

冬院試という大きなストレス因子が一つ消えたことで、なんとか卒論を進めることができました。画像認識の機械学習にまつわる研究をしていたため、特に学習に時間がかかるので、この時期はよく研究室に泊まっていました。用心棒(東大前にあるデブラーメン屋さん/東大生の血肉は大体この麺でできている)でデブラーメンを食ってそのまま研究室で寝る、という生活をしていたら、卒論ストレスも相まって1,2月だけで6kgくらい太りました。
ぶくぶくと太りながらも卒論を書き上げるとともに、自主留年する方法を模索していました。従来の卒業要件だと20単位くらい取り消さないと卒業してしまうくらいには単位が余っていたのですが、3年後期に突然卒業要件が変更になったおかげで、1単位取り消すだけで留年することができました。卒論審査会も無事に終わって卒業が確定する流れの中で、事務室や教授のもとを奔走して単位取り消しの書類を書いてもらい提出。卒論審査を通過した2時間後には留年を確定させました。これにはファイブ・ゴッド・マコト(五神真総長)もびっくりでしょう。どの単位を取り消したとか具体的なことを知りたい方はDMなどで直接聞いてください。
追記:卒論を出した上で卒論の単位を保留にして留年という方法もあるそうですが、弊研究室の教授に相談したらこっちの方が良いとのことだったのでこの方法にしました。

・卒業単位を揃えた上での自主留年のメリット

僕の仲の良い人は6~7割くらい浪人か留年をしている気がするのですが、その中で人生が詰んでいる人は見たことありません。もちろんストレートで人生を歩んでいくのが一番良いのかもしれませんが、1,2年くらい誤差じゃないですか?就活で浪人や留年に難色を示すような会社には入らなくて正解だろ、くらいに思っています。あと僕は「他人と同じものを選んでも面白くないじゃん」という理由だけで第二外国語でロシア語を選ぶくらいには逆張りに生きているので、うつ病も留年も、普通の人が経験しないような経験ができてアドだったと思っています。人生の底を知っている人間は強いですよ。たぶん。
逆張りの話は置いておいて、卒業単位を揃えた上で自主留年することは様々なメリットがあります。僕がアドだと思ったものをいくらか列挙すると、
・10ヶ月休学※
・無限に時間がある
・運賃、サブスク登録、ソフトウェア購入などで学割が使える
 -Adobe CC:月6248円→月2178円
 -YouTubeプレミアム:月1180円→月680円
 -Apple Music / Spotify:月980円→月480円
 -Office365:無料
 -3DX MAX, Motion BuilderなどAuto Desk製品:無料
という感じでしょうか。とにかく「10ヶ月休学」という概念が強すぎました。一番書きたかった内容はこれなんですが、前置きの自分語りがめちゃくちゃ長くなってしまいましたね。ごめんなさい。休学中の学費はかからず、少なくとも東京大学の場合は、2ヶ月だけ通っていたら学費も月割りで2ヶ月分だけになります。つまり9万円で1年間東大の学生証を持つことができ、その上様々なアドが取れます。上に挙げた以外にも、アカデミック版で数万円安くなるソフトなどもいくらでもあります。簡単に元が取れます。
僕の大学生活は単位をギリギリ取れるような勉強をしているだけで、特にその知識がちゃんと身に付くわけでもなく、学費や家賃などを自分に投資してくれている親に対してとても申し訳なく思っていました。それもうつ病の原因の一つだったかなと思います。休学中は当然奨学金を借りることができないので、さらに1年追加で親の援助を受けることになりました。ただこの一年は、無限にある時間・東大生という肩書・様々な学割を駆使して自分のためになることが色々とできたかなと思っていて、それが少しは自分への投資への恩返しになったんじゃないかと勝手に思っています。今思うと、院進するよりもお金はかからないわけで、研究したくないと思いながら院進するよりよっぽど親孝行だったかもしれませんね。

※休学について補足ですが、僕の場合は単位を取り消した授業の担当教授のご厚意で、単位取り消しの逆の手続きで単位を復活して卒業できることになりました。そのため授業を履修する必要がなく、半期以上の休学が可能でした。また、3/31付で卒業するためには1/1付で復学している必要があるそうですが、僕が休学届を出す際の事務の方とのやり取りで「2/1付で復学している必要がある」と言われていたので(当時の担当者のミスらしい)、1/31までの10ヶ月の休学になりました。大学や学科によってこの辺のシステムは違うかと思いますが、留年した際はまず休学について調べるのをお勧めします。

・休学中の話

また自分語りに戻ります。もう院進のことは1ミリも考えていなかったので、卒論周りも全て片付いてから、3月に就活を始めました。「3月に就活を始めた」という文字に違和感を覚えなかった人はめちゃくちゃ出遅れているので焦燥感を持った方がいいです。自分の学科や卒論で専門としていた分野で就活をしていればすんなり決まっていたかもしれませんし、多分その方が給料も良いのですが、ここでまた逆張りが発動します。そんな人生楽しいか?となった僕は、学部も学科も専門も全く関係ない、やりたいことの方向で就活を始めました。ただ色々と出遅れていたり、そもそも狭き門だったり、ここでも上手くいきません。人生って難しい。5月後半に全て落ちてからは、当然のようにうつ病モードに入りました。とりあえず部屋が汚かったので、6月は1ヶ月かけて部屋の掃除をしていました。カビっぽくなった布団やカーペットも全部買い替えて、部屋を埋め尽くしていた大量のモノも捨てまくって、一息ついた7月半ば、ふともう一度就活するかぁという気持ちになりました。ただ、そのタイミングで新卒募集を探すのもなかなか至難の業だったので、今年はインターンでも探して来年改めて就活する選択肢もアリかなと思いながらインターンにいくつか応募しました。そんな中で色々な方の繋がりもあり、そのうちの一つに拾っていただくことになりました。本当に感謝の念しかありません。それからは、それまでにやっていたバイト2つに加えてインターンでもモリモリ働いていて、家に籠る時間が格段に少なくなりました。そのおかげで今はめちゃくちゃ元気です。ただ、春に一度抗うつ剤の量を減らしたときに11月と同じくらいまで悪化したことがあるので、薬はまだほとんど減っていません。減薬って大変。とにかく今はめちゃくちゃ元気だし、春に就活していたところよりもずっとやりたいことをやらせてもらっていて、毎日楽しいです。何事もなければ4月からは社員として働いていると思います。たぶん。

・さいごに

ここまで読んでくださってありがとうございました。
この記事は東大生向けというつもりはありませんが、東大生はどうしても心の中に「東大生」という自分が思うよりかなり高いプライドを持っていて、それが折れたときには精神を病みがちだと思います。というか、本当にすごい人があれだけいる環境に何年もいたら、普通の人間は心が折れます。工学部の精神科が2ヶ月先まで予約が取れないみたいな噂も聞いたことがあります。僕は行ったことないので詳しいことは知りませんが。
とにかく、1年の留年なんて誤差だし、無理して生きていくくらいなら1年足踏みして、アディショナル学生タイムを過ごしてもいいと思います。何も保証はできませんがきっとなんとかなります。僕が伝えたいことは
・卒業単位を揃えた上で留年すると色々とお得
・精神的にヤバいときは日に当たる
・カビっぽい布団とかは捨てた方がいい
ということだけです。
うつ病の相談とか自主留年の相談とか、もっと詳しい話を聞きたいなどあれば、いつでも気軽に @chiruda_16 までDMでもリプライでもなんでも送ってきてください。
この記事が少しでも未就活院試落ち大学4年生の助けになれば幸いです。

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