「ベニスに死す」コロナ禍に観る
ずっと観たかった「ベニスに死す」をU-Nextにて鑑賞。マーラーの音楽と映像美に浸る。敢えて解説やこれまでの感想コメントは読んでいない。自分がどうこの映画を捉えたのか、それだけを記してみる。
昔も今もベニスの産業は観光
舞台は19世紀後半だろうか。人々のファッションがおしゃれだ。ドレスの生地、デザインがとても上等。
上流階級の一部の人々の日常を成立させるために、それ以外の人間が多くの時間を割いて労働し、少ない給料をもらってなんとか食べていたころの話だ。
だからこそ、人々は生きていくために「上流階級から流入するお金」が必要だ。伝染病が流行していようが、絶対に生きていかなければならない。
そんな人々の「隠し事」を主人公はベニスに到着した瞬間からなんとなく感じ取っているようだった。
世界一美しい少年
実は「ベニスに死す」を見たいと思ったのは、ビヨルン・アンドルセンのドキュメンタリー映画に興味を持ったから。
神がつくった最高傑作のような美しさをスクリーンに刻んだ少年がその後どんな人生をおくったのか、誰もが興味を抱くところだと思う。
残念ながらドキュメンタリー映画は見られていないが、
今回「ベニスに死す」を見て、あの美しい視線に見つめられたら、「美の神様に挑戦されている」ような気持ちになるだろうなあと改めて感じた。
主人公は美に殉じた
鑑賞後、この映画をどう捉えるか悩んだ。
ビヨルン・アンドルセンのプロモーションビデオのような気もした。
見終えて数日たった今、こう考えている。
「主人公は美に命を捧げて死んだ」と。
主人公はどうやら大音楽家だったらしい。しかし、音楽という美の世界では自分の考える美を確立し、聴衆にもそれを伝えることはできなかったようだ。
だからこそ、理想の美を見つけて主人公は少年に執着し、心を捉えられて、恥ずかしげもなく彼の後を付け回す。
プライドも何もない。醜悪な姿をさらし、少年を付けまわす。
少年は伝染病から助かるだろう。それを引き換えのように主人公は死ぬ。
まさに美に殉じた最期だと思う。
美は恐ろしい
ビヨルン・アンドルセンの美しさは「ベニスに死す」のころが絶頂だったようだ。
まだ少年の持つあどけなさが神秘的で、役者ではなく「象徴」という感じが無二の存在感を醸し出す。
その後の彼の人生がどんなに過酷だったか、なんとなく想像できる。
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