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闘将・八木滉史

■プロローグ

令和元年度全国高校サッカー選手権千葉代表は船橋市立船橋高校、皆さんご存知の「市船」が代表権を獲得し幕を閉じた。

いつか絶対に書き綴ろうと考えていたこの記事。その“いつか”は既に決めていた。その日は、全国高校サッカー選手権決勝前日。最後のひと押しになればと心に抱くも、その想いは叶うことなく彼らの夢と一緒に儚く散った。

寒さが増していく日々が続くなか、澄みきった西方の景色には、雪化粧で目映く光輝く日本一の富士が見える。太陽が沈む夕刻、朝とは対照的に橙色の景色のなかに、漆黒の富士が聳え立っている。

日本一の景色は四季折々の姿を見せるが、いつも近づいたり離れたり。頂上からの景色はいかなるものか。

流通経済大学付属柏高校サッカー部33期生。

彼らの日本一への挑戦は、いったい何合目で途絶えたと捉えるべきなのだろうか。昨年も一昨年も、あと一歩で達すはずであった頂点。歴戦の勇士たちが刻み込んだ轍に、新しい歴史を刻み込むはずだった。

そう......はずだった。

■背番号42

今から4年前。

流経大柏サッカー部27期生・立花歩夢が育ったクラブ「FC多摩」を一目観ようと、清瀬グラウンドへ足を運んだ。このクラブは通称「ビックリ箱」と私から呼ばれ、毎年、たくさんの選手が強豪高校やJ下部育成組織へ活躍の場を展開している。

東京都クラブユース選手権U-14準決勝。

FC多摩 vs FC東京深川。

フィジカルとスピードに勝るFC東京深川が優位にゲームを進めるなか、数名の選手が躍動していた。そのなかで一番目を引いたのは背番号42の選手。

ドリブルやパスといった基本的なプレーにおいて、良い意味で力が抜けている感じ。オフェンシブな場面では、スルスルっと抜けたり展開したり、ディフェンシブな場面では、激しいコンタクトを見せていた。

この背番号42の選手が後に、流経大柏33期生の主将になるとは、そのとき予想だにしなかった。心の奥では「流経に行ったら、面白いのになぁ」と考えつつ、その試合のこと、“背番号42の選手”のことをツイートしていた。

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■背番号24

流経大柏サッカー部33期生 背番号24八木滉史。

注目した14歳の少年が流経の門を叩いたことがわかったときは、本当に嬉しかった。実は、初めて観戦したあの日以降、流経中心の観戦をしていたため、U-15となってからの試合に足を運ぶことができなかった。

台頭してきて欲しいと考えてはいたが、そのときを待つ時間はそんなに必要としなかった。2年生にして、流経大柏のボランチを任せられるまでに成長していた。

迎えた第97回全国高校サッカー選手権。激闘の1つに数えられるであろう、前橋育英との第96回大会決勝で、延長戦に入るかと思われた終了直前に均衡を破られ敗退した。その悔しさを胸に挑んだ第97回決勝だった。結果は高体連の雄・北のグリーン軍団・青森山田の前に屈し、2年連続全国準優勝となった。

いよいよ、新チームとなり、33期生の主将に任命され、高校サッカーラストシーズンへ突入していく。

■闘将

春、プレミアリーグが開幕。なかなか勝点が積み上げられない我慢の時期が続いた。試合中は大きな声を出し仲間を鼓舞し続けていた。FC多摩時代、FWで活躍した彼がボランチに主戦場を移し、目立ちはしないが着実に流経を牽引していた。

しかし、結果がなかなかついてこない。

インターハイ予選決勝は、アディッショナルタイムで逆転弾を許し、沖縄で開催される全国インターハイは日体大柏に譲ることとなった。

秋口にはスタメンから外れることが多くなり、ゲームキャプテンは渡會武蔵君が務めていた。

この間、様々な想いが駆け巡ったことだろう。主将としてチームを支える大黒柱でなければならない。個性溢れるメンバーをまとめあげねばならない。何より腐ることなく努力を継続し、常に先頭に立たねばならない重圧はいかばかりだったか。

常勝軍団を目指す流経大柏の主将。

26期生 桜井将司

27期生 石田和希

28期生 広滝直矢

29期生 菅原俊平

30期生 関 大和

31期生 宮本優太

32期生 左部開斗

歴戦の闘将達が刻んできた轍。

33期生 八木滉史がその歴史に名を刻んだ。

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■エピローグ

14歳 あどけなさの残る背番号42の八木少年。彼がFC多摩時代にボランチを任されたのは、私が観戦したあの試合だけだったということを、後にご両親から教えていただいたときは、驚きを隠せなかった。

2019年12月8日。

流経大柏33期生のLASTDAYは、新しい八木滉史へと成長するスタートの日となる。

どんなに悔しくても、嬉しくても感情を乱さず、立派に流経大柏の主将として振る舞う。あのときあどけなさが残る42番の少年は、背番号10の立派な背中で仲間を引っ張る闘将に成長した。

もうしばらく、君の背中を追いかけていこう。
ありがとう 闘将 八木滉史。

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