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握られた拳

プロローグ

この記事は千葉県を制したときにアップしようと温めていた。自身のなかで、どのような記事を、どのタイミングでアップするかということは、ほとんど考えたことはない。
しかし、今回は千葉県制覇時にアップし、全国へ向けての奮起に繋がればという想いを抱いていたし、もちろん制覇して欲しいという願いも込めていた。

勝負は“結果が全て”だ。これは、それまでの過程を否定するという意味ではない。だからこそ、勝利の歓喜と敗北の悲哀という表裏一体の現実、特に敗北という現実は、ピッチで闘う選手、一緒に苦楽を共にした仲間、スタッフ、家族・・・様々な人たちに、突きつけられるのだと思う。

敗れたその日のSNSや検索エンジンの見出し、遅れてあがってくる試合ハイライトの動画・・・どれをとっても酷で、勝利したチームへのリスペクトを忘れ、怒りさえ込み上げてくる時もある。

何度も伝えてきたが、一番悔しい想いをしたのは、選手・仲間・家族・スタッフ・関係者の皆様である。

それでも、どうしても書き綴りたい想いがある。どうか、最後までお付き合い願いたい。

「負け」を受け入れる

インターハイ千葉県予選の決勝で、最大のライバル市立船橋に敗れ、夏の扉を開くことは叶わなかった。輪番開催が続けられてきたインターハイだが、サッカー競技は令和6年度より、福島県のJ-VILLAGEにおける固定開催に変更される。ちなみに、令和5年度の頂点に立ったのは、茨城県代表である明秀日立高校。

酷暑のなかでの試合や雨中の試合など様々な条件を含みつつ、勝ち続けることの難しさと、その裏にある敗北。負けから学ぶことの大きさ、「敗者の美学」を決して忘れてはならない。ただ、美学や美談などで負けることを“美化し過ぎる”ことへの懸念もある。

負けた原因を徹底的に探究することはあっても、勝った要因を徹底的に探究することってどれぐらいあるのだろうか。飽くなき勝利への想いとは、勝利から得られる学びの大きさとは、いかほどのものなのか。

37期生から遡ること7年。
30期生は勝利を手繰り寄せることに苦しんでいた。内容は決して悪くない。しかし、あとちょっとのところが、何なのか、なぜ勝てないのか苦しんでいた。
第1節 青森山田 0-3●
第2節 FC東京    1-2●
第3節 清        水    0-1●
第4節 大        宮    1-2●
第5節 横浜FM      2-3●
第6節 鹿        島 2-3●
第7節    新        潟    2-2△
第8節       柏       1-0○

開幕戦の青森山田に0-3で敗れて以降、1点差で落とした試合は5試合連続。第5節はアディッショナルタイム、第6節は80分過ぎて2失点。ようやく勝点1を積み重ねた第7節も80分過ぎて追いつかれてしまった展開だった。

関大和30期生主将(坂戸ディプロマッツー流経大)は、当時を回顧し、チーム全体がメンタル的に非常に厳しい状況にあったことを話していた。ようやく第8節の柏ダービーを、自身のスーパーミドルのゴールで勝利に導き初勝利をあげる。

浮上のきっかけはあったのだが・・・。
第5節が終了し、インターハイの予選が始まると、決勝で最大のライバルである市立船橋との千葉クラシコを延長戦の末1-0で破り、千葉県夏の陣を制した。その勢いのまま、再開したプレミアリーグ第6節を迎えるも、逆転負けをきっしたのである。さらに、柏ダービーの翌週、シーズン2度目の千葉クラシコをプレミアリーグで迎えた。結果は0-1で敗れ、リベンジを果たされ返り討ちを受ける形となってしまった。

広島で開催された全国インターハイ、決勝戦まで勝ち進んだ。日本一まであと1つ。
しかし、ここで、またも行く手を阻んだのは市立船橋。全国インターハイの決勝戦における千葉クラシコに0-1で敗れ、準優勝に終わった。

そしてこのシーズン、流経大柏にとって忘れることのできない、そして忘れてはならない現実を突きつけられることとなる。

高円宮プレミアリーグEASTからの初降格。

歴戦の勇士たちが守り続け、継承してきた次世代への1つのバトンは、次の世代へとどかなかった。

負けを受け入れるということは、勝利への過程であることを信じてやまなかった。

兆し、そして

2023年高円宮プレミアリーグEAST
インターハイ出場を逃すも、夏の酷暑を乗り越えた彼らが、再開するプレミアリーグのピッチに立った。
9月3日前橋育英高崎G。まだまだ残暑が厳しいなか、積極的なプレーが随所に見られ、流経のボールを保持し、攻め込む時間が続く。前半に先制点を奪い1-0で折り返し、2点目が鍵となる後半、道白優斗君(名古屋グランパスエイトU-15)がゴールを奪い2‐0と突き放す。しかし、直後に失点し1点差に詰め寄られると、徐々に前橋育英ペースとなり、84分に2‐2に同点、振り出しに戻されてしまった。
明らかに勝点3を奪えた試合が、一気に勝点1となってしまった・・・・。

この試合以降、3連敗を喫してしまう。
夏の中断期間前に大宮アルディージャU-18に敗れている試合を含めると、5試合で1分け4敗。普通であれば、かなり厳しい状況に立たされているが、
川崎フロンターレU-18、尚志、青森山田との上位対決で見せた試合展開は、決して下を向くことのない、収穫のある試合だった。
尚志戦は、2失点後、前半の残り10分から後半全て、ほぼ流経の時間だったと言って過言ではない。
圧巻は青森山田戦。こちらも、結果的に2‐0から3点奪われ逆転負けとなるが、2‐0までの時間は、今季1番の試合展開を見せつけてくれたと思う。
これまで、逆転されて悔しい思いを沢山経験してきたが、この青森山田戦に限っては、悔しい思いと同じぐらい、湧き上がってくる君たちの底力に奮い立たされ、“兆し”が見えてきた感覚になっていた。

迎えた第16節。昌平戦(AWAY)。
この試合が1つの転換になる。引き分けではならない、絶対に勝点3を奪う。

試合開始に遅れたが、まだ、得点の動きはなかった。
時折訪れる、キレのある昌平の攻撃に対応しながら、じわじわとペースを掴んでいく。そして31分、右からの鋭いセンターリングが昌平のオウンゴールを誘発し先制。1‐0とリードして折り返す。
欲しかった追加点は、この日スタメンに抜擢されたDF奈須琉世君(柏レイソルA.A.TOR’82)のオーバーラップから生まれた。
その後、1点返されるも、83分飯浜空風君(ジェファFC)が追加点を奪い、とどめを刺した。試合終了。

握られた拳

試合が終わり選手達が挨拶に来た。
この時ゲームキャプテンをしていたのは、高橋力也君(ジェファFC)だ。

彼とはFC東京(AWAY)戦に話す機会があった。
その後、何度か話した時に「負けちゃいました・・・」。悔しさを素直に表現し、その時々の想いを吐露してくれる。

私はそれに対し「まだまだ大丈夫」と、それぐらいしか言えず、気の利いたモチベーションがあがるような言葉を伝えたいとは思いつつ、全く出てこない。そんなことが続いた3連敗後に迎えた昌平戦だった。

私が観戦していた場所が端のほうだったこともあり、気づいてくれるかどうかはわからなかったが、欲しかった勝点3に精一杯の拍手を贈らせてもらった。

この時、ゲームキャプテンだった高橋力也君は、一番遠くにいたが私に気づいてくれたような感じがした。その時彼は私のほうへ、拳を握って向けてくれたような気がした。
すみません、気がしたという推測です笑

握られた拳

そこには多くを語らずとも、やってやったぞ!という強い想いがあったはずだ。
このあとの文章は、本来なら選手権のことを書き綴るはずだったが、あの時のあの姿を文章に変えることは、とても困難だった。

そして、今日12月3日は37期生のラストマッチ。お正月、時之栖から追いかけたこの世代とも最後の試合となる。夏真っ盛りの和倉も行った。選手権が少しずつ近づいてきた感覚もあった。

インターハイも選手権も、どちらの扉も開くことはできなかったが、君達は君達の歴史を、流経大柏という轍に刻んだ。そして今日、最後にしっかりと、それぞれのカテゴリーが集大成を刻む。

迷いに迷って、千葉クラシコのカードを選ばせてもらった。BEASTは最終節、ビリビリとした緊張感のなかではあるが、流経らしさを出して欲しい。CRESTもラスト暴れて欲しい。そしてTOP。どうか、試合後の挨拶で手を高々とあげて欲しい。

握られた拳で。



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