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I will rock ...



『コロナめ、やれるもんならやってみろ』

『私は外に出ないぞ…』


年明けの挨拶もそこそこに、おもむろに呟いた。


これは出かけたくなくても外出しなければならず、むしろ生きるために必要な営みをこなしている方々や、若者にことさら自制心を求める圧にうんざりしている方を煽る言葉ではない。


対外的な意味ではなく自分自身へ喝を入れるため言葉にしてみた。

未知の新型ウイルスに大口を叩いておきながらあっさりと屈服してしまわないように。


そもそも基礎疾患のある私はヨボヨボな立場でありまずは自衛が最優先と思っている。

その結果医療関係者や各位の負担が減るのなら幸いだ。


とはいえ私の病状は日常生活を普通に送るには特段の支障はなく、コロナ禍でなくとも常に健康管理に気を払う必要がある程度であるので(体力的にも臓器の仕組み的にも無理が効かないというところだろうか)心理的には活きのいい若者のつもりであったりする。


大切な人が亡くなっても駆け付けられない状況は依然として続いているのに、うっかりカラオケに行きたいなんて欲望が降りてきてしまったら…


私は自身の軽薄さを知っている。

それを殲滅するため、ステイホームとを繋ぎ止めるように楽しいグッズをちまちまと集めたりしている。


カラオケに行けないならいつもは使わないような贅沢な入浴剤でお昼からまったりと長湯をし鼻歌を口ずさむのも一興だし、時を忘れるような1000ピースのパズルも買ってある。


上質な紅茶の茶葉、愛らしいクッキー、浪漫を感じる金平糖、宝石のようなショコラ。

梅酒や日本酒、ワイン。

撮り溜めたアニメにお奨めされたNetflixのドラマ。


世の中には素晴らしいものが溢れていて、これらは自分へ贈る『We Will Rock You』なマインドなのだ。

試合中、味方を鼓舞し、相手を挑発するように響くあのリズム。

原曲の意味はさておき、そのリズムは私の中の闘志が沸き立つ。



コロナ禍は国民が一致団結しなければ乗り越えるのは不可能だろう。

そんなことは周知の事実。


私がより怖れているのはそのことで健全な楽しみが抑圧されてしまったり、安易な邪推で疑心暗鬼になって空気が倦んでしまうことだ。


『みんなで』乗り越えなければならないことは明白だが、その先の個人の在り方まで誰がジャッジする権利があるだろう。


私はこんなとき他人の道徳心や倫理観を疑うよりも自身の中で親切な真心を組み立てるほうが楽でいられる。


この今、外出しなければならないなんてきっとよほどの事情があるに違いないと思う。


また不要不急でなくとも、外に出ることでしか得られない癒やしや、その人を生かすために必要なものがあるのだろうと思い馳せる。


精神を蝕んでまで頑なになるよりも、あらゆる予防手段を徹底することを前提に─わざわざこの言葉を添えなければならないことすら残念だ─清い空気を吸おうとすることのほうがずっとより多くの命が長らえるのかも知れない。


普通に生きることでさえ難しい現在で、誰かや何かを疑ってこれ以上息苦しくなりたくない。


だから私は『We』ではなく個人として、自分も他人も信じ抜いて、軽やかにこの局面を乗り越えていきたいと試みる。


できれば平時もこんな個人主義でありたいのだけど。



伝えたい人へ言葉を届けるのは想定外なほど難しく、さらには黙っていることですら何かの意味を持たせてしまう。




どうかみなさん、ご自愛ください。

私が外に出ないことを楽しむように楽しんで。

あなたが纏うその空気が健やかであるように願っています。









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