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あるカーデザイナーのクルマ選び040

このアコードの全体デザイン監修は、既に亡くなられたミスターアコードと呼ばれたOさんで、私が尊敬するカーデザイナーの一人でした。

最後の最後まで緻密に造形を練り上げていくその執念は、私には真似ができませんでした。

正直、この方の下で働いていた時には、そこまでやらなくても、と思ったことがありましたが、やると確実に良くなるので、私には越えられない存在でした。

2回目にアメリカアコードを任された時に、実質的にこの師匠と社内コンペで戦うような形となり、私の提案するデザインが採用されました。

その時に「後は任したぞ!」と握手をして頂いた時には、周りに人がたくさんいた手前、涙を堪えるのに必死だったのを今でも覚えていますし、一生忘れることはないと思います。

その方が、日本で最後まで監修された最後のアコードと言ってよいアコードでもありました。

自分の車として所有し、最初に書いたように、自分で手洗い洗車をするたびに、磨き上げていったであろう造形の隅々が秀逸でした。

これを匠の技というのだろうなとあらためて感じさせてもらえた車でもありました。

その面質もこのシルバーというボディ色だと良くわかるのです。

ちなみに、自動車の外観デザインを作り上げていく際にボリューム感などキャラクターラインと呼ばれるボディの折り目の強弱を確かめるために、シルバーのフィルムを貼ります。

私のこのアコードのサテンシルバーはそのチェックに使うフィルムのシルバーに近い色味で、尚更、造形の技を普段から、いろんな環境で見ることができました。

車の外観の面は、その車が置かれる場所や季節、時間による太陽の当たり方でいろんな表情を醸し出します。

アメリカの周りが開けた環境でカッコ良く見えるシルエットやヨーロッパの石畳や石壁が映り込んだ時に味わいを感じる面など、車が魅力的に見える状況はいろいろあります。

皆さんも、もし、機会があれば、車を停めた時にちょっと離れてその車を眺めて、どんなつもりでこの車がデザインされたのかなぁと思いを巡らせてみてください。

デザイナーやモデラーたちの想いを垣間見ることができるかもしれません。

11th my carは私専用の”ビジネス エクスプレス セダン”とも言える仕事専用車でした。


つづく

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