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「じゃ最後、俺も行く!」

2021年12月12日、日曜の夜がそろそろ終わるかとしている頃、まだまだ終わってたまるものかという連中が、日本から遥か遠くのアブダビにいました。

その中には、私の仕事の盟友と言わせてもらいたい人もおり、多くの仲間たちと闘っていました。

私は、何とか応援する気持ちを彼に伝えたいと思っていました。今の時代、簡単にメッセージを送る手段はあります。

今年の夏、私が会社を去る時に、メールでやりとりし、「シーズンが終わったら、ゆっくり飲もう!」と闘いの中からメッセージをくれてもいました。

しかし、今、闘いが最高潮に盛り上がる中、世界中からの期待のこもったメッセージが山ほど届いていることは予想できますし、それに目を通すより、目の前の闘いに集中しなくてはならない状況だということも推察できました。

そして、私としても、そんなメッセージに自分の想いを込めることができる自信もありませんでした。

そんな時に、日本でレースを盛り上げている、昔の職場の後輩の「じゃ、最後、行ってきます!」のメッセージが飛び込んできました。

彼に「最後まで頼む!」とメッセージを送った後、私の気持ちのザワザワが止まらなくなりました。

「俺も行く」

そう、後輩に返信して、慌てて支度をし、聖地青山に向かいました。

彼の地で闘う盟友に、言葉を伝えるのでなく、気持ちを伝えなければいけない!それに気づかせてくれたのが、あの「じゃ、最後、行ってきます!」でした。

青山に到着した時には、レースも中盤を過ぎ、後半に差し掛かり、会場のムードも、「何とか最後まで、、」でした。

私も正直そういう気持ちで、最後は自分を納得させられる準備に入るかと考えていました。

でも、ここ青山まで来たのには何かある。
神様への祈りも通じるかもしれない。
私は、ふとそう思い、天井を見上げて、

「彼と彼の仲間に勝利を!」
と心の中で叫びました。

そして、その時に自分の着ていた服の事に気づきました。

白いデニムにアイボリーのニットセーター、その上にコートを羽織って、家を飛び出して来ていました。たまたま出し易いところにあって目についたその上下を身につけ出て来たのですが、

それは見るからに、ホンダチャンピオンシップホワイトでした。

急いで、コートを脱ぎ、そのホンダホワイトの姿で、もう一度、レースの神様にお願いしました。

その直後、コースで1台のマシンがクラッシュしている映像が大スクリーンに映し出され、ペースカーが投入されました。

トップとの差が縮まられないホンダマシンはペースダウンさせられたトップのすぐ後ろに近づけることができました。

でも、事故車の処理に時間がかかり、レースが完結するまで残り数周、しかも周回遅れのマシンが5台もトップとの間に挟まれている。これは常識的に論理的に科学的に考えても、それを追い抜くことは不可能だと誰もが思いました。

そして、あの最後の一周。

奇跡が!

みんなの想いが神様に届いた瞬間でした!
ホンダのラストランの最後のレースの最終ラップにこんなことが起きるなんて!

こんなこと、神様以外、誰にもできない。
いや、違うな、、

奇跡は多くの想いがないと起こらないんだ!
その瞬間、私は確信できました。

同時に、彼の凄さを実感しました。
多くのメンバーをチームにし、応援する人たちをもチームにし、そして日本中をチームにし、

そし何より、想いを一つにした彼の凄さこそ、チャンピオンだと私は思います。

本当に本当におめでとうマサシ!
ありがとうホンダ。

2021年奇跡の日
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Chinpan S

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