見出し画像

昨年6月のこと

1年前に2週間ほど会社を休んだことがあった。6月の最初の頃だったはず。どこか怪我をした訳ではなく、朝起きて着替えて散歩をしていて、そろそろ帰って仕事の準備をしようかと思ったのだが、身体とは反対に心がそうならず、結局その日の午前中に心療内科の診察を受けて、しばらく休むことになったのだ。

新型コロナウィルスの影響で在宅勤務が始まり、部屋で一人で仕事をこなし、日によっては誰とも話さず、悩ましい事柄があっても、どんな状況か見えない同僚に電話することも憚られるため、一人で何とかしているうちに、少しずつ気持ちが萎えていっている状況であった。さらに支給されたスマートフォンは、普段なら会社にいる間しか仕事のことを考えないで良かった自分を一日中仕事に縛りつけるようにしていた。仕事と家の境目がなくなり、難しい仕事があってもリラックスできていたはずの自分の部屋にまで、仕事が侵食してきた感覚があった。

そんな変化を少しずつ感じていた中で、ある朝どうしても仕事ができなくなってしまった。医者が言うには鬱の初期症状で、休めるなら仕事を休んだ方が良いと。怪我でもしていれば、痛いという明らかな症状を自分で感じられるのだが、この手の症状は問診や診断にいかに答えるか次第で医者の受け止めも変わってしまうという気がして、診断結果をしっかりと受け止められない、客観的な自分もいた。つまり仕事をしばらく休みたいだけなんじゃないか、辛い辛いと言えばこのような診断結果になることを見越しているんじゃないか、と。ただ、眠りが浅くなり、何度も何度も夜中に起きる日も続いていて、明らかに自分の身体に変化が起こっている事実もあり、もう一人の自分の声は聞かず、しばらく休みをもらうことにした。

休み中は、音が耳に入ることと目から何かの情報が入ることがストレスだったので、テレビも音楽もスマートフォンも遠ざけて、廊下に座り読書をしていた他は、ずっと飼っている2匹の猫と過ごした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?