さっちゃんのセクシーカレー

大森靖子のさっちゃんのセクシーカレーという曲を知っているだろうか。食戟のソーマというアニメのエンディングテーマ曲にも使用された2015年にマジックミラーという曲と両A面シングルとして発売された曲だ。

私はこの曲を聴いていると、ひとりの女の子のことを必ず思い浮かべてしまう。

その子の名前の頭文字も"さ"であるため、ここではさっちゃんと呼ばせてもらう。

さっちゃんとは中学3年生の時に同じクラスになった。出席番号が前後だったので、1番最初の席が前後になり、そこから仲良くなった。さっちゃんはわたしと同じようにひねくれていて、わたしと同じように家族と上手くいっていなくて、わたしと同じように自分なりの哲学が自分の中にあって、わたしと違ってものすごく美人だった。

ものすごく似ている部分があったから私たちはものすごく仲良くなった。言葉ではうまく説明出来ないような気持ち悪さを感じた時、さっちゃんの方を見るとさっちゃんもわたしの方を見ていた。何となくあったことを伝えればそれに対してどう思っているのかお互いにわかったし、分かっていることを分かっていた。そんな人は今まで出会ったことがなくて、ほとんど常に一緒にいた。

わたしはさっちゃんのことが一番大好きだったし、一番幸せになってほしいと思っていたけど、わたしはさっちゃんに一番に負けたくなかった。でもわたしはいつもさっちゃんに負けているような気がしていた。わたしと違って美人だから、とかそんな単純な問題ではない。ものすごく大好きだなと思う時もあれば、世界一憎らしいと感じてしまうこともあった。それが嬉しくて悲しかった。

高校生になり、私たちは別の高校へと進んだ。さっちゃんには彼氏が出来た。中学の時もいたけど、その人とは別れて付き合い始めたのだ。さっちゃんはすごくその人のことが好きだけど、その人のことでいつも悩まされていた。わたしは、さっちゃんの悩んでるところとか、ワガママなところとか、少しずる賢くてたまに嘘をつくところとか、そんなところは彼氏にはわかんないだろうし、私にしか分かんないだろうなと思っていた。そんなことを思っていたからと言って、別に私がさっちゃんに恋愛感情を抱いていた訳では無い。わたしにとって特別なさっちゃんがぽっと出の彼氏なんかに悩まされて苦しんで変わっていく姿が悔しくて仕方なかったのだ。

さっちゃんは今は既に就職していて、わたしは今大学生だから、会うことは減ったし連絡を取ることも減った。さっちゃんがまさか普通に就職する日が来るなんて思ってもみなかった。わたしの中には常にさっちゃんがいるし、さっちゃんのセクシーカレーを聞くとあの頃さっちゃんに対して抱いていた感情が甦ってくるのだ。

成長しないで さっちゃん
茶髪にしないで さっちゃん
彼氏作らないで さっちゃん
最強でいてよ 僕の特別

大森靖子/さっちゃんのセクシーカレー

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