h30改正と遺言執行者の義務と適用対象と時点

遺言執行者の権限明確化
・遺言内容通知義務・遺言執行者の権利義務(民1007Ⅱ、民1012)施行日前開始相続でも、施行日後執行者となった者に適用する(附則8Ⅰ)。
・特定財産承継遺言に関する遺言執行(民1014Ⅱ~Ⅳ
)施行日前にされた特定財産承継遺言の遺言執行者に適用せず(附則8Ⅱ)。
・遺言執行者の復任権(民1016)施行日前遺言の遺言執行者の復任権の制限は従前の例(附則8Ⅲ)。



相続法改正前における遺言執行者の立場

従来、遺言執行者は「相続人の代理人」という立場でした。そのため、遺言執行者は相続人の代わりに預貯金を払い戻したり寄付行為を行ったりすることができました。

しかし、遺言執行者と相続人の利害が対立することもあります。たとえば遺言内容が特定の相続人にとって不利な場合に、その相続人は遺言内容を実現しようとする遺言執行者に対し反感を抱くことがあります。

確かに、法律上は「相続人の代理人」と規定されていますので、相続人から「なぜ相続人である私の代理人でもあるはずなのに、私の意思に反する行動をするのか」と遺言執行者が責められて、トラブルになってしまうケースも発生していました。

また改正前相続法では、遺言執行者として指定された人が実際に就任するかどうかについて、遺言執行者から相続人に対し通知する義務が明記されておらず、あくまで相続人側から就任するかどうかを催告できるとだけ規定されていました。

相続法改正後における遺言執行者の立場

改正相続法では、遺言執行者に「遺言の内容を実現するために相続財産の管理その他の遺言執行に必要な一切の行為」をできる権利義務が認められています(改正後民法1012条1項)。

つまり、これまでは「相続人の代理人」という立場でしかなかったところ独立して遺言内容を実現する権利が認められるようになった、ということができます。

これにより、相続人が遺言執行者に対して「相続人の代理人なのに、相続人の意に反することをするのはおかしいのではないか?」という理屈は立たないことになります。

また改正相続法では、遺言執行者が就任する場合には「遅滞なく任務を開始し相続人へと遺言内容を告げなければならない」と定められました(改正後民法1007条1項)。この通知義務により、相続人が遺言執行者の存在を知る手段が確保されたことになります。

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