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大人が全身全霊をかけて生み出すビジネスカンファレンス「あすか会議」の舞台裏~あすか委員インタビュー①

グロービス経営大学院が主催し、1500名程度のビジネスパーソンが参加する合宿形式の学び場「 あすか会議」。毎年熱量の高いイベントが開かれる中で、その裏方を担う「学生企画委員(あすか委員)」たちはどんな活動をして、どんな経験を得ているのでしょうか?今回は、学生企画委員経験者3名に話を聞きました。(聞き手=グロービス あすか会議事務局)

大人が本気で熱くなる「青春の場」を求めて


―入学前から『あすか会議』のことはご存知でしたか?

ブランスクム文葉(2019年学生企画委員会 委員長):はい。そもそもグロービス経営大学院を選んだ大きな理由は『あすか会議』があったから。学生が主体となって大きなイベントをする大学院は他にありませんから。入学前から虎視眈々と『あすか委員』の募集スタートを狙っていました。

山本健太(2019年学生企画委員会リーダーズディスカッション担当メンバー):単科生(※)のときに『あすか会議』のポスターや旗を見ました。その旗に書かれている参加者の熱い想いが込められた無数の寄せ書きを見たときに、人の心を熱く動かす何かとんでもないことが起きている、と感じました。

※「単科生」とは:グロービス経営大学院に入学する前に1科目3カ月から学ぶ受講生のこと。

西澤祐輔(2020年学生企画委員会 委員長):私も単科生のときから評判は聞いていましたが、初年度はJBCC(日本ビジネススクール・ケースコンペティション)に集中するため、あすか会議は学生企画委員ではなくイチ参加者、と思っていました。

―文葉さんと山本さんは、入学した初年度に委員へ応募されましたね。

ブランスクム:『あすか会議』も入学の理由の一つでしたから。

山本:単科生時代のクラスメイトがあすか委員をやっていたんですが、その方がFacebookに、委員同士でお揃いのポロシャツを着て円陣を組んでいる写真をアップしていたんです。それがなんか羨ましく感じて。

ブランスクム:その円陣の中に私がいたはず(笑)。

山本:そうそう!当時はまだ文葉さんのことを知らなかったけれど、私からすると何か凄そうだなという雰囲気が伝わってきました。

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―西澤さんは、2年目に応募されました。「イチ参加者から、やっぱり学生企画委員をやろう」と思った気持ちの変化は?

西澤:『あすか会議』に初めて参加したときに、ものすごい衝撃を受けて。閉会式で、委員長の文葉さんの「登壇者と私たちの差は、行動したか否かです」というメッセージを聞き、自分自身グロービスでの勉強はかなり頑張っていたけど、志に向けた具体的な行動が足りていないのではないか、と強く感じました。

ブランスクム:実はあすか会議が終わった後の10月、クラスを終えて帰る時に、西澤さんに突然声をかけられたんですよ。「名古屋校の西澤です。ちょっとお話よろしいですか」って。すごい熱量の高い人が突然現れた、と思いました。

―西澤さんはなぜ、委員長を希望したんですか?

西澤:2019年のあすか会議を通じて自分の価値観を見つめたとき、「世のため人のために日々を没頭して一日一日を生き切る。それが自分の人生における幸せである」と感じました。それを体現できる人間になるために、「2020年は人のために尽くしきる1年にする」と決めました。こういうことに気づかせてくれたあすか会議とグロービスへの感謝、グロービスの仲間やあすか委員の仲間への感謝をカタチにしたい、というのが学生企画委員に参加しようと思った大きな動機です。

委員長を目指したのは、能力開発も目的の一つでした。約100人ものメンバーのマネジメントは未知でしたが、頭の中にイメージはあったのでトライしてみたかった。今後、経営層を目指すにあたり、高い熱量をもち、多様性に富んだ学生企画委員でのリーダー経験は、何物にも代えがたい経験になると思っていました。この経験があれば、いざ実務でやるとなったときに、再現性をもってトライできるので、今後のキャリアに繋がる、と。

「あすか委員」は100人規模のベンチャー企業!?

―では、委員長経験者のお二人から、あすか委員の役割を教えてください。

西澤:あすか会議には「リーダーズディスカッション(※)」「ナイトセッション(※)」など学生が企画する様々なセッションがあります。委員は、企画ごとに分かれて中身を練り込み、参加者の学びを最大化すべく、登壇者や講師とのディスカッションテーマを決めます。他にはマーケティングを担当するチーム、委員間のコミュニケーションを円滑にする役割を担うチームもあります。MBAでの学びを活かして、学生にあすか会議の魅力を伝えることや、学生企画委員の組織力を最大化することなどがそれぞれのミッションです。

※「リーダーズディスカッション」とは:卒業後にリーダーとして「創造と変革」に挑戦し続ける卒業生を、登壇者として迎えるディスカッション企画。参加者は登壇者の卒業後の志・経験・思考に触れ、また登壇者も参加者の志に触れて、双方向の志に炎を灯す場を目指す。全体で約60~70個のテーマが立ち上がり、テーマごとに約20人のメンバーが集まる。

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※「ナイトセッション」とは:少人数グループに分かれ、グロービス講師や分科会登壇者を囲んで、肩の力を抜きながら深く本音で語り合う場。授業や懇親会ではなかなか聞くことのできない経験談や、今注目していること、これから成し遂げようとしていること、などの熱い想いや本音トークを語り合うことで、明日からの新たな一歩につなげていく。

ブランスクム
:まさに「あすか委員」の発足は、ひとつのベンチャー企業を立ち上げるようなものです。組織設計に始まり、誰がマネジメントをして、誰が実行をして、どういう横軸を刺して運営するのかまで全部決めていく。起業するときに考える「ミッション・ビジョン・バリュー」と、委員の心をひとつにするまでの過程もすべて設計できるのは、学生企画委員の一番の醍醐味だと思います。

―委員長の役割は?

ブランスクム:役割として一番意識していたことは、参加者・登壇者、あすか委員、グロービスの三方良しの状態にすること。「あすか会議がそれぞれの成長を加速させる起爆剤になるというのがあすか会議の成功だ」と定義すると、委員長であっても私の意見だけを押し通すような組織にはしたくない。委員それぞれ個人の思いを実現するにはどうしたらいいか、そのためにどういう組織をつくるべきかを考えました。

西澤:私は、「あさって会議(※)」の価値を最大化するためには、一緒に活動する学生企画委員の仲間の幸福を最大化することがカギとなる、と考えていました。幸福って色々あると思うのですが、この文脈で言うと、学生企画委員一人ひとりが、この活動を誇りに思い、楽しく感じ、成長と充実感に満たされ、そして没頭できることが何よりも重要であり、そうすれば結果として、あすか会議、あさって会議がいいものになる。それを原点としました。

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※「あさって会議」とは:2020年は、新型コロナ感染拡大の影響で「あすか会議」はオンラインで実施する「あさって会議」に変更となった。

―具体的にはどんなことをされましたか?

西澤:まずは、この価値観を組織に植え付けるための言葉づくりでした。いろんな投げかけをする中で、みんなが一番しっくりきたのが「学生企画委員は家族だよ」という言葉。自然にお互いを思い合い、お互いの成長を喜び、チャレンジを応援できるような関係。「心理的安全性」とよく言いますが、心理的安全性すらいらない、愛情あふれた集団にしよう、と。

メンバー全員、一人ひとりにそう思ってほしかったので、委員全員と1on1をやりました。「この人にとっての幸せは何?」というアンテナを立てながら、「僕たちは家族だよ」という共通の価値観を伝えつつ、「何をチャレンジするか?」「どんな成長をしたいか?」という対話を丁寧に繰り返していきました。

優秀な副委員長達に助けられながら、結果として仲間に愛情をもって接し合える組織になったと思っています。今も、当たり前のようにみんな連絡を取り合い、お互いが大好きなコミュニティになっています。今振り返ってみると、「みんなにとって、この、今ある『当たり前』が、『当たり前』であること。」これをつくることこそが、僕たち委員長・副委員長の役割だったのかな、と思います。

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ブランスクム:私はなるべくみんなが「心から」コミットできる、役割を担って欲しかったので、役割を決めるアンケートは第五希望まで取りましたが、実際は第三希望までにおさまるようにチーム編成をしました。私自身「委員長」という役割が大きなチャレンジだったので、みんなにも背伸びをしたチャレンジをしてほしかったのです。

このプロセスの中で、新しいチームやスタイルが生まれました。たとえば、前年にはなかった「全体コミュニケーション(以下、コミュ)」というチームを新設しました。それまでは全体オペレーション(以下、オペ)チームが、細部に渡りオペレーションを構築し、さらに委員の潤滑油となる役割も担っていましたが、オペの役割から「委員同士のコミュニケーション」を切り分け、それぞれのチームにリーダーを配置することで、オペチームの負荷を下げることができました。コミュチームが、みんなの得意を活かして活動しやすい環境を作ってくれたことで、最後までみんなでやり切る、走りきれる状態になり、あすか委員の結束力がより強くなったと感じています。

―委員の立場である山本さんにもぜひ。まず、委員長のリーダーシップに対してはどう感じていましたか?

山本:私は2019年の委員でした。その年の委員長である文葉さんがみんなの前でスピーチする様子を見て、文葉さんの「あすか会議を絶対に成功させる!」という強い思いを感じ取りました。「文葉さんが成功させたいんだったら、微力だけれどそこに力添えしたい」と強く思ったことを今でも覚えています。

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ブランスクム:すごく嬉しいです。

山本:おそらく他の学生企画委員にも同じ気持ちがあったんだろうと思います。当時の2019年入学の人は、4月は入学したばかりで状況もよくわからない中、文葉さんのスピーチや行動で勇気付けられました。自分たちがどの方向を目指したらいいかが明確になったのだと思います。あと、文葉さんは自身のFacebookページで各企画の様子を定期的に発信してくれていました。企画に関わっているメンバーをタグ付けした上で投稿していて、自分のことを見てくれているんだと感じることができました。自分の活動がFacebookを通じてグロービスの仲間に伝わるのは嬉しく、やりがいにも繋がりました。

ブランスクム:実はそこに関しては、「あすか委員のそれぞれにスポットを当てたい」という思いから少し戦略的にやっていました(笑)。委員長や副委員長は自然と注目されますが、新入生はそうはいかず。まだまだ学校に慣れようとしている段階で、自分をさらけ出してアピールするのは難しいですよね。だから、メンバーの頑張りを委員長として代わりにアピールしたかった。「あすか委員全体」というよりも、各個人にスポットを当て、周りから「あの人もあすか委員で頑張っているんだ」と認識されれば、本人も意欲高く頑張ってくれるだろうという思いがありました。

―委員長のリーダーシップに共鳴して、委員があすか会議にコミットし、成功に導いていったのですね。次回は、委員である山本さんの仕事から、詳しく聞いていきたいと思います。

<プロフィール>
●ブランスクム文葉/2019年学生企画委員会 委員長
大学中退後、オリエンタルランドに就職。その後、2社の転職で経営管理部門のサポート業務、CFO秘書、ファイナンシャル・アドバイザーを経験。グロービスの繋がりから、株式会社ゼロワンブースターに転職。スタートアップや大企業・支援機関とのネットワークを活かしたコミュニティ創りに携わっている。

●山本健太/2019年学生企画委員会 リーダーズディスカッションの担当メンバー
ITベンチャーにてコーポレート部門を1から立ち上げ、現在は、CFO・COOとして財務・労務・税務を担当する約10人のメンバーを統括する。高校生の頃から沖縄が好きで、現在は、「沖縄をより良くするという志をもつ起業家」を一人でも多く生み出し、沖縄の社会・経済課題を解決するべくシンポジウムを行うなどの活動も行っている。

●西澤祐輔/2020年学生企画委員会 委員長
大手自動車株式会社勤務。エンジニアとして入社し、人事を経た後、現在はMaaS事業を創造する部署にて、次世代のモビリティ企画や広報、投資管理を担当するグループのマネージャーに従事。急遽「あすか会議」中止の判断を受け、グロービス初の大規模オンラインカンファレンス「あさって会議」への再構築を成功へ導いた。