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熱戦の記憶 ~あの名馬を追いかけて~ スプリンターズS編 (2003年デュランダル)



五分沙汰していますこのコーナー。

週末のG1の過去を振り返る番外編です。
今回から題名も付けました。

おさらいすると、これは完全に僕の趣味です(笑)
競馬が、馬が大好きで仕方ない僕が、週末に行われるG1を対象に、
独断と偏見で一番好きなレースの年を回顧しています。

今回はデュランダルが勝った2003年を回顧していきます。

春先からスプリンターズSはデュランダルと決めていました。
それでも強いて他を挙げるならサクラバクシンオーのラストラン、後は快速カルストンライトオの逃亡劇も好きです。
後はとても悲しいですがダイイチルビーの1991年も印象に残っています。


それでもやっぱりデュランダルです。
「聖剣」の一振りが絶対女王を一閃した2003年を振り返ります。


2003年のスプリンターズS。
1番人気はこのレースがラストランとなる「女王」ビリーヴ。
本格化こそ遅かったですが、2002年の夏に覚醒してから怒涛の4連勝でスプリンターズSを制覇。破竹の勢いで短距離女王に輝くと、翌年の高松宮記念も制覇。年は違えど、春秋スプリント制覇を成し遂げた紛れもない女王。
連対は全て6ハロン戦と、極端なまでにスピードに特化した快速牝馬でした。
手綱を取るのは笠松から鳴り物入りで中央に殴り込みをかけてきた安藤勝己J。
この年、2003年に中央の免許を取得し、1か月足らずで高松宮記念制覇と腕は折り紙付きで、「アンカツを買っていれば間違いない」と言われるほど馬券においては信頼できる騎手でした。
春先は京王杯SC、安田記念と距離が長い中敗戦し、その後函館スプリントS、セントウルSと1着2着とし、満を持して臨んだラストラン。
その背景には国内スプリントG13連覇、ひいては真の春秋スプリントG1制覇という大偉業がかかった1戦でした。
単勝オッズは2.2倍。多くのファンが有終の美を飾ることを期待していました。

2番人気はアドマイヤマックス。
マイル、中距離と万能にこなし、この年の安田記念でも3着と健闘。
その後、セントウルSで6ハロン戦に挑み4着とし、迎えた本番では安田記念で3着の時の鞍上、武豊Jが手綱を取ることになり、2番人気まで押し上げられました。
この時の武豊Jもイケイケで、馬券としてはお世話になっていた方が多いと思いますし、人気の理由も頷けますね。
とはいってもここにはセントウルSで先着を許したテンシノキセキ、デュランダルよりも人気をしていて、完全なる「武豊人気」ではありました。
単勝オッズは5.1倍。

3番人気はレディブロンド。
今となってはディープインパクトの半姉にあたる馬ですが、彼女の競走馬としてのデビューはなんと5歳の6月。
背景には股関節に爆弾を抱えていたこと、そして、所属厩舎の藤沢和雄調教師の「馬最優先」の意向により、大事に大事に育てられてきてのデビューでした。
とはいえ、走りに確かな素質は感じていたようです。
そのデビュー戦はフルゲート割れをした1000万下(今で言う2勝クラス)。
出遅れながらも格上馬たちをシンガリ一気の豪脚一閃。
しかしながら、収得賞金が600万円と、自己条件は未だ500万下(1勝クラス)で、次走は500万下に出走するという不思議なローテ。当然楽勝し、中1週で1000万下を再び快勝。
そして、迎えた次走は「1000万下」。これは当時のJRAのルールで、年齢と収得賞金の関係が4歳夏から変わるルールがあり、レディブロンドは自己条件は「1000万下」という摩訶不思議な現象に。当然負けるわけもなく、返す刀で1600万下も制覇。
そして、「連闘」で迎えたのがこのスプリンターズS。
あまりにも異色のローテに、ファンも戸惑いましたが、ここまで全て6ハロン戦。
その末脚だけは確かでここでもという期待もあったことでしょう。
鞍上は柴田善臣J。1000万下で抑えきれない手応えで突き抜けた時の鞍上で、ここでも色気を感じていたことでしょう。
単勝オッズは5.7倍。

4番人気はテンシノキセキ。
確かな先行力を武器に、前哨戦のセントウルSを初コンビの横山典弘Jとともに勝利。
負かしたのはビリーヴで、当然ここでも期待が膨らみます。
鞍上も引き続き横山典弘Jで、枠順は1枠1番。
何かを感じさせる枠ですね。
単勝オッズは7.8倍でした。

そして5番人気はデュランダル。
デビュー後、順調に勝ち星を重ね、重賞にも出走しましたが、当時は重賞では足りない馬でした。
大敗した2003年の中山記念から空くこと6か月。セントウルSを迎えます。
ここでデュランダルの鞍上には池添謙一Jが抜擢されます。
レースは出遅れながらも直線は良い脚を見せて3着。テンシノキセキ、ビリーヴには及ばなかったものの、アドマイヤマックスを交わしての3着と価値のあるものです。
この時、池添Jはデュランダルの末脚に大きな可能性を感じたようで、当初は10月の1600m戦、ポートアイランドSに出走を予定していましたが、池添Jの進言でスプリンターズSに駒を進めることに。
テンシノキセキ、ビリーヴに届かなかったこと、そして追込脚質も相まって下馬評は半信半疑。
5番人気、8.1倍の単勝オッズで本番を迎えるのでした。

6番人気以下は26倍以上と、上位人気5頭が伯仲するような下馬評で、どのような戦いが繰り広げられるか注目の1戦です。


そしてスプリンターズSがスタート。
好スタートは外からナムラマイカ。出遅れたのはここでもデュランダルでした。
ビリーヴも好スタートを切りますが、内からテンシノキセキ、ショウナンタイム、サーガノヴェルがハナを主張します。逃げると思われたカルストンライトオは行き脚が一息。外の4番手まで押し上げましたが、行き切ったのは最内枠のテンシノキセキと横山典Jでした。ショウナンタイムが抵抗しながら2番手、サーガノヴェル、カルストンライトオが1馬身差で続き、内にキーゴールド、間にゴッドオブチャンス、そしてビリーヴはその外6番手7番手と絶好位。
1馬身切れてイシノグレイス、外に好発のナムラマイカが溜め、内にハッピーパス、その間にレディブロンドは中団やや後方で進めます。
2馬身切れて後方集団。アグネスソニックがポツンと後方4番手。
また2馬身切れてここにアドマイヤマックス。
その後ろにイルバチオ、そしてシンガリからデュランダルの展開。

後方4頭はポツンポツンでしたが、前は比較的団子状態で前半600mは33.3。
スプリントG1らしく、厳しいラップが刻まれます。

テンシノキセキが引っ張る中、3~4コーナー中間地点でショウナンタイムが並びにかかります。その外にカルストンライトオ。
さらに外にビリーヴが抜群の手応えで進出。
レディブロンド、アドマイヤマックス、デュランダルはまだ後方。
4コーナーで各馬手が動く中、ただ1頭馬なりで先頭に並びかけると、安藤勝Jはまるで迫る鬼気を感じたかのように外後方をチラッと確認。
その真意は定かではないですが、引退の花道を飾るべく最後の直線に入ります。

直線に向くや否やビリーヴは追い出し開始。
一気に前を飲み込むと、安藤勝Jの伝家の宝刀、風車ムチが1発2発と飛びます。
テンシノキセキも食い下がりますが、先行勢は苦しく、後方からは外にレディブロンド、内を突いたアドマイヤマックスが懸命に脚を伸ばすも、ビリーヴには届きそうもありません。そのまま坂に差し掛かり残り200m。
誰もが絶対女王の有終の美を確信したその瞬間でした。

大外からとてつもない脚で切り裂いてくる馬がいたのです。

デュランダルです。

その聖剣は稲妻の如き切れ味で風を引き裂き、あのレディブロンドを、アドマイヤマックスを一瞬で撫で切り、一気に女王ビリーヴに襲い掛かります。
安藤勝Jの右ムチに応えるビリーヴ。力強く抜け出し押し切りを図る中、残りは100m。
絶対女王の玉座に外からみるみる迫りくる鬼脚。
残り50mで3馬身、2馬身、1馬身と一気の強襲。
ついに並んだところがゴールでした。


安藤勝Jもゴール前は「やった」と思ったか最後の最後は手綱を緩めましたが、離れた外から襲いかかったデュランダルに並ばれたところがゴール。
誰もが際どいと思える差でしたが、ゴール後すぐに高々と左手を掲げたのはデュランダル池添Jでした。

写真判定の末、ハナ差でデュランダルに軍配。
ビリーヴが飾るはずだった花道を、信じられない程の鬼脚で一閃したデュランダルがG1初制覇を飾りました。
3着は追い込んだアドマイヤマックス、レディブロンドは4着とさすがに連闘が堪えたようでした。
5着は逃げ粘ったテンシノキセキで、掲示板はある意味では下馬評通りの上位人気5頭による決着となりました。
もっとも、勝ち馬はその上位人気では一番下の5番人気なのも競馬の面白いところです。


デュランダルはその後、マイルCSへと駒を進めます。
「スプリンターズSの時よりデキが良い」とレース前から豪語してきた池添Jでしたが、世間の評価はスプリンターズSがハマっただけと思ったのか、再びの5番人気。
しかし、ここでも聖剣の切れ味を発揮。
鮮やかな大外一気で、あのファインモーションをも一閃して見せたのでした。
「ほら言ったじゃん」と、大観衆を嘲笑うかのような池添Jのガッツポーズは個人的には大好きです。
その後もその末脚を武器に短距離、マイル戦線で活躍。するかと思われましたが、脚元の病気もあって順調さを欠きます。
それでも出てくるレースでは豪脚を披露し、生涯成績の18戦のうち、15戦で上がり最速を記録した、記録にも記憶にも残る馬でした。
余談ですが、池添Jはデュランダルに出会えたから今があると語っていて、個人的にも思い入れの強い馬だったのだと思います。

2着のビリーヴは引退後はアメリカで繫殖入り。
母馬としても、初仔のファリダット、そしてフィドゥーシア、さらには2022年のスプリンターズSを制覇したジャンダルムを輩出するなど、仔馬にもその類まれなるスピードを引き継ぎ、母馬としても大活躍しました。

3着のアドマイヤマックスはその後も善戦を続け、2005年に高松宮記念で悲願のG1制覇を飾ります。

4着のレディブロンドはなんとこのスプリンターズSを最後にターフを去ります。
遅すぎたデビューとはいえ、現役生活はたったの3か月少々と、その輝きはあまりにも一瞬だったのでした。

5着のテンシノキセキは翌年の高松宮記念を最後に現役を引退。
以降は繫殖牝馬として第二の馬生を過ごすのでした。


~終~


いかがでしたでしょうか。
ここまで読んで頂いたそこのあなた、競馬が大好きな方ですね?(笑)
スキを押してくれると嬉しいです。

過去にはオークス、日本ダービー、安田記念、宝塚記念もやっているので、興味のある方は是非過去の記事のアーカイブを読んでみてください。


さあ、秋のG1が開幕です。

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