【彼になった彼女】25話 すすむ

ユウの大学
この大学は俺とアヤメも通っていた
懐かしい・・・
この変わらない道が、大学生へと戻ったみたいに感じる
ユウに電話しながら校門へ近づく

ユ「もしもし?」
主「お前、今日暇?」
ユ「うん」
主「家で久しぶりにゲームしようぜ」
ユ「OK!ちょうど学校出るところだから今から・・・あっ!」
ユウは俺に気づいたのか、手を振りながら俺のもとにやってくる

ユ「学校まで来るとは思わなかった」
主「なんとなく、な」
ユ「懐かしいでしょ?」
主「懐かしい、変わってなくてちょっと安心する」
駅へと二人並んで帰る

主「幸せだったってことは覚えてるのに、
 些細な日々の出来事が次第に薄れて消えていく」
ユ「?」
主「忘れたいわけじゃない、忘れることはできないのに
 人間の身体、何でもっと全部覚えていてくれないんだ
 アヤメとの日々、些細なことですら覚えていたいのに
 忘れたくないのに、思い出そうとしても、もやがかかって思い出せない
 俺ってひどいかな?」
助けを求める顔をしてしまった

優しいユウなら、ひどくないよって言ってくれる、そう思ったからこそ言ってしまった
俺、最低だな
自分が助かりたいがためにユウに寄りかかろうとしている

ユ「・・・・・・」
速くなったユウの歩幅
俺の少し前を無言で歩く
おかげでユウが今どういう顔なのかわからない
やっぱり俺、ひどいよな・・・

俯いた俺に
ユ「今を未来を生きていくなら、過去にとらわれないためにも
 前を進むためにも、忘れることは大切だと思う」
先を行くユウが振り向き寂しそうに笑った

ユ「記憶が薄れていっても、感情が身体が覚えている
 だから、自分の中で姉ちゃんが生き続けてる」
主「身体が覚える・・・か・・・」

自分の手を見る
まだ、彼の心臓の感触が残っている
「ヒー君」
確かに、アヤメの心臓は覚えていた
彼になっても・・・
そして、彼の中で彼の一部として今を生きていた
これからも彼の一部として生きていくんだろう

俺はユウの隣に立ち話す
主「決めた・・・墓参り、行くよ
 ちゃんとお別れしないとな」
ユ「・・・いつ行く?」
主「明日
 ついてこなくていいよ」
ユ「わかった、場所わかるよね?」
俺はうなずいた

ユ「風、気持ちいいね
 このまま歩いて帰ろうよ」
主「わかってるね~、俺もそれ言おうと思った」
ユ「ほんとに~?」ニヤッと笑うユウ
そう言って他愛もない話をしながら俺たちは肩を並べて帰った

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