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やもりとへびとカエルのトラブルの類いについて

あれよあれよという間に冬至が過ぎた。飼い主はいわゆるオタ活が少しずつ戻ってきたり、仕事でてんてこ舞いだったりして落ち着かないが、やもりもへびもカエルも元気にしている。本当に手のかからない良い子たちだ。彼らのことは「うちの変温動物たち」と呼んでいる。もっとも科学的根拠から今はあんまり「変温動物」とは言わないらしい。それなら「はいずりたち」とかのがいいかもしれない。

これまで経験したはいずりたち関連の悩みらしい悩みといえば、昨年の冬のやもりの便秘と、春頃だったかのへびの脱走だ。やもりに関していえば、今年の冬は便秘とは無縁らしい。大人になって食欲のむらも大きくなったけれど、まるまる太ってむしろ肥満が心配なくらいだし、コンスタントに排便もある。昨年冬のひきこもりは引っ越し後のストレスのせいだと思ったが、今年もひきこもっているから冬の習性なのかもしれない。へびの子の脱走も油断ならないけれど、今のところあれ以来一度もない。掃除の間にょろにょろと部屋の中を歩き回らせた結果、捕まえるのに往生したことはあった。噛みつかれたりおしっこをかけられたりしたが、一応飼い主の管理下にあったのでよいこととする。

末っ子のカエルは時々びっくり箱のように飼い主の手に襲いかかってくることを除けば、動きもゆっくりでおとなしい。プラケースの中ではだいたいいつも同じ場所にいるから、シェルターに隠れがちなやもりとへびと違ってすぐに安否の確認ができる。ごはんも今のところ与えたものはもれなく食べる。水替えがやや頻繁なことを除けば、爬虫類たちと比べても随分心配の少ない良い子だ。

そう思っていた矢先、事件は起きた。

いつもより遅めに帰宅したある夜、はいずりたちの部屋を覗いた飼い主の目に真っ先に飛び込んできたのは空っぽのプラケースだった。床面積がカエルの4倍ほどの小さなプラケース。そこにいるはずのカエルがいなかった。やもりやヘビならばまずシェルターの中を確認するが、当時のカエルの床材はシンプルなウールマット。もぐったり隠れたりするところはない。「そこにいなかったらいないですね」状態だ。あの時の絶望感を今も忘れない。一瞬、誘拐という可能性すら頭をよぎった。うちのカエルは可愛くて特別なカエルだから…(前にやもりにもそんなことを言っていた)。しかしプラケースの窓のロックが外れていることに気づき、脱走だ!と思い直した。

重そうな体でぴょこぴょこと進むことがやっとのカエルが、そんなに遠くまで行けるはずはないと思った。まずははいずりたちの部屋の、やもりやへびのケージを載せているラックの下をくまなく探す。しかしそこにカエルはいなかった。「あかだまち……あかだまち……どこ?」非常事態になってはじめてカエルに赤ちゃん言葉で話しかけている自分に気がついたりする。どこかのものかげにいるはずのカエルを踏んづけないように摺り足であるゆる家具の後ろを探し回った。

探し回った結果、カエルははいずり部屋に隣接したリビングの隅の、クッションの裏にいた。プラケースからは4~5m離れていたと思う。おっとりさんだと思っていたカエルは、脱走名人のへびの子よりもずっと遠くに逃げていた。侮るなかれ。

それまでは、ツノガエルは空間認識に長けていないからケージは小さくていいという説を信じて小さなプラケースを使っていた。この事件の後、簡単に飛び出されてはたまらないと、大きくて頑丈なケージにカエルを引っ越させた。床材も、いつも体がむき出しになるウールマットではなく潜って隠れられるフロッグソイルにした。寒さが深まり、カエルはパネルヒーターの真上にいつも埋まっている。水替えのため掘り出すとホカホカになっていてかわいい。ちょっと指宿の砂風呂のようだ。今のところ落ち着いていて、脱走の心配はなさそうに見える。

ところで、かれこれ20日ほどカエルの排便を見ていない。

末っ子よ。なぜやもりやへびと同じ道をゆく。


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