館もの ㉟「恐怖館でつかまえて」
秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ順不同にいきます。
35作目「恐怖館でつかまえて」1996年
全大学不合格中の由香と左記子が、神頼みするしかない、と有名な神社へ「泊りがけ」で祈願へ。
なぜ泊りがけなの、と疑問に思う由香に左記子がこたえたのは
「スキー場が近くにあるから」
遭難した由香たちが、知らない人の別荘みたいな館にたどり着いてそこでお世話になることにし、事件に巻き込まれる。このパターンは何作かあって、明が初登場した「怪しい別荘で~」もそうだった。まだ読んでいないものの中にも、たしかそうだった、と記憶しているものがある。
秋野先生って別荘が好きだね。
前作で、好きなのは圭二郎さんだと自分の気持ちを認めた由香。
クリスマスイブのあの日から、二カ月ほど由香と圭二郎さんは会っていない。
ここで、なんだか、じんときた。
二カ月、会っていないんだ。由香と圭二郎さん。
シリーズ末期の「事件を解決してその帰り道で新たな事件に」より、ずっといいよ。
会っていない二人のために、左記子は桜崎さんたちが事件解決を依頼されて向かう予定になっているところの近くに自分たちが行く計画をしていた。
それが、このあたりだったことがわかる。
遭難しかけた二人がたどり着いた館には、東京から来る探偵を待っている家族がいて、それが桜崎さんたちのことではないかと二人は期待する。
館ものでは、過去に起きた事件の関係者が集まっていてまた新たな事件が起こり、その謎を解くことになるパターンが多いけど、これもそう。
だいたい、その屋敷の中で新たな事件が起こるので捜査は「狭い範囲」で行われることが多い。
今回は、廊下や部屋、階段という屋敷のごく一部でのそれぞれの行動がアリバイや証言の矛盾をあらわしていくので、じっくり読まないとよくわからなくなる。
犯人がわかった由香が、おびきよせるために圭二郎さんと二人で現場で待つところで、やっと二人が二カ月ぶりの再会で話をする。
私は、ここのシーンがとても好きだ。
二カ月で二度しか圭二郎さんに電話しなかったことをサキに怒られたと告げる由香に圭二郎さんが笑って、もっと電話したほうがよかったですか、の問いに圭二郎さんが「うん」と素直に答えるところ。
末期のべたべた熱愛より、この頃の二人がとてもいい。全巻レビューが終ったら好きなシーンランキングを考えてみよう、とこれを読みながら思った。
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