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由香の誕生日⑰「春の窓辺でつかまえて」

秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ、順不同にいきます。

17作目「春の窓辺でつかまえて」1992年

丁寧に作られた、つかまえてシリーズらしさ満点の、楽しい作品。
タイトル通り「春の窓辺」に吹く風のようなさわやかな内容で、嫌悪や憎しみのために犯罪を犯す人もいない。

学内で起こった、病気でなくなった女生徒から届いたラブレター。
すでに亡き人からなぜ手紙が届くのか。
以前の事件で知り合った先輩からの依頼をうけた由香と左記子は調査に乗り出す。

学内での事件らしく、横舘くんや皆川くんが左記子にこき使われながら協力する。桜崎さんたちには、経過を相談報告するだけで一緒に捜査をするわけではない。
時々あった、校内完結型の事件。
こういうのがあるとホッとしたし、たいてい面白いから好きだった。

前作「天使をつかまえて」がクリスマスの話で、今作はそれから三か月後の卒業式のころ。こういう、時間の流れがたっぷり取ってあるところは初期の良さのひとつだった。
前作で登場した菊地薫(シリーズを通したMVPに近いような働きをするキャラになると想像できたリアルタイム読者はいなかったと断言したい)と由香が実にさりげない再会を果たす。

「春の窓辺でつかまえて」は、シリーズ中に四度ある由香の誕生日もの。
十六歳の誕生日には皆がゾンビのマスクをつけて由香を驚かせた。
十七歳の誕生日には…左記子が〇〇に化けてでる。
由香の誕生日ものとしても楽しめる一作です。



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