楽しい! ⑱「恋人たちをつかまえて」 上下巻
秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ順不同にいきます。
18作目「恋人たちをつかまえて」1992年
事件は、桜崎さんの事務所に来た依頼に二人が首をつっこんで参加することから始まる。
依頼の内容は、妻あてに脅迫状が届くので身辺警護をしてほしい、ただし本人は家出中で行方不明。という、なんとも奇妙なものだった。
タイトルの「恋人たち」とは抽象的。
読み進めていくと、さまざまな恋人たちが出てくるので、確かにうまくまとめたタイトルだな、と読後に感じる。由香と菊地さんの再会(前々作で初登場した菊地さん、由香に電話をしてきて再登場)、左記子と弘毅さん。圭一郎さんと瑠璃さん。
この作品では、楽しい場面がいくつかある。
ひとつは、桜崎さんが抱えるもうひとつの依頼「迷い猫探し」を担当することになった由香が、聞き込みにまわる家でそこのおばあさまたちにとにかく「食べさせられる」立て続けのおいしそうなものの羅列。
依頼人の家から始まり、迷い猫を目撃したという情報をもとに訪ねた家々での様子。最後に戻った依頼人の家ですき焼きを見たところで由香は逃げる。これまでの家で由香はこれらを全部むりやり食べてくるの。
小説ながらスゴイって笑ってしまう。
菊地さんと由香の再会デートを、変装した圭一郎、左記子、瑠璃の三人が尾行して見物。そのあと菊地さんと由香も一緒に焼き鳥屋に行ったりそのまま圭二郎さんの調査に皆で合流したり、シリーズ末期のそれとはまた違う、初期のこのにぎやかな感じがとても楽しい。
この作品では、左記子が危ない目にあう探偵ごっこが大嫌いな弘毅さんとの大げんかがあり、二人はけんか別れをしてしまう。
別れのシーンがとても切なくて当時の自分はここで泣いたりしてた。
彼氏とケンカした日にわざわざこれを引っ張り出してきて読んでは、左記子が仲直りできる場面にすがって自分たちも仲直りできると思いたかったり。
この本とは長いこと一緒にいるもんなあ。と黄ばんだ部分を見つめて嬉しくなった。
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