見出し画像

華やかな良作 ⑳「シンデレラをつかまえて」

秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビュー。
無作為に選び一冊ずつ順不同にいきます。

20作目「シンデレラをつかまえて」1992年

とても賑やかで、華やかな作品。
派手ならいいわけではないけれど、これは読んでいてとても楽しい。

横館くんの誕生日パーティを開くことにした左記子が探した会場は50人は入りそうな広いお好み焼き屋さん。
どうして?から始まる物語。

「工藤由香さんをめぐる男性の人気投票」には笑った。
高校時代の左記子の、企画力は最高に楽しい。
こういうことができる楽しい女の人になりたいと思ってたことがある。

シンデレラのガラスの靴。
私もあの人の心にガラスの靴を落とせたらいいのに。
と願いながら好きな人に手紙を書いたことがある。
高校生のとき。残念ながらその思いが届くことはなかった。

若い頃の片思いしていた自分の憧れは、やはり山野蓉子さんだった。
かなわないとわかっていてそれでも忘れられない気持ち、痛いほどわかる。私もそうだったから。

このシリーズが長い間少女の心をつかみ続けたのは、蓉子さんや菊地さんのように、かなわない片思いを、「それでも」自分の意思で貫くキャラクターの存在が大きかったのではないかと思った

菊地さんと蓉子さんの初対面。
怪しいと思ってあとをつけることから始まった。
この二人は、ともに報われない片思いをしているという点で理解しあっていく。切ないけれど素敵な関係。

タイトルもいい。シンデレラは、つかまらないからシンデレラなんだよね。この作品におけるシンデレラはいつも蓉子さん。

シリーズ末期にやたら登場するようになる蓉子さんの大安売りはカンベンだけど、このあたりの神出鬼没さはかっこよかったな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?