重ね 73「青い青い空の下でつかまえて」
秋野ひとみ「つかまえてシリーズ」全95タイトルを全巻レビューするのが目標。無作為に選び一冊ずつ、順不同にいきます。
73作目「青い青い空の下でつかまえて」2002年
青い青い、ときた。長い長いとか、すごくすごくとか、つかまえてシリーズあるある、形容詞などの繰り返し使用。
青い青い、か。溜息のようでそうではない。らしいなあ、と思うだけ。しかし、事件の内容と「青い空」にあまり関係がないような感じがする。秋まつりのころで、そのころは気候がよくて秋の青空は美しいもんね、となんとか納得した。
始まりも展開も小ネタも、らしさ満載で楽しい。明くんの夕食当番、桜崎兄弟は近所づきあいをしているので町会長が訪ねてきて事件を依頼される。
由香と菊地さんの二人で調査活動では、時々彼がジンとくる言葉を由香にかけてくれるけど、今回もとてもいい。「(彼氏とうまくいっていて)よかったな」とやさしい声で言える男の人って、素敵だな。自分はその女の子のことを心から愛しているのに。
つかまえてワールドでは、現在の私は「菊地さん派」断然。昔は圭二郎好きだったけど、シリーズ後期につれてこの人がこんなヘタレキャラにされていくとは…キザなセリフには硬派なエッセンスが必要であると持論のある私ですが、後期の圭二郎にはそれがなくなるから。
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町内会長さんから桜崎事務所への相談とは。覚えのない映画のチケットが町内のたくさんの家に届く。それぞれの家族構成や趣味をよく知っているかのようなセレクトのチケットが届き、受け取った中にはそれを喜んで使った人もいるが、何かあってからでは遅いので調査をしたいとのことだった。
映画のチケットは宅配便のチーズに変わり、それを食べて人が死んだ。急展開にエスカレートしてしまい事件となり、由香たちは捜査に乗り出すことに。
由香らしい、とても素直で真っ当で、慎重で確実。名探偵由香のいいところがそのまま事件解決に結びついていく、長いシリーズ中の隠れた秀作なんじゃないかと思う、この作品。「重ね」という秋野ひとみさんの好きな言葉の使い方をタイトルに採用しているだけのことはある
律泉さんも登場するし、秋祭りで桜崎探偵事務所は何の出店をするのか、その話が盛り上がっているのも楽しい。
つかまえてシリーズ×食べ物、は本当に相性がいい。圭一郎さんをお料理上手に設定していることがいつも魅力的に効果的に作用してこのシリーズにあたたかみを加えているのだと感じる。
一番会ってみたいキャラクターは桜崎圭一郎さんかもしれない。
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