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『怪談大喜利』回答まとめvol.1

 僕はX(旧:Twitter)でやっている企画『怪談大喜利』に参加させて頂いている。ホラー耐性があるためか、何を以て「怖い」のかがよく分からないが、日々試行錯誤して回答している。
 その中から回答を幾つか選んでまとめてみた。


ネグレクト【大恐(第2位)】

お題:息子の絵日記(R5.8/22〜25)
夏休み最終日、8月31日の夜。
小学生の息子が寝しずまった後、なんとなく息子の夏休みの絵日記をめくってみると…どうだった?

白紙だった。それどころか、8/30以前もずっと白紙のままだ。
このままじゃ先生に怒られてしまう。
そう思い、私は息子に注意しようとした。
そういえば、息子はこの夏休み、何をしていたのだろう。
思い出せない。
そう思っていたら、呼び鈴が鳴った。
「すみません、児童相談所の者ですが」

 これに関しては、主催のナナシロさんより講評を頂いている。

 敢えて怪異や怪奇現象に頼らず、「本当に怖いのは人間である」というコンセプトで回答した。子供がいる家庭にとって怖いものを考えたとき、真っ先に思いついたものはネグレクトの現場だった。ネグレクトを仄めかすために、140字ギリギリまで使って回答した。
 このとき『怪談大喜利』には初参加だったが、まさか2位になるとは思わず今でも驚いている。

無理心中【最終選考選出】

お題:雨戸(R5.9/4〜8)
夜、自宅でのんびり過ごしていると、雨音が聴こえてきた。
「そういえば今晩、大型の台風が直撃するんだっけ」と思ったあなたが、雨戸を閉めるために外に出ると…どうなった?」

「ねえ、貴方も私から逃げるの?私のことがそんなに嫌い?どうして?私を独りにしないで。その雨戸を開けて一緒に来てよ。私ちゃんと毎年会いに来てるでしょ?ね?」
その翌朝、台風が温帯低気圧になったというニュースが報道された。行方不明者1名というニュースと共に……

 主人公(あなた)と台風が無理心中するというオチである。主人公は台風から好かれていて、でも主人公は人間であるため、自分や家族を災害から守らなくてはいけない。諦めきれない台風は、秋になると主人公の家を毎年訪れ(直撃し)、ついには主人公を連れ去って、無理心中を図るというストーリーがある。
 「台風による行方不明者」と「温帯低気圧になった」というニュースはありきたりではあるが、ありきたりのニュースが恐ろしいものになってしまう二段構えにより、「主人公と台風の無理心中」というストーリーを仄めかした形の回答である。

サンタさんのおくられもの

お題:クリスマスと靴下(R5.12/25〜29)
クリスマス・イブ。
枕元に靴下をぶら下げておくと、翌朝どうなった?

僕に靴下の中身を確認する術はなかった。
「メリークリスマス!プレゼントは、君の一番大好きなものだ、よかったな」
「サンタさん、パパ、ママ、ありがとう!」
そんな声が、微かに聞こえてきた気がする。

 主人公(僕)が靴下の中に入れられ、誰かのプレゼントになってしまうというオチである。僕としては「お兄ちゃんが欲しい!」と願った妹を想定しているが、様々な解釈を可能にするように仕組んだつもりである。

生贄【最終選考選出】

お題:移住先での初詣(R6.1/2〜5)
昨年末、今住んでいる村に移住したあなた。
挨拶を兼ねて氏神へ初詣に行くと…どうなった?

どこからともなく赤ん坊の泣き声が聴こえた。
そういえば、この村に、学校はあったっけ……?

 冗長に書きがちな早川回答にしては比較的短文の回答である。「この村で生まれた赤ん坊は氏神の生贄になる(だから、子供がおらず学校もない)」というだけのオチである。

入れ替わり

お題:雪の落ちる音(R6.1/22〜26)
寒波が来て大雪が降ったため家でゆっくり過ごしていると、外で「ドサッ」と音がした。
屋根の雪でも落ちたのかな?と思いながら窓から外を覗くと…どうだった?

異様な寒さと、後頭部に激痛を感じると思ったら、私が地面に横たわっていて、家の中に雪の塊が蠢いていた。

 この頃は敢えて「冗長に書かない」ことを意識していた。オチとしては、主人公(私)と雪の塊が入れ替わってしまった、というだけである。

家の皮【最終選考選出】

お題:もう一軒の廃墟(R6.1/30〜2/2)
去年の夏に肝試しで行った山の中の廃墟。
よくある日本家屋の空き家だが草木に埋もれていて雰囲気抜群。
そこで改めて冬に行ってみると、生い茂っていた草木がなくなり、裏にもう一軒建物があることに気付いた。
その建物に入ってみると…どうなった?

既に住人がいた。
お茶とお茶菓子をご馳走になりながら世間話をして楽しく過ごした。
「隣の家かい?ありゃ家の皮だよ。住人が増えたら脱皮するんだ。あーあ、あんた達のおかげでまた脱皮が始まるよ」
舌なめずりをしながら、住人は言った。
そういえばあのお茶、妙に赤かったな……

 昔、『インセイン』というTRPGを嗜んでいた頃に、『お母さんの皮』というシナリオをプレイしたのが面白くて、そこからインスピレーションを得た回答である。最初は怖くないところから少しずつ違和感を演出するために、140字ギリギリの長文回答で挑んだ。

あの世からのチョコレート

お題:バレンタインデー(R6.2/12〜16)
バイトが終わった後、帰り支度をするためにロッカーを開けるとチョコの入った紙袋が置かれていた。
「そういえば今日はバレンタインデーか。同僚の誰かがくれたんだな」
そう思いながら、そのチョコを持って帰ると…どうなった?

知らないパティスリーの紙袋だったのでググってみたら、斎場や墓地のサイトに飛ばされた。

 このお題は複数回答しており、最終選考に選ばれた回答もあったが、個人的には此方の方が気に入っている。オチは「死者からの贈り物」というシンプルなものなので、回答も簡潔にまとめた形となった。

ループ【最終選考選出】

お題:バレンタインデー(R6.2/12〜16)

チョコがカタカタと音を立てて揺れていた。
気味が悪かったので、翌日、バイト先で誰にともなく礼を言ってみたが、誰も心当たりがないようだった。
そして、ロッカーには昨日と同じ紙袋が

 「チョコそのものが恐怖の対象であり、ひとりでに主人公の元へ辿り着く」ということを想定したオチである。最後の一文は敢えて中途半端にすることで、お題に戻ってきて、この回答があって、というループを成立させようとした。ただ、色々なことが起きすぎて、恐怖イベントがとっ散らかってしまったように思えるのが反省点である。

復讐の日【最終選考選出】

お題:うるう年(R6.2/25〜3/1)
うるう年にまつわる怖い話を教えてください。

2/29に産まれるはずだった赤子が、母親に報復するために、4年に1度設けられた日なんだってさ

 シンプルなお題に対し、シンプルな回答で真っ向勝負した。
 2/29は4年に1度しかなく、例えばR5.2/29という日付は存在しないわけで、もしそういった日付が何者かによって無かったことにされ、ねじ伏せられていたら?と考えた。ねじ伏せられた1日により淘汰された命があるとしたら、それは恐ろしいものなのかもしれない。

薬売り【最終選考選出】

お題:東京への卒業旅行(R6.3/11〜3/15)
中学のクラスメイトと卒業旅行で東京へ行ったあなた。
大都会と人波に圧倒されながら街中を歩いていると、突然スーツを着た男にあなただけが声をかけられた。
「何ですか?」と言いながら立ち止まると…どうなった?

「いいじゃんその薬。あんときのこと思い出してたのかお前。俺にもくれよ」
俺は、鞄に入れていた薬をスーツの男に差し出した。

 「違法薬物の取引現場」であるというオチにした。主人公(あなた)は違法薬物により中学時代の幻覚を見ており、主人公はとっくに成人しており、クラスメイトもその場にはいないという、お題そのものが主人公の幻覚の世界そのものであるという形にまとめた。

リモートワークの真相

お題:会社がヤバイ(R6.4/2〜4/5)
4月に入社したばかりの会社がヤバい。
どんな?

業務内容はリモートワークだと聞いている。楽で良かったと思っていた矢先、本社に挨拶に行ったという同期からの連絡が途絶えた。入社式のときの上司の話を聞かないからだ。「決してオフィスに立ち寄ってはいけない」と

 オフィスが何やら恐ろしい(だからリモートワークをしている)という回答である。オフィスに立ち寄れないというのは新入社員にとって不安が大きいのではないかと思い、オフィスを恐怖の対象に仕立てた。

桜にさらわれる

お題:花見の場所取り(R6.4/8〜12)
お花見の場所取りのために早朝に公園へやってきたあなた。
良さそうな場所を見つけてシートを広げて座ると…どうなった?

「家族も、友達も、会社も要らないでしょ?
私のことだけを見ていて」
そう言って離さない君が、いちばん綺麗だった。
ここにはまだ俺しか来ていなかったが、桜があまりにも綺麗だったので、どうでもよくなってしまった。

 「桜にさらわれる」とは色々な創作でありがちな、ベタなネタである。桜がテーマなので、そのありきたりなネタをオチに据えてみた。「桜にさらわれている」現場を極力生々しく描いたつもりではあるが、もっと桜をおどろおどろしく表現したかったところである。

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