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絶交旅行

2021年11月

友達と絶交した。

夜7時、共に名古屋から北にレンタカーを走らせ、岐阜の山道を抜け、仮眠を取り、まだ日も昇らぬうちに富山から日本海を沿って青森駅まで、絶交するための最後の二人旅行をした。新潟では日本海をバックにした写真をお互い撮り合い、その日の夜に青森まで着き、居酒屋でクリアアサヒを飲み交わし、ホテルの同じ部屋で、おやすみ前に絶交した。何故絶交に至り、絶交する相手とわざわざ旅行したか、はっきりした理由があるようにも思えるし、いざ書いてみようとすると何も書けなくもなってしまう。

絶交なんて初めてのことなので、心臓がドキドキしたし、なんとなくすっきりしたような気もするし、少し泣きそうにもなった。朝同じタイミングで起きたが、もうお互いに知らない者どうしという取り決めなので、何も言わずにそそくさと部屋を出て、自分は新青森駅から名古屋まで新幹線で帰ることにした。11月の青森は想像より寒い。せっかくなので観光を...という考えはホテルから飛び出た瞬間消え失せた。話せる相手がいなくなってやはり寂しいが、本気でお土産を物色する自分もいた。売店で、竈門炭治郎が青森のりんごを真っ二つに切断しているキーホルダーが売っていた。普段鬼をズバズバ斬ってる刀で斬られたりんごって自分は食べられないかもしれない。前日とは一転雨が降り、新幹線の窓に付いた雨粒が、表面を滑ってするする後ろに流れていくのをぼんやり眺めていた。流れていくなかで雨粒同士がくっついたり、ぱらぱら別れて散っていったりした。

行きで通った日本海は想像していた(東映のオープニング)よりもだいぶ穏やかで、砂浜なんかもあり、優しい陽射しの下で「気分上々↑↑」を二人でパート分けして歌うのは最高に楽しかった。