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衝動フラッシュ

吊り革を掴んでいるとふと、肘を曲げ、全体重を蹴り上げてサマーソルトよろしく爪先から一回転したくなる。
夏には商店のきわ、店か外かわからないところにずらりと並んでいる立派なスイカをひと玉、下から両手で掬い上げ走って逃げ出したくなる。または「エイヤ!」のチョップを見舞いたくなる。

生活をするということはそういう衝動を抑えるということで、急に怒鳴ったり、ど突いたりするとあまり良い印象を与えない。
逮捕されることもある。

誰もが衝動を、それを超えるウェイトの理性にのしかかられていると思っている。
これが暑さ・寒さ、陽気・陰気、浮き・沈みにより逆転する時にニュースになるのだと。

四方からフラッシュを焚かれ、シャッターの音に包まれる自分を想像する。
いつそうなってもおかしくない。衝動を抑えきれず、“むしゃくしゃ”する時がいつか来る気がする。フラッシュで白く光る犯人の顔を、許せないと思う反面、まったく他人事とは思えない。

何をめがけているかわからない行列にいつしか自分も並んでいて、一人一人、先頭に並んでいる人間から、順番に。