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マッシュアップ・ハロウィン

およそ半年ぶりに足を運んだ東京で、腹を満たそうと出向いたのは日高屋だった。10月31日、ハロウィン本番の月曜日。


——カタヤキソバと餃子と生ビールで


今年は『SPY×FAMILY』の登場人物・アーニャのコスプレが多いらしい。多くの人が仮装をして楽しんでいる。ニュースには仮装をした若者、警察官、LED、渋谷の人混み、散乱するゴミ、無関係の通行人、Vaundyみたいな人、トラブル、火事、Q:普段は何をされている?、A:普段は会社員ですけど、昨日辞めました。赤い傷口が月明かりに照らされ輝きを放っている。


——生ビールです


若者たちは溜まった痰を吐き捨てる場所を求め、無意識に集まる。誰かが強制したわけではなく、シンクロニシティ、梨泰院にも若者が渦巻く。進んだ道は一方通行の道で、後ろを振り返っても、もう二度と戻れない。自分が前の人を押すように、自分もまた後ろの人に押されて身動きが取れない。渦の中心から外側に向かって悲鳴が連鎖してくる。先の見えない中で、少なくとも周囲の人間とだけは肌が触れているという確かさだけがある。主人を失った七色に光るカチューシャは道の端で、落ちたトルネードポテトの隣で、6秒周期で変色し続けたままだ。吐き出された痰が月明かりに照らされ輝きを放っている。


——餃子お待ち


食材を歓迎するように油がザーと鳴る。中華鍋とお玉がリズミカルに擦れる音が聞こえる。客の注文が山びことなって厨房に響く。レジを叩く音。麺をすする音。不意に沸く笑い声。こんなに騒がしいのに、もう何時間もしないうちにラストオーダーを迎えて、徐々に人が減り、嘘みたいに静かになるだろう。明日も同じ時間に騒がしくなるし、来年の今日もそれは変わらない。


——はいカタヤキソバ