見出し画像

100万円目当てに人のカバンを探した話

 カイリュー木村氏という経営者が、Twitterで助けを求めていた。

「カバンを拾ってくれたら100万円贈呈します」

 こんなうますぎる話に乗るネット民はそうそういない。

 前澤氏の偽ツイートが氾濫した現在ではなおさらである。

 しかし、私は知っていた。カイリュー木村氏は本気であると。

 本気でカバンを拾った人間に、100万円をポンと渡す人間だと。

 なぜ、カイリュー木村氏をそんなにも信用できるのか?

 それは、私が現にポンと10万円を頂いた過去があるからである。

 当時シェアハウスしていた友人が私を偶然つれてきてくれたのは、イベントバーエデンで開催された、「投資家と起業家のマッチングバー」。

「BL小説書いて生きていきたい」っつったら、カイリュー木村氏はおもしろがってくれて、「俺を題材にしたBL小説が100RTいったら10万円やる」と断言した。

 そしてできあがったのがこちらです。

カイリューさんどこいった。

 候補としてイケハヤ、DJ社長、るってぃを選んだら「その三人とかかわりないから、俺抜きでやってくれ」と言われたので書いた。

 この作品のポイントは、DJ社長の夢である福岡ドームライブがイケハヤの資金援助のもと叶っているところだ。

 見事100RTを達成したので、10万円を振り込んでもらった。その数字は、私の個人事業主用口座にきっちりと刻まれているので間違いない。

 というわけで、カイリューさんはお金に関しては謎の菩薩ムーブをする人間だとわかった。

 今回のカバン捜索にあたって、賞金100万円も嘘ではなさそうだ。

 片道1500円をかけて、埼玉から神奈川へ向かった。

15:30 カイリュー木村氏がカバンを落とした平塚駅へ到着。

 駅の事務室で尋ねるも、該当なし。

 最初からうまくいくわけがないので、気を取り直して交番へ行く。該当なし。警官が無愛想。

 交番に届いていないのなら、どこかの店が拾っているかもしれない。僅かな望みをかけて、彼が最後に訪れたバーに行く。

 ここから駅に向かうルートは二つ。そう長くはないので、両方をしらみつぶしに探す。

 道に面した居酒屋・コンビニ・飲食店・カラオケの店員に、片っ端から尋ねていく。ヒントはTwitterの写真のみ。

 どの店員も、交番の警官以上の丁寧さで店の奥を調べてくれる。

 しかし朗報はこない。謝られる。こちらも謝り、お礼を述べる。

 それが2桁回ぐらい続く。

 途中で意識が朦朧としてきて、同じラーメン屋の同じ店員に「すみませんこのカバン落ちてませんでしたか」と尋ねてしまう痛恨の恥も経験。

 途中で茶を補給しながら、足を引きずって探す。少し遠い場所の質屋も一応巡ったが、日曜が定休日だった。

18:30 ギブアップ

 空腹と体力の限界がきた。己の無力さを噛み締めながら、カイリュー木村氏に悔しさがバレぬよう事務的なリプライを送り、埼玉へ戻った。

 100万円は欲しかった。結局往復の交通費でマイナス3000円になってしまったが、人のために頑張るというのは案外悪くない。結果として成果物はゼロだったが。

 一番情けないのが、個人的に一番有力なありかであるパチンコ店にチキって入れなかったことだ。

 もし私がパチンコ中毒者で、彼のカバンを拾ったら、堂々と自分のカバンのようにして財布から現金を抜き取り、パチンコ玉に換え、思う存分遊んだあとは荷物を店内に置き去りにする。

 このnoteを読んでいる関東住みのあなた。

 もし平塚駅北口周辺のパチンコ店に入り店員に話しかける勇気があるのなら、ぜひカイリュー木村氏のカバンを探してほしい。

 奇跡的に見つかったら、100万円はあなたのものだ。

サポートしていただけると僕が全力で喜びます。