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中二病

草津に、今シーズンのスキー滑り納めへ来ている。
今年4回目の草津。今回は、友人家族がジョインしてくれたおかげで、
とても賑やかで、いつも以上に楽しい旅になった。
子どもは3人。この春から中2になるお姉ちゃんAちゃんと、小5になる妹のBちゃんと、うちの息子。
彼女たちと過ごす3泊は、とても楽しくて、学びがあって、
子育ては親がするものではない、もっと言えば、親が子を育てているだなんて考えること自体がおこがましいと痛感した時間でもあった。
Aちゃんは、それはそれは無垢な少女であり、時にあやうく攻撃的な感覚を秘めた女の子。
実はとてもマイペースでのんびりしているのに、お姉ちゃんというレッテルがおさまり悪くて足掻いているように、私には見える。
Bちゃんはそんな暴れるお姉ちゃんの傍で、冷静に、達観して、
でもちゃっかり自分の要求はしっかり主張できるバランスの良さを持っている。天使のよう、とてもとても良い子。
私は子ども全般苦手なんだけれど、なぜか2人のことが大好き。
今日はとりわけ、お姉ちゃんのAちゃんについて書かせてもらおうと思う。
Aちゃんはこの春から中2、息子は小2、なかなかの歳の差である。
そりゃあ大人になってからの6歳は大したことないって知っているけれど
特にもうすぐ中2なんて、あの、『中二病』の中2なわけだし。
私が学校の先生とめちゃくちゃに揉めて登校拒否したのも、生理がきたのも
髪を初めてベリーショートに切ったのも
そういえば、大好きだったバスケ部顧問の先生が亡くなって、死について考えて世を明かしたのも
私の中で中学2年生は、今でも鮮明に思い出せる、アンニュイな、大人と子どもの絶妙な揺らぎの時間だったわけで
携帯でAちゃんのママから見せてもらう昔のAちゃんは、齢6歳7歳くらいで、
髪はロングで、ママと同じように前髪をキュッとあげて、ママが好きそうなバレエをやっていて、
口角をきゅうううっとあげて、朗らかに笑っていて。
今のAちゃんは、髪はショートカットで、最近は後ろの刈り上げたところが伸びてきて、
あの時期特有の躰のふくよかさ女性らしさが醸し出されて
でも、女の子らしいピンクみたいな色を嫌って、黒を選び、
私が貸してあげたコートは、前をぞんざいに開けて着る。
湯畑で撮った写真でも、歯を見せて笑うことはなかった。
その瑞々しさがただただ美しくて、思わず見惚れてしまった。
私といる時は、めちゃくちゃにたくさん笑ってたくさんおしゃべりをしてくれるけれど(多分、気を遣ってくれているんだと思う)、
あるツボに入ると、ママに反抗して、ものすごく乱暴で残酷な態度を取る時があって、
ついでに妹のことは容赦無くいじめまくっているんだけれど
でも肝心な時は、妹思いで、っていうかみんな思いで、
ママがいなくなった途端、すごくいい子になる感じが、愛おしくて素晴らしくて万全で。
スキー場で、雪をはぐはぐ食べて、「美味しい」という彼女
大人とこどもの狭間とは、なんて脆弱で虚ろで、美しいのだろう。
Aちゃんは、たまに、息子の肩を引き寄せてくれることがある。
車道側を歩いていた彼女の肩を、車がきた時に引き寄せる彼氏みたいに
こっちだよ、といざなってくれる。
妹との関係性では、姉というレッテルを時に煩わしく感じているであろう彼女が、
それでも心底で、臓腑で、無意識に息子を引き寄せるあの瞬間が、私はたまらなく好きだ。
もしかしたら、周りからはとても危うい子に見える時があるかもしれないけれど、
この子は完璧だ、と私が勝手に確信する瞬間だ。
これから、Aちゃんには、あの『中2』が始まる。
兄弟のようにはしゃぐ3人を見ている時、私は極上に幸せな気持ちになるし、
反面、あの中2を通過した後、この3人の関係性はどうなるのかと漠然と思う。
通過した後は、当然だけれど、元に戻ることはないから。
こうやって仲良く過ごす3人を、旅行で見られるのは最初で最後なのかもしれない、と
リビングのソファで桃鉄をしている3人の大中小の背中を見ながら思う。寂しいけれど、だから目に焼き付けておこうと
きっと大人になったら、中2の時のほんの週末の旅行なんて、
ましてや小2の頃の旅行なんて、
各々、忘れてしまうんだろうし、
10年後には、そんなお姉ちゃんたちと兄弟のように過ごしたことなんて忘れてしまうんだろう、
それが健全なのだけど。
親や親戚以外の誰かに、大切にしてもらった記憶は、たとえ忘れたとしても、血肉になると思わずにはいられない。
大切にされた経験が、自分を大切にする糧になる、胆力になると、今 私は思う。
3人が仲良く過ごす時間が、ほんの束の間の短い時間だったとしても、
私には、かけがえのない時間に映る。
と、書いていたら、中2と小2が喧嘩しだした。小5が冷静に仲裁してくれている。適切。
しかし、枕投げとかしないで、桃鉄なんだなあ
いい3人だ。
ありがとう。

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