素晴らしきシンシア



17時入店、19時15分退店という短時間の怒涛スケジュールだったけど、100点満点で楽しめた。
以前こちらを「ディズニーランド」を称したけれど、その圧倒的パフォーマンスは変わらず健在。
ホスピタリティ、お料理、ワイン、気、どれをとっても素晴らしくて、このレストランは総合芸術だなあと思う。

こちらのお料理は、「おいしさの構成要素」が多くて、さまざまな角度から私を刺激してくれる。
一皿一皿、季節的にも状況的にもとにかく春を待ち焦がれる私たちに、喜びと希望を与えてくれる。嗚呼、やはり必ず春は来るのね。
季節的に山菜をふんだんに使用したお皿たちは、苦味をしっかり底辺に感じながら、軽やかさも同時に表現する、さすが。
ホワイトアスパラの一皿は、特に好きだった(写真1枚目)。
ペアリングは、この赤がとっても好みだった。

中心に聳え立つ石井シェフは本当にすごい人なんだと思う。

ちなみにここは、私のフレンチの概念をも変えてくれたところ。
クラシックフレンチの素晴らしさを教えてくれたのはコートドールの斉須シェフ。
フレンチにもっと興味を持ち、勉強させてもらったのはEditionの下村シェフ。

そして私は、石井さんから新しいフレンチを知る。

当時、もう5年以上前だったと記憶しているが、フロリレージュあたりがサスティナビリティとかフードロスなんて言い始めた時、私は鼻で笑っていた。
非日常に耽溺したくてフレンチにきているのに、サスティナビリティなんて持ち込むなよ白けるから。と思っていた。
フレンチはブクブクに太らせたフォアグラや、乱獲するキャビアから成り立っていて、むしろその贅のつくし方がフレンチをフレンチたらしめていると思っていた。
高級なワインに合わせるものは、そういうものであるべきだと。
高いワイン代、サービス料を払って、経産牛ですか?ナイナイ。と


それから数年後、元Tirpseシェフで今や超有名人のMr.cheesecake田村くん経由で石井さんの存在とChef for the Blueの存在を知る。
さすがに私の意識もアップデートされていたこともあるが、私は石井さんの発言や活動のおかげで、これまでの古い古い固定観念を完全に変えることができた。
サスティナブルでもおいしいものは食べられる。
サスティナブルでも、これまでの料理の楽しみや幸せは、決して損なわれることがない。
むしろ、そこにストーリーが付加されることで、もっと美味しくなることを知った。

10年前は、雰囲気的にゆるうく危惧されていた環境問題は、今やリアルに早急に解決しなければならないものに。
(今では夫婦で最も興味のある分野です。)

石井シェフは、フレンチにサスティナブルを持ち込むだけでなく、ブラックな飲食業界に健全な労務環境を持ち込んだり、今回のコロナ禍では率先して医療従事者の方に食事を届けるプロボノをやっていらしたり。
当たり前のことなんだけど、でもその当たり前をきちんと真っ当に、
そしてどんどん想いを発信する社会起業家のような存在が、フレンチレストランのシェフに、しかも同世代にいることに、とても嬉しく、心強く感じる。

是非ぜひ1度、訪れてみてほしい。
このお店には、必ずやみんなの琴線に触れるフックがあるはず。

誰に対しても、360度全方位からお勧めできる、稀有なレストラン。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?