図工美術の担う役割
〜表現することの重要性〜
なぜ人は表現するのか。そう問われたら、私は『心を麻痺させないため』と答えます。
麻痺した心は共感することを忘れ、仲間割れや排除、その果ては戦争へと向かいます。
このことを教えてくれたのは25年前に出会った旧ユーゴスラビア(現セルビア)の子ども達でした。1995年1月17日。阪神淡路大震災の直後NGO に届いた1枚の手紙。そこには『私たちには支援するための充分なお金がありません。でも震災で傷ついた子どもたちの心を癒すことができます。一緒に心の痛みを分けあいましょう。』と書かれてありました。
明日をもしれないがんセンターの子ども達との出会い。そして難民キャンプの子ども達との交流。武力紛争によって混乱した状況の中に絵画や音楽、ダンスといった心理ワークやセラピーが確かに息づいていました。
『あなたを愛しています。だってかけがえのない友達だから。』
5歳での父との別れ。9歳で経験した大震災。度重なる試練に、笑うこと泣くことすらできなくなっていた私の心を解きほぐすかのように、セルビアの子ども達の言葉が染み渡っていきました。
試練は〝自分の弱さの中に力を見出していくために与えられていたんだ〟と、今なら宣言できるのです。そして、誰でも悲しみを超えた先に描くことのできる風景が必ずあるのだと私は信じています。
その風景は決して自分一人では描くことができません。心の痛みを分けあえるキーパーソン、そして自分自身を癒せる安心材料や表現ツールを、私たちは一生涯をかけて見つけていくのかもしれません。
このような視点に立って表現について考えた時、今日の図工美術教育や地域のアートプロジェクトが担う役割はとても大きいと言えます。
愛とは、育てなくてはならない花のようなもの
一ジョン・レノン
愛、平和の試し方は色々あるでしょう。
何が一番平和的な方法なのでしょうか。
それを自分自身の心の中にみつけていきたい。
またその作業を手伝ってくれるのもアートです。
だから今日もアートで種を蒔き続けよう。
一人ひとりの心に色とりどりの花が咲くように。
大人の図工塾管理人 米光智恵
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