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英詞で読み解く藤井風の世界 vol.1

11月18日・・・本日は藤井風さんデビュー曲"何なんw"のシングルリリース日と言うことで、それにちなみ、Instagramでシリーズ化している「 英詞で読み解く藤井風の世界」をこちらのノートに加筆しまとめてみることにしました。

【英詞で読み解く藤井風の世界】
藤井風さんの曲の歌詞は、一見しただけでは真意がつかめないことがあります。
それを彼自身の英訳から読み解いてみることができるのではないか?と言うものです。

【歌詞カードは玉手箱】
ファーストアルバムに付属している歌詞カードには、見開きの左側に日本語の歌詞が、右側にその英語訳が載っています。

以前にも私のラジオでお話しさせていただいた事があるのですが、これは単なる日本語詞の英訳ではありません。

日本語の歌詞の意味を補って、
深みや色、時には匂いや味などの感覚までも織り込んで、その世界観を表現するために英語を使っている、そんな立体的なものになっているのです。

「 歌詞カードまでは良く見てない」
という方はもちろんのこと
すでにその対比を楽しんでいらっしゃる方ともここで楽しいお話ができたらいいなと思っています。

これから新しいアルバムを待つ間は、まさにHELP EVER HURT NEVERやLOVE ALL SERVE ALLを振り返るのにふさわしい時期であるとともに、これによって新しいアルバムのこともより一層深く理解できるのではないかという期待を込めて。

そして新しいアルバムにも同じ玉手箱がありますようにとの、
願いも込めて。

【第一回目はデビュー曲】
さて、この曲
「 何なんw」の英語のタイトルは
"WTF lol"となっていますね。

初めて見た時、正直、腰を抜かしました。
その場に風さんがいたら、両肩を揺すぶって
「ねぇ、いいのこれ? 」って
聞いてしまったかもしれないほどの驚きがありました。

【風さんは口語の人】
藤井風さんは「 話し言葉の人」ですよね。
例えば、
「父が常々申しておりましたが 」
ではなく
「おとんがいつもゆうてたんやけど 」
って言う感じ、ですよね。
(そこが魅力なのですが)

特に歌詞では、「 音の響き」が優先順位の上の方にあるとのことで、言葉の持つ音の力が前面に出ていると思います。

【Kazenglishの気になるポイント】
ずばり、スラングが多いこと。
ラップやR&Bを愛聴されているからなのかもしれませんが、いわゆるフォーレター・ワーズ【four-letter words】がよく出てきます。

これには、正直 "ドキッ!"とします。
しかも、デビュー曲のタイトルにいきなり!
私が彼の肩を揺すぶりたくなった理由は、まさにここです。

【WTF lolとは?】
WTF = What the f×××
・意味「 何てことだ!」
lol = lots of laughs
・意味「 (笑)」

"what the f×××"はかなり品のない言葉だと言えます。
同じような意味としては
"what the hell"(けっこう下品)
"what on earth"(まあ大丈夫かな)などがあります。
ただ、"WTF"と略した書き言葉にすると少し婉曲的になるため、SNSなどで使っても大丈夫・・・かな・・・って感じになるかも・・・しれないです(かなり弱気)

【何なんw】
そして日本語のこのタイトルも、すごいインパクトですよね。

強いタイトル
深いメッセージ

どれだけイキったアーティストが出てくるかと思いきや、
ふんわりのんびりとした話し方の朴訥とした青年が現れる。

しかもこれは、誰かを責めている言葉ではなく、自分自身を戒めるもう一人の自分(ハイヤーセルフ)からの言葉だとは!
「 何なんwって何なん?」の解説ビデオを初めて見た時の衝撃が思い出されます。

ここからは風さんの英語のことを"Kazenglish"と呼ばせてもらうことにします。

【Kazenglishのこなれポイント】
さて、ここからは「 Kazenglishがどのようにこなれているのか?」と言うお話です。

① どんな時もここにいるのに
Though I'm here with you through thick and thin.

この「 どんなときも」をanytimeなどにせず
through thick and thin
にするところ!

thick and thinは文字通りには「 濃い、薄い」ですが、関係性の強さや弱さ、物事の程度を表現する時にも使います。
この言葉を使うことで「 どんな時も」というのは単に時間のことだけではなく、関係性をも含んでいることを表していますね。

②肥溜めへとダイブ!
diving into a Honey bucket
"肥溜め"のことはなぜか英語では"蜂蜜バケツ"といいますが、ここで注目すべきは冠詞です。

最初にダイブした肥溜めの冠詞は"a"ですが
再び飛び込んだ肥溜めでは
diving into the Honey bucket again!と
"the"(定冠詞)に変わっています。
これはなぜでしょう。

そう。最初に飛び込んだ肥溜めは、まだ特定されていません。
ところが2度目に飛び込んだ肥溜めは、「 同じ過ち」を繰り返すと言う意味で、最初と同じものでなければならないからです。
"a"と"the"の使い分けは日本人にはとても難しいことゆえ、この使い分けに驚き、そして、たったこれだけのことで深いメッセージを伝えることができる青年に畏敬の念をもってしまいます。

③蜂蜜バケツの秘密
そしてこれも解説してみましょう。
肥溜めとは・・・排泄物をためておく桶ですよね。
ハチミツは蜂が花から集めたものを、いったん胃に入れて運び巣に戻す、つまり、これも一度体に取り入れたものを排出したものです。

風さんが良く、
「 ネガティブな感情を手放して」っておっしゃっていますが、つまり、一度手放した筈のネガティブな感情(排泄物)のるつぼに、また逆戻りすること、それこそが肥溜めへとダイブ!の意味なのではないか、そう思ったのです。

④裏切りのブルース
初めてこの曲を聴いた時、「裏切りのブルース 」って一体なんじゃ?と不思議に思ったものです。
ここの英語詞を見てみましょう。

Don't make me sing again
that 'Betrayal Blues'
英詞では「 裏切りのブルース」"that"がついています。
と言うことは、"あの"ブルースであり、ここから、過去に何度も歌われていることがわかります。

うーん。深い。
どれだけ深いんだ。

そんなわけで(どんなわけ?)でここから藤井風さんのアルバムの全曲の歌詞を英詞で読み解いていきます。
お付き合いいただけましたら、嬉しいです。

それでは。

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